シティ・オブ・ゴッド

Cidade de deus




 

「深作欣二とサム・ペキンパーに見せてやりたいよ。」 −立川談志

− ここは世界でいちばん陽気な地獄 −

60年代末から80年代初頭、ブラジル、リオデジャネイロ郊外のスラム街“シティ・オブ・ゴッド”を舞台に、暴力も銃もドラッグもすぐそこにある極限の日常を駆け抜けた、少年たちの仁義なきサバイバル・オデッセイ。

貧困、麻薬、終わりなき暴力の連鎖・・・。ブラジル人ですら恐怖心を抱く、誰が見ても悲惨としか言いようのないスラム(ブラジルでは“ファヴェーラ”=貧困街区と呼ばれる)の現実。しかし本作は、その絶妙のリズム感と、ブラジル人特有の明るさと不敵さとで、見事「悲惨さの映像化の予想」を裏切っている。3つの時代にまたがる壮大な物語は、縦横無尽に走るカメラや画面分割を駆使した小気味良い映像処理、そしてそれぞれの時代を彩るサンバ、ソウル、ロックの名曲の数々・・と、数え上げればきりのない緻密な演出によって、非常にスタイリッシュな作品に仕上げられている。

原作は自らがシティ・オブ・ゴッド出身の作家パウロ・リンスによる、600ページ、登場人物300人という一大ノンフィクション年代記。1997年に出版されるや“初めて内側の視点からスラムの現実を描いた問題作”とセンセーションを巻き起こした。“La buena onda(= The Good Wave)”と呼ばれ、近年目覚しく評価を高めるラテンアメリカ映画界において、『セントラル・ステーション』『アモーレ・ペロス』そして『天国の口、終りの楽園』といったヒット作に続き、この難解な題材の映画化を熱望したのは、ブラジルCM業界の寵児フェルナンド・メイレレスである。“第二のスコセッシ”(スクリーン・インターナショナル誌)との呼び声も高い彼は、このカルチャーを体現できる唯一の役者として、2000人におよぶスラム在住の子供たちをオーディションしキャスティング、6ヶ月の即興演技指導と4ヶ月にわたるリハーサルの末、9週間ほぼオール・ロケーションでこの作品を撮り上げた。

 

本国ブラジルで統計史上最高の300万人という未曾有の観客動員数を記録した『シティ・オブ・ゴッド』。2002年の大統領選では、前大統領が「多くの子供たちが見られるようにすべき」と16歳未満禁止に異論を唱えて物議を醸し、図らずも“ブラジル人なら必ず見るべき映画”となってしまった。硬派で社会性の強い本作のテーマを、ポップな演出技法を用いて娯楽性の高い作品に仕上げていることに、「不謹慎ではないか?」と眉をひそめる人々もいて然るべき。しかし、監督はこう答える「ファヴェーラ自体が、ポップでユーモア溢れるところなのだから仕方がないんだ」と。

 

最終章である80年代は、まさに“終焉のはじまり”でしかなかった。
2001年の撮影当時、シティ・オブ・ゴッドは3派に分かれて対立、戦争勃発間近の様相を呈しており、ますます過激に手の付けようのない凶暴な街と化していた・・。


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