Date of Birth: 1924/10/26
Place of Birth: New York, New York, USA
事件記者コルチャック:ロバート・コバート映画音楽集 THE NIGHT STALKER AND OTHER CLASSIC THRILLERS 作曲・指揮:ロバート・コバート (米Varese Sarabande / 302 066 156 2) |
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<収録曲>
1.
(未公開)残酷・魔性!ジキルとハイド The Strange Case of Dr.Jekyll
& Mr.Hyde
2. (未公開)Dead of Night (A Darkness at Blaisedon)
3. (TV)事件記者コルチャック/ナイト・ストーカー The Night
Stalker
4. (TV)事件記者コルチャック/ナイト・ストラングラー The
Night Strangler
5. (TV)凄惨!狂血鬼ドラキュラ Dracula
6. (TV)恐怖と戦慄の美女 Trilogy of Terror
7. 家 Burnt Offerings
8. (未公開)アメージング・ファンタジー Dead of Night
9. (TV)恐怖!蜘蛛の巣連続殺人 Curse of the Black Widow
10. (未公開/TV)Dark Shadows
これは、「血の唇(House of Dark Shadows)」(1970)等のホラー映画(主としてTV映画)の製作・監督で知られるダン・カーティスと、作曲家ロバート・コバート(ボブ・コバート)とのコラボレーション作品を集めたコンピレーションで、この2人は1966年以来多数の作品で組んでいる。ダン・カーティスは、ダーレン・マクギャヴィン扮する新聞記者カール・コルチャックがラスヴェガスに徘徊する吸血鬼と闘う「事件記者コルチャック/ナイト・ストーカー」(1972)が、監督作品としては最もよく知られていると思うが、ここでのジャズとオーケストラの組合わせによるスプーキーなスコアもコバート作曲である(このCDにも組曲が収録されている)。
この「事件記者コルチャック」の脚本は、「(TV)ミステリー・ゾーン」「縮みゆく人間」「地球最後の男」「激突!」「ヘルハウス」「恐怖のレストラン」「ある日どこかで」「奇蹟の輝き」等で知られるホラー/ファンタジー小説・脚本の名手リチャード・マシスンが手がけており、マシスンはこの作品以外にも「凄惨!狂血鬼ドラキュラ」(1973)「影なき恐怖(Scream of the Wolf)」(1974)「恐怖と戦慄の美女」(1975)「アメージング・ファンタジー」(1977)「ザ・テリブル(Trilogy of Terror II)」(1995)でカーティスと組んでいる。特に、このCDにも音楽が収録されている「恐怖と戦慄の美女」は、マシスンの短編小説をベースにした3話ものの傑作オムニバス・ホラー(カレン・ブラックが1人で4役演じている)で、刃物を持った小さな人形が狭い室内で執拗に主人公に襲いかかって来る第3話「生け贄(Prey)」が秀逸。ジャック・パランスがドラキュラ伯爵を演じ、ナイジェル・ダヴェンポート、サイモン・ワード等が共演した「凄惨!狂血鬼ドラキュラ」も、ブラム・ストーカーの原作に忠実なマシスンの脚本、オズワルド・モリスの美しい撮影、カーティスのゴシック風演出による傑作として評価が高い。
その他、このコンピレーションに収録されている作品を簡単に紹介しておくと、「残酷・魔性!ジキルとハイド」(1968)は、ロバート・ルイス・スティーヴンソンの有名な原作を基に、ジャック・パランスがジキルとハイドを演じた作品。「Dead of Night」(1969)は、カーウィン・マシューズが超自然現象の調査員を演じた1時間もののTVパイロット。「事件記者コルチャック/ナイト・ストラングラー」(1973)は、シアトルに舞台を移した「ナイト・ストーカー」の続編。「家」(1976)は、題名通り呪われた家を舞台にしたオリヴァー・リード、カレン・ブラック、ベティ・デイヴィス主演のホラーだが、映画としては水準以下の出来(主役のリードとブラックの顔だけでも十分怖いが)。「アメージング・ファンタジー」(1977)はリチャード・マシスンとジャック・フィニーの原作を基にした3話のオムニバスで、エド・ベグリー Jr.、パトリック・マクニー、ジョーン・ハケット他が出演。「恐怖!蜘蛛の巣連続殺人」(1977)はトニー・フランシオサ、ドナ・ミルズ、パティ・デューク・アスティン他が巨大蜘蛛と闘うスリラー。「Dark Shadows」は1991年にTV放映された「血の唇」のリヴァイヴァル版。いずれも比較的低予算のホラーもので、マシスンが脚本に参加していないものは出来にムラがあるようである。
ロバート・コバートのスコアは非常にオーソドックスなオーケストラによるホラー音楽で、イギリスのハマー・フィルムの映画音楽に少し通ずるものがあるが、TV映画がほとんどのためかオーケストラの編成が小さく、演奏にも深みがないため、ハマーの映画音楽のような風格はあまりない。「事件記者コルチャック」でのジャズの使い方も時代を感じさせる。むしろB級ホラー映画独特の仰々しさやケレン味を楽しむタイプの音楽だと思う。
ロバート・コバートは、これらのホラーもの以外にも「(TV)マシンガン・ケリー」(1974)「(TV)FBI対ギャング・カンサスシチーの大虐殺」(1975)といった犯罪映画や、ハーマン・ウォーク原作の第二次大戦ドラマ「(TV)戦争の嵐」(1983)「(TV)戦争の黙示録」(1988)のスコアも手がけているが、特に「戦争の嵐」と「戦争の黙示録」(いずれもダン・カーティス製作・監督)の音楽は、作品にふさわしい堂々としたオーケストラル・スコアだった。
(2000年10月)
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