パスカル・エステーヴ
  Pascal Esteve

Date of Birth: 1961/3/29
Place of Birth: Toulouse, France

 


サン・ピエールの生命 LA VEUVE DE SAINT-PIERRE

作曲:パスカル・エステーヴ
Composed by PASCAL ESTEVE

指揮:ベルナール・ウィストレート
Conducted by BERNARD WYSTRAETE

演奏:イル・ド・フランス・フィルハーモニー管弦楽団
Performed by L'Orchestre Philharmonique d'Ile-de-France

(仏Universal Music / 542 572-2)

「仕立て屋の恋」(1989)「髪結いの亭主」(1990)「タンゴ」(1992)「イヴォンヌの香り」(1994)「ハーフ・ア・チャンス」(1998)「橋の上の娘」(1998)等のパトリス・ルコントが1999年に監督した作品(日本公開は2000年11月)。出演はジュリエット・ビノシュ、ダニエル・オートゥイユ、エミール・クストリッツァ(「アンダーグラウンド」「黒猫・白猫」等の監督)他。脚本はクロード・ファラルドで、当初は彼自ら監督する予定だったという。撮影はエデュアルド・セラ。1849年、カナダのフランス領サン・ピエール島を舞台に、軍隊長のジャン(オートゥイユ)とその妻マダム・ラ(ビノシュ)、島で殺人を犯し死刑を宣告された漁師ニール(クリストリッツァ)の3人の関係を描くドラマ。島にギロチンが運ばれるまでの長い間、ニールはマダム・ラの身の回りを手伝うことになるが、マダム・ラはニールと接するうちに純朴で優しい彼の心を理解し、ニールも次第に島の人々との親交を深め成長していく。ニールに母性愛のような深い想いを抱くようになったマダム・ラは、死刑を執行すべき立場にある夫ジャンとニールとの間で揺れ動く。やがてギロチンを載せた船が沖に姿を現すが……。

音楽を担当したパスカル・エステーヴは、1994年の「イヴォンヌの香り」でパトリス・ルコント監督に起用されており、これが長編映画を手がけた最初の作品で、その後ジャン=ピエール・ロンサン監督の「(未公開)L'Irresolu」(1994)という映画の音楽を作曲しているようだが、まだまだ作品が非常に少ない作曲家である。しかし、この「サン・ピエールの生命」のスコアを聴くと、まるでベテラン作曲家のような本格的なドラマティック・アンダースコアを書いていて驚かされる。映画のストーリーにふさわしく、全編にわたり重苦しくトラジックなタッチだが、ストリングスを主体としたリッチなオーケストラ・サウンドと物悲しいアコーディオンの響きが感動的。ハミングするようなやるせないタッチの男声を随所に織込んでいるが、この音が耳にまとわりつくような感覚がある。「Brouillard」での美しいメインテーマが全体に何度も繰り返されて印象的だが、「Chez Chevassus」「Galop sur la banquise」の冒頭の激しい部分や、「Le demenagement du Cafe du Nord」での舞踏音楽のようなタッチも良い。文芸作品におけるフィリップ・サルドの音楽を少し思わせるような上質なスコアで、この作曲家の今後の作品にも大いに期待してしまう。
(2000年10月)

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列車に乗った男 L'HOMME DU TRAIN

作曲:パスカル・エステーヴ
Composed by PASCAL ESTEVE

指揮:ベルナール・ウィストレート
Conducted by BERNARD WYSTRAETE

演奏:イル・ド・フランス・フィルハーモニー管弦楽団
Performed by L'Orchestre Philharmonique d'Ile-de-France

(仏Milan / 198 967-2)

「サン・ピエールの生命」(1999)「フェリックスとローラ」(2000)「歓楽通り」(2002)等のパトリス・ルコントが2002年に監督したドラマ(英語題名は「The Man on the Train」)。出演はジャン・ロッシュフォール、ジョニー・アリデイ、ジャン=フランソワ・ステヴナン、チャーリー・ネルソン、パスカル・パルマンティエ、イザベル・プティ=ジャック、エディット・スコッブ、モーリス・シュヴィット、リトン・リーブマン、オリヴィエ・フォーロン、ヴェロニク・カポイヤン、エルサ・デュクロ、アルマン・シャゴ、ミシェル・ラフォレスト、アラン・ゲラッフ、エレーヌ・シャンボン、ソフィー・デュラン、ジャン=ルイ・ヴェイ、セバスチャン・ボネット、ジャン=ジャック・コルニヨン他。脚本はクロード・クロッツ、撮影はジャン=マリー・ドルージュー。ならず者のミラン(アリデイ)はフランスの小さな町の銀行を襲うためにやって来る。彼は駅で偶然出逢った地元の教師マネスキエ(ロッシュフォール)の家に泊めてもらい、二人の間には奇妙な友情が生まれる……。

音楽はルコント監督の「イヴォンヌの香り」(1994)「サン・ピエールの生命」(1999)も担当したパスカル・エステーヴ。冒頭の「L'homme du train」は、ストリングス主体のオーケストラにギターを加えたサスペンスフルなタッチの音楽。同じ主題が「Cours particulier」でも繰り返される。「J'aurais aime etre un aventurier」はピアノとストリングスによるジェントルな曲。「Manesquier」は同じ主題の不気味なタッチのアレンジメントで、この主題は最後の「J'ai reve de cette vie」でも登場する。「De l'ennui au desir」等では、フィリップ・サルドの作風に似た繊細でドラマティックな音楽を展開しており、地味ながら手堅いドラマティック・アンダースコアとなっている。パスカル・エステーヴは担当する映画を厳選しているのか、いまだに作品数の限られた作曲家だが、どのスコアにも確かな実力を感じさせる。

パスカル・エステーヴが手がけた作品には
「(未公開)De l'autre cote du parc」(1991)
「(未公開)Doudou perdu」(1993)
「イヴォンヌの香り(Le parfum d'Yvonne)」(1994)
「(未公開)L'irresolu」(1994)
「サン・ピエールの生命(La veuve de Saint-Pierre)」(2000)
「列車に乗った男(L'homme du train)」(2002)
「(未公開)Regarde-moi (Le joli corps)」(2002)
「(未公開)Janus」(2002)
「親密すぎるうちあけ話(Confidences trop intimes)」(2004)
「(未公開/TV)Les boeuf-carottes - Parmi l'elite」(2005)
「(未公開/TV)Collection Fred Vargas - Sous les vents de Neptune」(2008)

等がある。

(2003年8月)
(2014年7月)

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