ポール・ソーテル & バート・シェフター
 Paul Sawtell & Bert Shefter

Paul Sawtell
Date of Birth: 1906/2/3
Place of Birth: Poland
Date of Death: 1971/8/1
Mini Biography:
Sawtell studied composition at the Conservatory of Music in Munich. He performed with numerous European orchestras as a violin soloist and moved to Chicago at the age of 17 while in the middle of a concert tour. In America he worked as a staff violinist and arranger for NBC Radio and began composing music for films in 1938, largely toiling on low-budget serials and B-movies for Republic and RKO studios, often compiling stock cues for music libraries. After scoring "Youth Runs Wild" for producer Val Lewton, he left RKO to join Universal, where his first assignment was "The Pearl of Death", a part of the Basil Rathbone-Sherlock Holmes series. He returned to RKO during the second half of the 1940s and also worked for various independent producers, such as Aubrey Schenk at Eagle Lion and Harry Sherman at United Artists. In 1951 he began a relationship with producer/director Irwin Allen when he scored the Oscar-winning documentary "The Sea Around Us", adapted from Rachel Carson's book. He went on to compose music for Allen's science fiction and fantasy vehicles such as "The Lost World", "Five Weeks in a Balloon" and "Voyage to the Bottom of the Sea".

Bert Shefter
Date of Birth: 1904/5/15
Place of Birth: Poltova, Russia
Date of Death: 1999/6/29
Mini Biography:
Bert Abram Shefter was born in Russia but moved to the United States with his parents by the time he was one year old. He studied music at Carnegie Institute of Technology, Curtis Institute of Music, and the Damrosch Institute, and studied piano with David Saperton, Ben Moiseivetch and Josef Hoffman. He formed the piano duo Shefter and Gould in 1930 with famed composer Morton Gould, organized a swing band in 1936 and was music director of New York radio station WINS for two years. He conducted his own orchestra, featuring his own compositions and arrangements on numerous radio commercial shows. He was a guest conductor at Carnegie Hall during 1946-67. He made recordings for Victor, Decca and Brunswick; his songs and instrumental works include Haydn seek, Twilight serenade, and Boogie woogie etudes.

 


(未公開)蝿男の恐怖   THE FLY

(未公開)蝿男の逆襲   THE RETURN OF THE FLY

(未公開)蝿男の呪い   CURSE OF THE FLY

作曲・指揮:ポール・ソーテル & バート・シェフター
Composed and Conducted by PAUL SAWTELL & BERT SHEFTER

(米Percepto / 008)

ジョルジュ・ランジュランの短編小説「蝿」をベースにした“蝿男”シリーズ3部作の音楽を収録したCD2枚組のコンピレーション。

1作目の「(未公開)蝿男の恐怖(The Fly)」は1958年製作のアメリカ映画(日本では劇場未公開でビデオ発売/TV放映済)で、製作・監督は「火星探険」(1950)「テキサスから来た男」(1950)「ターザンと巨象の襲撃」(1953)「ソロモン王の宝庫」(1958)等のカート・ニューマン。出演はアル・ヘディソン、パトリシア・オーウェンズ、ヴィンセント・プライス、ハーバート・マーシャル、キャスリーン・フリーマン、ベティ・ルー・ガーソン、チャールズ・ハーバート、ユージン・ボーデン、ハリー・カーター他。脚本はジェームズ・クラヴェル、撮影はカール・ストラス、SFXはL・B・アボットが担当。送信装置で物質を原子レベルまで一旦分解して電送し、受信装置で元の物質に再生する仕組みのテレポーテーション装置を開発した科学者のアンドレ・ドランブル(ヘディソン)は、自らを電送する実験を試みるが、送信装置側に一匹の蝿が紛れ込んだことにより、受信装置側で蝿と人間が合体した怪物となって再生されてしまう・・。“蝿男”の恐怖よりは、主人公とその妻エレーヌ(オーウェンズ)の身にふりかかった悲劇の方を強調したインテリジェントなSF映画。ラストシーンが特に印象的。デヴィッド・クローネンバーグ監督が1986年に「ザ・フライ」としてリメイクしたことでも知られる(こちらの音楽はハワード・ショア)。

音楽はポール・ソーテルバート・シェフターのコンビが作曲している(クレジット上はソーテルの名前しか出ないが、実際には2人で作曲)。全体を通して、トランペットとストリングスによる“蝿(蝿男)”の主題と、アンドレとエレーヌのラブテーマを組み合わせた、極めてオーソドックスなオーケストラル・スコアとなっている。20世紀フォックスのファンファーレ(シネマスコープ版)に続く「Main Title」は、不吉なオープニングから優雅でロマンティックなラブテーマへと展開するメインタイトル。「Retrospect」「Napaj Ni Edam」「Happy Couple / Matchbox」は、エレーヌの回想シーンでの幸福な夫婦生活を描いた牧歌的でロマンティックな曲。「The Claw」は蝿男と化したアンドレにエレーヌがはじめて対面するシーンのドラマティックな恐怖音楽から、ラブテーマへと展開。「Show Me / Help Me」は蝿を捜すシーンの不吉な音楽。「End Title」はジェントルなエンドタイトル。

2作目の「(未公開)蝿男の逆襲(The Return of the Fly)」は1959年製作のアメリカ映画(日本では劇場未公開でビデオ発売/TV放映済)で、監督・脚本は「惑星X悲劇の壊滅」(1958)「死の谷の決斗」(1958)「地獄部隊を撃て!」(1958)等のエドワード・L・バーンズ。1作目で脇役を神妙に演じていたヴィンセント・プライスがここでは主役級となっている。共演はブレット・ハルゼイ、デヴィッド・フランカム、ジョン・サットン、ダン・セイモア、ダニエル・デ・メッツ他。製作はバーナード・グラッサー、撮影はブライドン・ベイカーが担当。前作で蝿男となった科学者アンドレの息子フィリップ(ハルゼイ)は、父の研究を続行しようと決意し、伯父フランソワ(プライス)と親友の協力を得て別荘の地下室で転送機の開発を行う。だが研究の横取りを企む親友に気絶させられたフィリップは、蝿と一緒に転送機に入れられ人為的に蝿男にされてしまう・・。

音楽は前作同様ポール・ソーテルバート・シェフターが作曲しており、ここでも不吉なヴァイオリンのトレモロによる“蝿男”の主題(前作とは異なる)とラブテーマが交互に登場するスタイルになっている。「Main Title」はストレートなホラー音楽からロマンティックな主題へと展開。「How It Happened」「Leave Me Alone」「The House / Cecile」「Rat Monster / Getting Rid of the Car」等は抑制されたタッチのサスペンス音楽。「Fly Fright / The Heavy」はヴァイオリンによる蝿の描写。「Explain / Fight」「Barthold / The Killing」「Allen Dies / Righting Matters」等では激しいアクション音楽が展開する。ここでは映画の(少ない)製作予算に準じた36人編成のオーケストラが演奏しており、音に厚みはないが、効果的なアンダースコアとなっている。

3作目の「(未公開)蝿男の呪い(Curse of the Fly)」は1965年製作のイギリス映画(日本では劇場・ビデオ・TVとも未リリース)で、監督は「吸血鬼の接吻」(1963)「海賊船悪魔号」(1964)「怪人フー・マンチュー」(1964)「白夜の陰獣」(1965)「(未公開)39階段」(1978)「オーロラ殺人事件」(1979)等のドン・シャープ。出演はブライアン・ドンレヴィ、キャロル・グレイ、ジョージ・ベイカー、ジェレミー・ウィルキンス、イヴェット・リース、バート・クウォーク、マイケル・グラハム、レイチェル・ケンプソン、チャールズ・カーソン、メアリー・マンソン、ウォーレン・スタンホープ、アーノルド・ベル、ミア・アンダーソン、スタン・シモンズ他。脚本はハリー・スポールディング、製作はロバート・L・リッパートとジャック・パーソンズ、撮影はベイシル・エモット。1作目で蝿男と化したアンドレの息子アンリ(ドンレヴィ/ということは2作目のフィリップの兄弟ということになるが、2作目ではその存在は全く言及されない)がまたも転送装置を開発し、人体実験を試みる・・。ここでは題名に含まれる“Fly”の単語にもかかわらず蝿男は全く登場せず、転送によって醜悪に変形したミュータントが怪物として出て来る。監督を引き受けたハマー・フィルムのベテラン、ドン・シャープも渡された脚本を読んで「3作目にもなるとさすがにアイデアが尽きたか・・」と思ったらしい。

音楽はポール・ソーテルが病気で参加できなかったため、バート・シェフターが単独で作曲しているが、ここでは全体にロマンティックなタッチを主体として、それにホラー音楽が所々顔を出す構成となっている。オーケストレーションをジョニー・ピアソンが担当し、ロンドンのニュー・フィルハーモニア管弦楽団(43人編成)が演奏している。20世紀フォックスのファンファーレ(シネマスコープ版)に続く「Main Title」は、不吉は“蝿男(は、出てこないのだが・・)”の主題からピアノ・コンチェルト風のロマンティックなラブテーマへと展開。オーケストラが前2作より大きくなっているので、音がリッチになっている。「The Pick-Up」「The Romantic Week」「The First Night」等もロマンティックなタッチ。「London Lab」はピアノとオーケストラによるサスペンス音楽。「The Creature」「Creatures Reintegrated」「Judith on a Rampage」等は激しいホラー音楽。「End Titles」はピアノ+オケによりドラマティックに締めくくる。

ポール・ソーテルは、1957年にバート・シェフターがラスヴェガスのロイヤル・ネヴァダ・ホテルでピアノを演奏しているのを聴いて感銘を受け、更にシェフターの作曲した音楽を聴いて2人でチームを組むことを提案したという。彼らの最初のコンビ作品は「黒い蠍(The Black Scorpion)」(1957)だが、クレジット上はソーテルの名前だけが表記されている(作曲は主としてソーテルが行い、シェフターがアシストした)。彼らはコンビで作業することで極めて短い時間でスコアを完成させることができたため、低予算のB級映画のプロデューサーたちから重宝されたという。彼らの共同作業は、概してメロディストであるソーテルがスコア中のメインの主題を作曲し、シェフターがそれを編曲・オーケストレートする形で進めていた。

ポール・ソーテルバート・シェフターのコンビによるその他の作品には、「黒い蠍」(1957)「栄光の果てに」(1957)「平原のならず者」(1958)「恐怖の火星探険」(1958)「峡谷の対決」(1958)「フランダースの犬」(1959)「ビッグ・サーカス」(1959)「哀しみの愛馬」(1959)「失われた世界」(1960)「野性の収穫」(1961)「ビッグ・ショウ」(1961)「地球の危機」(1961)「ジャックと悪魔の国」(1962)「気球船探険」(1962)「決闘ブラックヒル」(1963)「ファスター・プシィキャット!キル!キル!」(1966)「華麗なる変身」(1970)等がある。
また、ポール・ソーテル単独の作品には、「太陽の谷間」(1942)「ターザン砂漠へ行く」(1943)「ネヴァダ男」(1944)「ジャングルの妖女」(1944)「魔境のターザン」(1945)「ターザンの怒り」(1947)「ブラックストーンの決闘」(1948)「オクラホマ無宿」(1949)「ターザンと女奴隷」(1950)「海賊ブラッドの逆襲」(1950)「私は見た!」(1951)「荒野の三悪人」(1951)「鉄路に賭ける男」(1952)「燃える幌馬車」(1952)「ミズーリ大平原」(1953)「ターザンと巨象の襲撃」(1953)「西部は俺に任せろ」(1954)「ターザンと隠された密林」(1955)「動物の世界」(1955)「十人のならず者」(1955)等があり(ソーテルは生涯に何と420本以上の作品を手がけている)、バート・シェフター単独の作品には、「邪教の王妃」(1953)「背高きテキサス人」(1953)等がある。

尚、このPercepto Recordsから2002年にリリースされた「蝿男」シリーズのサントラCDは3000枚限定プレスで、55ページもある豪華で詳細なブックレット付きのコレクターズ・エディションとなっている。
(2002年7月)

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