アントワーヌ・デュアメル
 Antoine Duhamel

Date of Birth: 1925/7/30
Place of Birth: Valmondois, Val-d'Oise, France
Mini Biography:
Duhamel studied music under Olivier Messiaen and Rene Leibowitz, while at the same time studying psychology in Sorbonne. He composed his first works "Variations sur l'Opus 19 no. 6 de Schoenberg, pour Piano", "Rhenane d'Automne, pour Chant et Piano", "Concerto pour Alto", and "Opera radiophonique" in 1947. He worked for the first time for film in 1957, with Albert Champeaux (commercials, animations, and short films) and Philippe Condroyer. He met Jean-Daniel Pollet in 1961 and composed music for his film "Gala"(1961) and "Mediterrannee"(1963). He also worked with Alexandre Astruc("Le Puit et le Pendule"), Jean-Luc Godard("Pierrot le Fou", "Week-End"), Francois Truffaut("Baisers Voles", "La Sirene du Mississippi", "L'Enfant Sauvage", "Domicile Conjugal"), Bertrand Tavernier("La Chance et l'Amour", "Que la Fete Commence", "La Mort en Direct"), Pierre Granier Deferre("Un Amour de Guerre", "Le Grand Dadais"), and many others. His composition works include nine operas, several oratorios, numerous songs, serials for television, and over eighty feature films.

 


アントワーヌ・デュアメル映画音楽集  LE CINEMA D'ANTOINE DUHAMEL

作曲・指揮:アントワーヌ・デュアメル
Composed and Conducted by ANTOINE DUHAMEL

(仏Universal / 159 649-2) 2000

cover
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<収録曲>

1. 気狂いピエロ PIERROT LE FOU (1965)
 ・Ferdinand
2. (未公開)LE VOLEUR DE TIBIDABO (1964)
 ・Le voleur de Tibidabo
 ・La vie est magnifique, par Anna Karina
 ・Nicolas et Maria en liberte
3. (未公開)L'AFFAIRE MARCORELLE (2000)
 ・Suite Marcorelle
4. ウイークエンド WEEK-END (1968)
 ・Alice
5. (TV)ベルフェゴールは誰だ! BELPHEGOR (1965)
 ・Generique debut
 ・Theme de Menardier
 ・Le Louvre, la nuit / Generique de fin
6. (未公開)MEDITERRANEE (1963)
 ・Suite Mediterranee
7. (未公開)ROGER-LA-HONTE (1966)
 ・Valse de la fatalite
8. 家庭 DOMICILE CONJUGAL (1970)
 ・Petit concert conjugal
 ・Le torchon brule
 ・Kyoko
9. (未公開)CINQ GARS POUR SINGAPOUR (1966)
 ・Generique
 ・Somewhere in Singapour
 ・Theme de la drogue
10. (未公開)LE CORPS DE DIANE (1969)
 ・Pour Jeanne... (Suite)
11. リディキュール RIDICULE (1996)
 ・Ca vaut mieux que la tete
 ・Le destin de Ponceludon
 ・La fete de l'automne
TITRE BONUS
 ・Mic et Max, par Anna Karina

 

ジャン=リュック・ゴダールフランソワ・トリュフォーといった“ヌーヴェル・ヴァーグ”の旗手たちとのコラボレーションで知られるフランスのベテラン作曲家アントワーヌ・デュアメルの映画音楽を集めたコンピレーション。

1. 気狂いピエロ PIERROT LE FOU (1965)

1965年製作(日本初公開は1967年)。監督はジャン=リュック・ゴダール。出演はジャン=ポール・ベルモンド、アンナ・カリーナ、グラツィエラ・ガルヴァーニ、ダーク・サンダース、ジミー・カルービ、サミュエル・フラー、レイモン・ドボス他。ライオネル・ホワイトの原作『十一時の悪魔』を基にゴダールが脚本を執筆。撮影はラウール・クタール。破滅へと向かう男を独特の手法で描いたゴダールの代表作の一つで、彼はこの作品で1965年度ヴェネチア国際映画祭の新鋭評論家賞を受賞した。主人公フェルディナン(ベルモンド)を描いたデュアメル作曲の「Ferdinand」は、ストリングスによるトラジックでドラマティックな音楽。「シューマン的な主題を書いてほしい」とのゴダールに要請に応え、リリシズムとヴァイオレンスの二重性をベースにした主題を作曲したという。このアルバムの最後にボーナス・トラックとして収録されているアンナ・カリーナによるシャンソン「Mic et Max」も、この映画のためにデュアメルが作曲したものだが(作詞はレモ・フォルラーニ)、その歌詞の内容が、カリーナの私生活でのゴダールとモーリス・ロネとの二又の関係を揶揄したものであったため、ゴダールがボツにしてしまい、劇中では流れなかった。

2. (未公開)LE VOLEUR DE TIBIDABO (1964)

1964年製作(英語題名は「The Thief of Tibadabo」)。俳優のモーリス・ロネが初監督した作品で、出演はルイ・シジェ、エンリク・エルレロ、アンナ・カリーナ、ジョゼ・ニエト、ジェズ・プシェ、アンパーロ・ソレ・リアル他。ジャン・シャルル・タッシェーラとロネの原案を基にレモ・フォルラーニとジュアン・マルスが脚本を執筆。撮影はアラン・レヴァント。デュアメルが初めて作曲を担当した長編映画でもあり、ヴィンセント・ミネリやスタンリー・ドーネンが監督したミュージカル映画に憧れていた彼が、その想いを再現したスコア。「Le voleur de Tibidabo」は、ロマンティックなイントロからミュージカル・コメディ調の陽気な主題へと展開。「La vie est magnifique」は、アンナ・カリーナによるチャーミングなシャンソン(デュアメル曰く“自分が作曲した最も美しい歌”)。「Nicolas et Maria en liberte」もロマンティックなタッチ。

3. (未公開)L'AFFAIRE MARCORELLE (2000)

2000年製作(英語題名は「The Marcorelle Affair」)。監督・脚本はセルジュ・ル・ペロン。出演はジャン=ピエール・レオー、イレーヌ・ジャコブ、マチュー・アマルリック、フィリップ・コルサンド、ドミニク・レイモン、エレーヌ・シュールジェール、フィリップ・モリエール=ジュノー、エルヴェ・ピエール、マルク・ベットン、クリスチャン・ブーイエット他。撮影はイヴァン・コゼルカ。デュアメル作曲の組曲「Suite Marcorelle」は、小編成のオーケストラによるミステリアスでサスペンスフルな音楽。アブストラクトでソリッドなスコア。

4. ウイークエンド WEEK-END (1968)

1968年製作(日本初公開は1969年)。監督・脚本はジャン=リュック・ゴダール。出演はミレーユ・ダルク、ジャン・ヤンヌ、ジャン=ピエール・カルフォン、ヴァレリー・ラグランジェ、ジャン=ピエール・レオー、ジュリエット・ベルト、ジョルジュ・スタケ、ダニエル・ポムルール、ヴィルジニー・ヴィニョン、ブランディーヌ・ジャンソン、イヴ・アフォンソ、ポール・ジェゴフ、アンヌ・ウィアゼムスキー、ミシェル・クルノー、ジャン=クロード・ギルベール、ラズロ・サボ、エルネスト・メンゼル、イヴ・ベネイトン、イザベル・ポンス他。撮影はラウール・クタール。都会の生活に疲れた一組の男女が、土曜日の朝、車で週末旅行に出かけるが、同じ目的で郊外へ出ようとする車の群れで道路が渋滞し、やがて彼らは集団ヒステリー状態に陥っていく・・。デュアメル作曲の「Alice」はセンチメンタルでトラジックなワルツで、セルジュ・ル・ペロン監督が32年後に「(未公開)L'AFFAIRE MARCORELLE」でも流用した曲。

5. (TV)ベルフェゴールは誰だ! BELPHEGOR (1965)

1965年製作のTV映画。監督はクロード・バルマ。出演はジュリエット・グレコ、ルネ・ダリー、フランソワ・ショーメット、シルヴィー、ポール・クローシェ、クリスティン・パール、イヴ・レニエ、ルネ・アローヌ、イヴ・ビュロー他。アルトゥール・ベルネードの原作を基にジャック・アルマンとクロード・バルマが脚本を執筆。撮影はジャック・ルマール。800年の歴史を持つルーヴル美術館に潜んでいるとされる伝説の怪人ベルフェゴールを描いたTVミニシリーズ(72分×4話)。このベルフェゴールは過去に何度か映画の題材になっており、2001年にはジャン=ポール・サロメが監督し、ソフィー・マルソー、ミシェル・セロー、フレデリック・ディーファンタル、ジュリー・クリスティ他が出演した「ルーヴルの怪人」が製作されている。デュアメルが1965年版に作曲した音楽は、いかにもTVシリーズ的な軽妙さがあるが、「Generique debut」はキャッチーなイントロからミステリアスな主題へ展開するメインタイトル。「Theme de Menardier」は、ニーノ・ロータの作風に少し似た主題。「Le Louvre, la nuit / Generique de fin」はジャズ・ベースで、やはりミステリアスなタッチ。

6. (未公開)MEDITERRANEE (1963)

地中海の太陽と死をテーマにした、1963年製作のドキュメンタリー映画。監督・脚本・撮影・編集はジャン=ダニエル・ポレ。助監督をフォルカー・シュレンドルフが担当している。デュアメルの初期の傑作スコアで、「Suite Mediterranee」は3つのパートから成る組曲となっている。最初の“メインタイトル”は、シェーンベルクの影響を受けたダークで重苦しいタッチの主題。続く“海の主題”は、若さの苦悩と死の関係を描いたメランコリックな曲。最後の“バラード”はギリシャ音楽にインスパイアされた曲で、ブーズーキの代わりにバルテレミー・ロッソのエレキギターがフィーチャーされている。

7. (未公開)ROGER-LA-HONTE (1966)

1966年製作(イタリア題名は「Trappola per l'assassino」、英語題名は「Trap for the Assassin」)。監督はリッカルド・フレーダ。出演はジョルジュ・ジェレ、イレーネ・パパス、ジャン・トパール、ジャン=ピエール・マリエール、アンヌ・ヴェルノン、ガブリエル・ティンティ、サビーヌ・ハウデピン、ジャン・カルメ、ベルナール・ラジャリージュ、サビーヌ・スン他。ジュール・マリーの原作『Roger la Honte』を基にジャン=ルイ・ボーリィが脚本を執筆。撮影はジャン・トゥールニエール。デュアメルの「Valse de la fatalite」はトラジックなワルツで、彼はこの曲を書いている最中に、父親(作家のジョルジュ・デュアメル)の死を知らされたという。

8. 家庭 DOMICILE CONJUGAL (1970)

1970年製作(日本初公開は1982年)。監督はフランソワ・トリュフォー。出演はジャン=ピエール・レオー、クロード・ジド、松本弘子、クレール・デュアメル他。撮影はネストール・アルメンドロス。水力会社の実験係として働くアントワーヌ(レオー)は、妻のクリスティーヌと新婚で、二人の間に男の子が誕生したばかりだが、職場を見学に訪れた日本人女性キョーコに一目惚れし、深い仲になってしまう・・。デュアメルの「Petit concert conjugal」は暴力的でダイナミックなオーケストラ音楽で、かなり面白い。「Kyoko」は女声をフィーチャーした幻想的なタッチ(なぜかあまり日本的ではない)。デュアメルはフランソワ・トリュフォーと、この「家族」以外にも「夜霧の恋人たち」(1968)「暗くなるまでこの恋を」(1969)「野性の少年」(1969)で組んでいるが、基本的に彼とは気が合わなかったらしい。トリュフォーは「家族」の後、デュアメルに対して「これから新しいシリーズの映画を撮り始めることにしたが、音楽はジョルジュ・ドルリューに依頼することにした」との非常に丁寧な手紙をよこして、これを機に二人は訣別したという。ドルリューはデュアメルの友人で、「トリュフォーとのコラボレーションが自分にとって最高の満足をもたらした」と語っていたらしいが、デュアメルにとってはそうではなかったようだ。

9. (未公開)CINQ GARS POUR SINGAPOUR (1966)

1967年製作(英語題名は「Five Ashore in Singapore」)。監督はベルナール・トゥブラン=ミシェル。出演はショーン・フリン、マリカ・グリーン、テリー・ダウンズ、マーク・ミシェル、デニス・ベリー、ピーター・ゲイフォード、ベルナール・ムースニエール他。ジャン・ブリュースの原作を基にピエール・カルフォンとベルナール・トゥブラン=ミシェルが脚本を執筆。撮影はジャン・シャルヴェン。「気狂いピエロ」でゴダールの助手だったトゥブラン=ミシェルによるアクション映画。「Generique」は、ハードボイルドなタッチのジャズで、実にかっこいい。「Theme de la drogue」は、ブクブクと泡立つ水の音を取り込んだジャズ・ベースの曲で、デュアメルの遊び心を感じさせる(デュアメル自身がストローでブクブクやっていたらしい)。

10. (未公開)LE CORPS DE DIANE (1969)

1969年製作のフランス=チェコスロヴァキア合作映画(英語題名は「Diane's Body」)。監督はジャン=ルイ・リシャール。出演はジャンヌ・モロー、シャルル・デネール、アンリ=ジャック・ウエット、ジョエル・ラトゥール、ズザーナ・ルジコヴァ、エリザベート・ウィネール他。フランソワ・ヌーリジエールの原作を基にリシャール・ピエール・ブールジェアードとジャン=フランソワ・オーデュロイが脚本を執筆。撮影はミロスラフ・オンドリセク。デュアメル作曲の「Pour Jeanne... (Suite)」は、サスペンスフルでドラマティックな組曲だが、ジャンヌ・モローと(当時彼女の夫だった)ジャン=ルイ・リシャールの音楽的なポートレートだという。

11. リディキュール RIDICULE (1996)

1996年製作(日本初公開は1997年)。監督はパトリス・ルコント。出演はファニー・アルダン、シャルル・ベルリング、ジュディット・ゴドレーシュ、ベルナール・ジロドー、ジャン・ロシュフォール他。脚本はレミ・ワテルウーズ。撮影はティエリー・アルボガスト。18世紀、ルイ16世時代のフランスを舞台に、革命が迫っていることも知らずに、贅の限りを尽くし、墜落した生活を送る貴族たちを描く。1996年度アカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされ、同年の英国アカデミー賞の外国語映画賞を受賞した作品。デュアメルの「Ca vaut mieux que la tete」は荘厳なマーチ風のバロック音楽で、18世紀の音楽を現代の解釈により再現した曲。

 

アントワーヌ・デュアメルが手がけた作品には、「(未公開)Les gens de lettres」(1960)「(未公開)Gala」(1961)「(未公開/TV)Le Chevalier de Maison Rouge」(1963)「(未公開)Mediterranee」(1963)「(未公開/TV)Le puits et la pendule」(1964)「(未公開)Tintin et les oranges bleues」(1964)「(未公開)Paparazzi」(1964)「(未公開)Bardot et Godard」(1964)「(TV)ベルフェゴールは誰だ!(Belphegor)」(1965)「気狂いピエロ(Pierrot le fou)」(1965)「(未公開)La voleuse」(1966)「(未公開)Roger la Honte」(1966)「(未公開)La longue marche」(1966)「(未公開)The Sailor from Gibraltar」(1967)「(未公開)消される男(Un homme a abattre)」(1967)「ウイークエンド(Week End)」(1967)「(未公開)Cinq gars pour Singapour」(1967)「(未公開)Casse-tete chinois pour le judoka」(1967)「夜霧の恋人たち(Baisers voles)」(1968)「(未公開)Le corps de Diane」(1969)「(未公開)フランソワの青春(L'echelle blanche)」(1969)「(未公開/TV)D'Artagnan」(1969)「暗くなるまでこの恋を(La sirene du Mississipi)」(1969)「野性の少年(L'enfant sauvage)」(1969)「家庭(Domicile conjugal)」(1970)「汚れた刑事(Un conde)」(1970)「(未公開)Le fusil a lunette」(1972)「処女シルビア・クリステル/初体験(Frank en Eva)」(1972)「(未公開)'M' comme Mathieu」(1973)「(未公開)Une belle journee」(1973)「(未公開)Que la fete commence...」(1974)「(未公開)La coupe a dix francs」(1975)「(未公開)L'Acrobate」(1976)「(未公開)La question」(1977)「(未公開/TV)Au plaisir de Dieu」(1977)「(未公開/TV)Madame le juge」(1977)「(未公開)La chanson de Roland」(1978)「(未公開)La tortue sur le dos」(1978)「(未公開)La barricade du Point du Jour」(1978)「(未公開)Mais ou et donc Ornicar」(1979)「(未公開)Retour a la bien-aimee」(1979)「(未公開)Le mors aux dents」(1979)「(未公開/TV)Madame Sourdis」(1979)「(未公開)SFデス・ブロードキャスト(La mort en direct)」(1980)「(未公開/TV)Chere Olga」(1980)「(未公開)Le rose et le blanc」(1982)「(未公開)Au Pere Lachaise」(1986)「(未公開)Contretemps」(1988)「(未公開/TV)Mon dernier reve sera pour vous」(1989)「ベーゼ/崩壊の美学(El sueno del mono loco)」(1990)「ダディ・ノスタルジー(Daddy Nostalgie)」(1990)「(未公開/TV)Billy」(1991)「(未公開/TV)Les ritals」(1991)「(未公開)L'Affut」(1992)「ベルエポック(Belle epoque)」(1992)「(未公開)Dieu sait quoi」(1994)「(未公開)La piste du telegraphe」(1994)「(未公開)Belmonte」(1995)「(未公開/TV)Lise ou L'affabulatrice」(1995)「(未公開)Malena es un nombre de tango」(1996)「(未公開/TV)Cherche famille desesperement」(1996)「リディキュール(Ridicule)」(1996)「(未公開)La buena vida」(1996)「(未公開)Tranvia a la Malvarrosa」(1996)「美しき虜(La nina de tus ojos)」(1998)「(未公開)Le plus beau pays du monde」(1999)「(未公開)L'affaire Marcorelle」(2000)「(未公開)Baektopur」(2000)「(未公開)Ceux d'en face」(2001)「レセ・パセ 自由への通行許可証(Laissez-passer)」(2002)「(未公開)El embrujo de Shanghai」(2002)「(未公開)Depuis qu'Otar est parti...」(2003)「(未公開)Leaud de Hurle-dents」(2003) 等がある。
(2004年5月)

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