Date of Birth: 1931/10/22
Place of Birth: Tokyo, Japan
Mini Biography:
東京芸術大学作曲科中退。1953年間宮芳生、外山雄三らと「山羊の会」を結成。同年、「交響曲ト調」で芸術祭賞を受賞。1956年「オーケストラのための変奏曲」で第4回尾高賞を受賞。同年、映画「裸の島」(新藤兼人監督)で第2回モスクワ映画祭作曲賞を受賞。日本語と音楽との自然な結びつきを探究し、オぺラシアターこんにゃく座の座付作曲家として「森は生きている」「変身」などのオペラを作曲、オペラ「吾輩は猫である」(1998)により第30回サントリー音楽賞を受賞。1990年代には器楽曲の分野でも「第三交響曲『八月の正午に太陽は…』」(1990)「ヴィオラ協奏曲『悲歌』」(1995)などの重要な作品が書かれ、後者は第44回の尾高賞を受賞した。他方俳優座、黒テントと共働した音楽劇、そして映画音楽、宮澤賢治、ブレヒトの歌曲など多数。2009年9〜10月、オペラシアターこんにゃく座によってオペラ「変身」がヨーロッパ4都市に於いて公演され好評を得た。またNHK大河ドラマ「国盗り物語」「花神」「山河燃ゆ」などの音楽はお茶の間でも大変親しまれた。著書に「作曲家の道具箱」(一ツ橋書房)「私の戦後音楽史」(平凡社ライブラリー)ほか多数。
林光の部屋(Official website of Hikaru Hayashi): http://homepage2.nifty.com/hayashi_hikaru/index.htm
聖職の碑 SEISHOKU NO ISHIBUMI 竹山ひとり旅 CHIKUZAN HITORI TABI 作曲:林 光 (富士キネマ / FJCM-009) |
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東京出身のベテラン作曲家林 光の映画音楽2作品をカップリングにしたCDで、過去に東宝レコードからリリースされていた同内容のLPをCD化したもの。
「聖職の碑」は、1978年製作の日本映画(東宝作品)。監督は「潮騒」(1971)「日本沈没」(1973)「八甲田山」(1977)「動乱」(1980)「海峡」(1982)「小説吉田学校」(1983)等の森谷司郎。出演は鶴田浩二、岩下志麻、三浦友和、北大路欣也、田中 健、地井武男、大竹しのぶ、中井貴恵、笠智 衆、丹波哲郎、北村和夫、佐藤 慶、神山 繁、鈴木瑞穂、他。「八甲田山」(1977)「アラスカ物語」(1977)等の新田次郎の原作を基に山内 久が脚本を執筆。撮影は「劔岳 点の記」(2008)の監督・脚本・撮影を手がけた木村大作。大正2年8月に小学校の修学旅行で起きた遭難事故を描くドラマ。中箕輪尋常高等小学校の赤羽校長(鶴田浩二)は、高等科2年の生徒25名、青年会員9名、引率の清水(三浦友和)、征矢(地井武男)と中央アルプス駒ケ岳を修学旅行中に暴風雨に襲われ、山小屋を急造して避難していた。“子供は生まれついては強くも正しくもなく、それを鍛え、困難を乗り越えられる人間にするのが教育である”との方針の赤羽校長にとって、この登山旅行は執念の行事だったが、自由な理想教育を目指し校長と対立する清水は、もともとこの登山に反対だった。パニックを起こした生徒の1人が小屋の屋根にしてあった着ゴザを引きはがして嵐の中に逃げ出すと、他の生徒たちもその後を追った。着ゴザを手に入れられなかった生徒たちは次々と死に、校長は自分のシャツを脱いで生徒に着せてやった。征矢は山を下りて救援を求め、清水は負傷した生徒を岩陰に連れていった。この登山に最も強く反対していた有賀主任(北大路欣也)が救援本部に駆けつけると、自分のシャツを生徒に着せて凍死している赤羽校長の姿があった……。大竹しのぶが1978年度日本アカデミー賞の助演女優賞を受賞している。
この作品で初めて森谷司郎監督と組んだ林 光のスコアは、冒頭の「聖職の碑のテーマ」が、短いイントロからラテン調のギターによるストイックな主題へと展開するメインテーマ。「夕暮れ」「前兆」も、メインの主題のバリエーション。「駒ケ岳登山」は、オーケストラによるドラマティックかつ躍動的な主題で、この主題は「救助をもとめて」でも繰り返される。「遭難」は、静かでややメランコリックなタッチの曲。「朝」は、静かに荘厳な曲。「記念碑」は、ジェントルな主題からメインの主題のリプライズで締めくくる。
「竹山ひとり旅」は、1977年製作の日本映画(近代映画協会作品)。監督・脚本は「裸の島」(1960)「鬼婆」(1964)「心」(1973)「絞殺」(1979)「北斎漫画」(1981)「墨東綺譚」(1992)「午後の遺言状」(1995)「生きたい」(1999)「ふくろう」(2003)「石内尋常高等小学校 花は散れども」(2008)「一枚のハガキ」(2010)等の新藤兼人。出演は林 隆三、乙羽信子、倍賞美津子、佐藤 慶、観世栄夫、島村佳江、川谷拓三、殿山泰司、川口敦子、小松方正、佐々木すみ江、浦辺粂子、初井言栄、伊佐山ひろ子、金井 大、他。撮影は黒田清巳。幼少時の病気のために半失明となった津軽三味線の名人・高橋竹山(ちくざん)の苦難の半生を描いた伝記映画。明治43年生まれの高橋定蔵(林 隆三)は、3歳の時に麻疹をこじらせて半失明となり、小学校も途中で退学。定蔵が15歳になった時、行く末を心配した母トヨ(乙羽信子)が、彼を隣村の戸田重太郎(観世栄夫)の弟子として住み込ませ、戸田から三味線と唄を習わせる。定蔵は青森、秋田、北海道などを回り、17歳の時に独立。八戸の盲唖学校へ入学し、戦後の昭和25年、41歳の時に成田雲竹(佐藤 慶)の伴奏者となって、“竹山”の号を得る。
新藤兼人監督の作品を多数手がけている林 光のスコアは、静かにジェントルな主題「PART I」「PART II」「PART III」と、純日本的な尺八のソロ「尺八 I」「尺八 II」「尺八 III」が交互に展開し、静かにドラマティックな主題からリリカルで美しい主題へと展開する「PART IV」で締めくくる(ここに収録されているのはアンダースコアのみで、高橋竹山による津軽三味線の演奏は含まれていない)。
林 光(1931〜)は、慶應義塾高等学校で遠山一行の授業を受け、東京藝術大学作曲科中退。尾高尚忠に師事し、管弦楽を含む多くの作品を発表しているが、合唱組曲「原爆小景」が特に有名。日本語による歌劇の可能性をもとめて、多くの歌劇作品を書き、オペラシアターこんにゃく座の座付き音楽監督、作曲家を務めている。また、宮沢賢治の音楽作品を広める活動も行っている。管弦楽作品には「こどもの交響曲」(1942)「序曲ハ短調」(1944)「フルートと管弦楽のための牧歌(パストラーレ)」(1946)「スケルツォ・サンフォニック(交響的スケルツォ)」(1946)「交響管弦楽のための一章」(1952〜1953)「交響曲ト調(第1番)」(1953)「交響曲第2番『さまざまな歌』」(1983)「交響曲第3番『八月の正午に太陽は…』」(1990年)「ヴィオラ協奏曲『悲歌』」(1995)等がある。
林 光が手がけた映画音楽には「森は生きている」(1956)「うなぎとり」(1957)「影なき声」(1958)「十一人の越冬隊 日本南極地域観測第一次越冬隊の記録」(1958)「ペンギンぼうやルルとキキ」(1958)「踏みはずした春」(1958)「危険な女」(1959)「人間の壁」(1959)「海ッ子山ッ子」(1959)「第五福竜丸」(1959)「荷車の歌」(1959)「裸の島」(1960)「武器なき斗い」(1960)「血は渇いてる」(1960)「白い粉の恐怖」(1960)「狂熱の果て」(1961)「女ばかりの夜」(1961)「大人と子供のあいの子だい」(1961)「胎動期 私たちは天使じゃない」(1961)「あれが港の灯だ」(1961)「甘い夜の果て」(1961)「松川事件」(1961)「名もなく貧しく美しく」(1961)「ぶらりぶらぶら物語」(1962)「人間」(1962)「秋津温泉」(1962)「お吟さま」(1962)「明日ある限り」(1962)「夢でありたい」(1962)「母」(1963)「嵐を呼ぶ十八人」(1963)「海軍」(1963)「一心太助 男一匹道中記」(1963)「真田風雲録」(1963)「幕末残酷物語」(1964)「甘い汗」(1964)「鬼婆」(1964)「悪党」(1965)「大阪ど根性物語 どえらい奴」(1965)「(TV)みんなの科学」(1965〜1980)「白鳥」(1966)「仰げば尊し」(1966)「アンデスの花嫁」(1966)「横堀川」(1966)「本能」(1966)「白昼の通り魔」(1966)「女の中にいる他人」(1966)「女の一生」(1967)「華岡青洲の妻」(1967)「斜陽のおもかげ」(1967)「無理心中日本の夏」(1967)「性の起原」(1967)「日本春歌考」(1967)「忍者武芸帳」(1967)「濡れた二人」(1968)「白昼堂々」(1968)「日本解放戦線 三里塚の夏」(1968)「強虫女と弱虫男」(1968)「青春の風」(1968)「帰って来たヨッパライ」(1968)「絞死刑」(1968)「薮の中の黒猫」(1968)「鉄砲伝来記」(1968)「(TV)バンパイヤ」(1968)「極道ペテン師」(1969)「かげろう」(1969)「女体」(1969)「少年」(1969)「でっかいでっかい野郎」(1969)「千羽鶴」(1969)「盲獣」(1969)「裸の十九才」(1970)「やくざ絶唱」(1970)「触角」(1970)「でんきくらげ」(1970)「マッチ売りの少女」(1971)「讃歌」(1972)「音楽」(1972)「恋の夏 L'ETE DES AMOURU」(1972)「鉄輪」(1972)「軍旗はためく下に」(1972)「(TV)国盗り物語」(1973)「心」(1973)「わが道」(1974)「(TV)おんな浮世絵 紅之介参る!」(1974〜1975)「動脈列島」(1975)「鬼の詩」(1975)「竹山ひとり旅」(1977)「(TV)花神」(1977)「(TV)夫婦」(1978)「(TV)天城越え」(1978)「聖職の碑」(1978)「(TV)虚飾の花園」(1978)「(TV)一年半待て」(1978)「(TV)火の記憶」(1978)「絞殺」(1979)「(TV)人間は何をつくってきたか 交通博物館の世界」(1980)「(TV)ザ・商社」(1980)「(TV)星の牧場」(1981)「日本フィルハーモニー物語 炎の第五楽章」(1981)「北斎漫画」(1981)「未完の対局」(1982)「(TV)街・若者たちは今」(1982)「卍」(1983)「湯殿山麓呪い村」(1984)「地平線」(1984)「(TV)山河燃ゆ」(1984)「(TV)真田太平記」(1985〜1986)「落葉樹」(1986)「ブラックボード」(1986)「さくら隊散る」(1988)「墨東綺譚」(1992)「午後の遺言状」(1995)「生きたい」(1999)「三文役者」(2000)「軍隊をすてた国」(2001)「ふくろう」(2003)「石内尋常高等小学校 花は散れども」(2008)等がある。
尚、ポリスターレーベルから1999年にリリースされた以下のコンピレーションCDに、林 光の主要な映画音楽作品が収録されている。
「林光の世界」 (Polystar / PSCR-5817) ・裸の島 ・人間 ・鬼婆 ・名もなく貧しく美しく ・強虫女と弱虫男 ・動脈列島 ・恋の夏 ・白昼の通り魔 ・秋津温泉 ・少年 ・やくざ絶唱 ・無理心中 日本の夏 ・心 ・裸の十九才 ・墨東綺譚 ・午後の遺言状 |
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(2010年12月)
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