(未公開)悪魔の花嫁  THE DEVIL RIDES OUT

作曲:ジェームズ・バーナード
Composed by JAMES BERNARD

指揮:フィリップ・マーテル
Conducted by PHILIP MARTEL

(英GDI / GDICD 013)


イギリスのハマー・フィルムによる1968年製作の傑作オカルト映画。監督は「フランケンシュタインの逆襲」(1957)「吸血鬼ドラキュラ」(1957)等ハマー・フィルムの常連テレンス・フィッシャー。出演はクリストファー・リー、チャールズ・グレイ、ニキ・アリー、レオン・グリーン、パトリック・モウアー、グエン・フランコン・デイヴィス、サラ・ローソン、ポール・エディントン、ロザリン・ランダー、ラッセル・ウォーターズ、他。黒魔術をテーマにしたデニス・ホイートリー(1897〜1977)の小説「The Devil Rides Out」を基に、「激突!」「ヘルハウス」等の名手リチャード・マシスンが脚本を執筆。撮影はアーサー・グラントが担当。

悪魔の使者モカータ(グレイ)が率いる黒魔術団と、彼らに囚われた友人を救出しようとするリシュリュー公爵(リー)達との闘いを描く。ドラキュラやフー・マンチュー等ホラー映画での悪役が多いクリストファー・リーが、ここでは珍しく黒魔団と闘う悪魔祓い(つまり善人)を演じており、これが実にかっこいい。日本未公開だが、フィッシャー、ホイートリー、マシスン、リーといったホラー映画のエキスパートが結集した作品として評価が高く、ハマー・フィルムのベスト作の1つと考えられている。

音楽は、やはりハマーの常連ジェームズ・バーナードが担当しているが、黒魔術の恐怖を表現した不気味で重苦しいタッチのオーケストラル・スコアで、特にゆっくりとした重厚なテンポで威圧的なタッチの「Opening Credits」や、「The Baptism Begins」「Orgy of Evil」「The Goat of Mendes - The Devil Himself!」「Rescuing Simon and Tanith」「The Angel of Death」等でのダイナミックな展開が良い。バーナードの音楽には、「炎の女」のように恐怖の中の美しさを描いたリリカルなスコアもあるが、この作品では黒魔術の邪悪さをストレートに表現しており、彼の個性が強烈に現われている。このCDは、ゲイリー・ウィルソンがプロデュースするGDIレーベルによるハマーのサントラ・シリーズの1枚で、ブックレットにも非常に詳細なライナーノーツと貴重なスティルが掲載されている。

尚、このCDの最後には2000年5月に収録されたクリストファー・リーへのインタビューが含まれており、この中でリーは以下のようなことを語っているが、ファンとしては非常に興味深い内容である:

・リーは英国在住時に原作者のホイートリーの家から100ヤード程の近所に住んでおり、旧知の仲だった。この原作小説の映画化をハマーのプロデューサーに提案したのもリーであり、ホイートリーは映画化に際して全面的に協力した。

・現在ハマー・フィルムの新組織ではこの映画のリメイクを準備中で、プロデューサー、監督も決定しており、脚本が執筆されている。リー自身、前回と同じリシュリュー役でリメイク版にも出演予定だが、原作小説でのリシュリューは70歳半ばという設定なので、むしろ現時点のリーの実年齢の方が原作に近い。

・前回の映画化ではクライマックスのSFXが貧相で残念だったが、リメイクでは最新のCGIによりこの点が大幅に改善されると期待している。

・面白いことに、この映画はアメリカでの公開時に題名が「The Devil's Bride」に変更された。「The Devil Rides Out」だと西部劇に間違われると考えられたからだ。

・リーは1976年にL.A.に移り住んでから、ウェス・クレイヴン、ジョン・カーペンター、フランシス・コッポラ、ブライアン・デ・パルマ、スティーヴン・スピルバーグ、ジョン・バダム、ジョー・ダンテ、マーティン・スコセッシといった映画監督に出会ったが、彼らは皆子供の頃に(ハマー・フィルムでの)リーの映画を見て育ったと彼に語ったという。

(2000年11月)

James Bernard

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