ワイルド・ブラック/少年の黒い馬   THE BLACK STALLION

(未公開)ワイルド・ブラック2/黒い馬の故郷へ   THE BLACK STALLION RETURNS


ワイルド・ブラック/少年の黒い馬   THE BLACK STALLION

作曲・指揮:カーマイン・コッポラ
Composed and Conducted by CARMINE COPPOLA

追加音楽作曲:シャーリー・ウォーカー
Additional Music Composed by SHIRLEY WALKER

演奏:ゾーエトロープ・フィルム交響楽団
Performed by the Zoetrope Film Symphony Orchestra

(ベルギーPrometheus / PCD 151)

フランシス・フォード・コッポラ製作総指揮によるファミリー・ピクチャー、「ワイルド・ブラック/少年の黒い馬」(1979年製作)と、その続編「(未公開)ワイルド・ブラック2/黒い馬の故郷へ」(1983年製作)の音楽をカップリングにしたCD(いずれも初CD化)。

1作目の「ワイルド・ブラック/少年の黒い馬」の方は、「ネバー・クライ・ウルフ」(1983)「ウインズ」(1992)「グース」(1996)等のキャロル・バラードが監督。出演はケリー・レノ、ミッキー・ルーニー、テリー・ガー、クラレンス・ミューズ、ホイト・アクストン、マイケル・ヒギンズ他。ウォルター・ファーレイの原作を基にメリッサ・マシスン、ウィリアム・D・ウィットリフとジャンヌ・ローゼンバーグが脚本を執筆。撮影はキャレブ・デシャネル。1946年、少年アレックは乗っていた船が北アフリカ洋上で嵐と火事により難破したことで、一緒にいた父ともはぐれて孤島へと流れ着く。そこで彼は、同じ船に乗っていて自分を助けてくれたブラックという荒馬と徐々に友情を育んでいく。半年後に漁船に救助され、アメリカへ戻ったアレックとブラックは、引退した調教士ヘンリー(ルーニー)の牧場に拾われ、そこでブラックは競走馬として鍛え上げられていく……。

この映画の音楽には当初ウィリアム・ルッソという作曲家がアサインされていたが、監督のバラードともめて降板し、製作総指揮のフランシス・フォード・コッポラが実の父である作曲家のカーマイン・コッポラを呼び寄せて作曲を依頼した。更に、監督のバラードの希望によりシャーリー・ウォーカーナイル・スタイナーが作曲に参加し、主として孤島でのシーンの追加音楽を作曲した。このCDに収録された全16曲中の10曲がコッポラ独自による音楽だが、冒頭の「Theme from the Black Stallion」は素朴で美しい主題によるメインテーマで、この親しみやすい主題は「Campfire」等でも登場する。「The Ride」での躍動的なタッチや、「Chase Through Town」での明るく快活なオーケストラルスコアも良い。ラストの「Flash Back & Winner's Circle」もドラマティックに盛り上がる。シャーリー・ウォーカー等が追加で作曲した「The Island」「First Feeding」等は民族音楽的な曲だが、あまり特徴がなくほとんど印象に残らない。「The Black Stallion」は短いが勇壮なファンファーレ。複数の作曲家が参加しているが、スコア全体はカーマイン・コッポラが指揮している。このスコアは、1979年度のLA批評家協会賞の音楽賞を授賞するとともに、同年のゴールデン・グローブの音楽賞にもノミネートされている。

カーマイン・コッポラは1940年代に、かのアルトゥーロ・トスカニーニ率いるNBC交響楽団のフルート奏者だったが、作曲家を目指して1951年よりブロードウェイ等でオーケストラの指揮を担当していた。コッポラが手がけたその他の映画音楽には「ゴッドファーザーPARTU」(1974/ニーノ・ロータと共作)「地獄の黙示録」(1979)「アウトサイダー」(1983)「友よ、風に抱かれて」(1987)「ブラッド・レッド/復讐の銃弾」(1988)「ニューヨーク・ストーリー」(1989)「ゴッドファーザーPARTV」(1990)等がある。1974年に「ゴッドファーザーPARTU」でアカデミー賞の作曲賞、1979年に「地獄の黙示録」でゴールデン・グローブの音楽賞を授賞。1991年に他界している。女優のタリア・シャイアは長女。
(2001年12月)

Carmine Coppola

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(未公開)ワイルド・ブラック2/黒い馬の故郷へ  THE BLACK STALLION RETURNS

作曲・指揮:ジョルジュ・ドルリュー
Composed and Conducted by GEORGES DELERUE

演奏:ロンドン・セッション管弦楽団
Performed by the London Session Orchestra

(ベルギーPrometheus / PCD 151)

続編の「(未公開)ワイルド・ブラック2/黒い馬の故郷へ」は、1作目の編集者だったロバート・ダルヴァが監督を担当。出演はケリー・レノ、ヴィンセント・スパーノ、テリー・ガー、アレン・ゴーウィッツ、ウッディ・ストロード、ジョディ・セレン、フェルディナンド・メイン、ドギミ・ラルビ、ホイト・アクストン他。ウォルター・ファーレイの原作を基にリチャード・クレッターとジェローム・カースが脚本を執筆。撮影はカルロ・ディ・パルマ。

音楽はフランスのベテラン、ジョルジュ・ドルリューが担当しているが、この作曲家の個性が非常に良く出たドラマティックかつパワフルなアンダースコアで、彼のエピックスコアとしてはベストの一つであろう。「Alec and the Black Stallion」は静かなイントロからフルオーケストラによる極めて情感豊かで力強いメインテーマが展開する。続く「Stowaway on the Clipper」もダイナミックでパワフルな音楽。「Raj Comes Home」は舞台となるモロッコの民族色を帯びた曲。「Meslar: Desert Hero」「Oasis Attack」はこの作曲家にはめずらしく暴力的なタッチ。「Race and Escape」は勇壮なブラスによる主題からメインテーマへと展開。「Together Again」でもメインテーマの物悲しいタッチの演奏から、オーケストラが感動的に盛り上がる。ラストの「Finale: The Black Stallion Returns」では、冒頭にメインテーマが非常にゆったりとしたテンポで情感豊かに演奏されるが、これは私がドルリュー本人を迎えたUCLAの公開講座でデモンストレーションとして見たシーンの音楽で、今でもはっきりと印象に残っている。これは映画のクライマックスで、主人公の少年と馬が、別の馬と競争するレースシーンのアンダースコアなのだが、ドルリューはここでレースのアクションそのものを激しい劇音楽によって描写するのではなく、ゆったりとした美しい音楽により少年と馬の心がレースを通じて一体となっていく様を描写している。実に見事な映画音楽である。この曲は間に静かなパッセージをはさみ、最後はメインテーマのフルオーケストラによる極めてパワフルな演奏により全体を締めくくる。

このジョルジュ・ドルリューのスコアは、映画公開当時にサントラLPが出て以来久しくCD化されておらず、ファンとしては待ちに待ったリリースと言える。1作目のカーマイン・コッポラの音楽もなかなか好感の持てるスコアだが、同じCDの中でこのドルリューの傑作スコアと直接比較されてしまうと、コッポラには気の毒だが映画音楽作曲家としての実力の差をまざまざと感じさせる。
(2001年12月)

= 2010年1月追記 =

米Intradaレーベルよりサントラ音源を初収録したCDがリリースされた。1500枚限定プレス。ホースレースのシーンでの「Race Finale」にはコーラスが入り、よりドラマティックで感動的。
収録曲は以下の通り。

★TOWER.JPで購入

THE BLACK STALLION RETURNS
Complete Score

01. Prologue And Main Title 3:12
02. Barn Fire 2:06
03. Escape From Truck 1:56
04. By The Docks 1:29
05. Clipper Take-Off 1:13
06. Meslar Approaches 1:24
07. Uruk Gunfire 2:53
08. Meslar's Battle And Death
09. Thirsty Trek 3:24
10. Raj's People Approach 2:01
11. Meet Sagr 1:31
12. Reunion 4:15
13. Easy Boy 0:36
14. Uruk Attack 1:07
15. Escape From Uruks 2:11
16. Scarface Push 1:07
17. Back To Race 3:15
18. Race Finale 1:42
19. Finale And End Title 7:50

Total Time: 47:09

Original 1983 Soundtrack Album

20. Alec And The Black Stallion 3:09
21. Stowaway On The Clipper 2:08
22. Raj Comes Home 3:33
23. Meslar: Desert Hero 2:34
24. Race And Escape 3:03
25. Together Again 4:14
26. Shetahn To Casablanca 1:28
27. Oasis Attack 1:40
28. Finale: The Black Stallion Returns 8:02

Total Time: 30:16

Georges Delerue

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