炎の人ゴッホ   LUST FOR LIFE

作曲・指揮:ミクロス・ローザ
Composed and Conducted by MIKLOS ROZSA

(米Film Score Monthly / FSM Vol.5 No.1)

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1956製作のアメリカ映画。印象派の画家ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ(1853 - 1890)の生涯を描いたアーヴィング・ストーンの原作の映画化で、監督は「ボヴァリー夫人」(1949)「巴里のアメリカ人」(1951)「バンド・ワゴン」(1953)「恋の手ほどき」(1958)「いそしぎ」(1965)等のヴィンセント・ミネリ。出演はカーク・ダグラス、ジェームズ・ドナルド、アンソニー・クイン、パメラ・ブラウン、ジル・ベネット、エヴェレット・スローン、ニオール・マッギニス、ノエル・パーセル、ヘンリー・ダニエル他。脚本はノーマン・コーウィン、製作はジョン・ハウスマン。撮影は「アラビアのロレンス」等のフレデリック・A・ヤングと「アラバマ物語」等のラッセル・ハーランの2大ベテランが担当。名匠ジョージ・キューカーがミネリ監督のアシスタントを務めている。

ベルギーで伝道の道を志したゴッホ(ダグラス)は、破門されて故郷に帰り、画商の弟テオ(ドナルド)の保護を受け絵に専従する。パリに出てゴーギャン(クイン)と出合い、アルルで共同生活を送るが、正反対の性格を持つ彼とは仲違いし、発狂して自分の耳を剃刀で切る。一時は回復するが、大作『鴉のいる麦畑』を描いた後、短銃で自殺する。ミネリ監督は、実際にゴッホが絵を描いたフランスやオランダの地方でロケ撮影を行い、絵画の色に近づけるために野原の一部を黄色く染めるように指示することもあったという。1956年度アカデミー賞の主演男優賞(カーク・ダグラス)、助演男優賞(アンソニー・クイン)、脚色賞、美術監督・装置賞にノミネートされ、ゴーギャンを演じたクインが受賞。ゴッホ役のダグラスも同年のゴールデン・グローブの男優賞と、NY批評家協会賞の男優賞を受賞している。

音楽はミクロス・ローザが担当しており、これは彼のベスト・スコアの1つであろう。映画のテーマにふさわしい、非常にカラフルでリッチなドラマティック・スコアを提供している。「Prelude」はパワフルなイントロから、ゴッホの絵画への情熱を見事に表現したドラマティックなメインテーマへと展開する。この主題はスコア全体を通じて登場するが、ローザの個性が明確に現れた印象的な曲。「Disaster」はベルギーの炭鉱での事故を描いたサスペンス音楽。「Brotherly Love」はゴッホの弟テオの兄に対する愛情を描いた情感豊かな音楽。「Summertime」は絵画に打ち込むゴッホを描いた、牧歌的で美しい曲。「Sien」「Contentment / Plein Air」はゴッホが恋に落ちる娼婦クリスティーヌを描いた音楽。「Light and Color」はゴッホが印象派の画家たちからその技術を学ぶシーンのカラフルな曲。「Noble Savage」ではポール・ゴーギャンの主題が登場する。「Postman Roulin」は、ゴッホの絵の対象となる郵便配達人ルーランを描いた、ややコミカルな曲。「The Yellow House / Summer / Mistral」は、ゴッホがアルルに落ち着き、傑作を次々と完成させていくシーンのドラマティックな音楽。「Loneliness」はゴーギャンと喧嘩別れしたゴッホの苦悩を描く不吉な曲。「Madness」は遂に発狂し、自分の耳を切るシーンの激しい音楽。「Blind Leading the Blind」はゴッホが回復して、再び絵を描くシーンの音楽で、ローザの前作「クオ・ヴァディス」(1951)の主題が流用されている。「Journey's End / Finale」は、短銃で自殺を図ったゴッホが最後にテオに語りかけるシーンから、格調高いフィナーレへと続く。「Apothesis」はメインテーマのリプライズによるエンド・クレジットの音楽。

ローザは自分でもこのスコアを非常に気に入っており、1958年にドイツで7曲から成る組曲として、フランケンランド州立交響楽団を指揮して録音している。この組曲は「Background to Violence Suite」というローザ作曲の犯罪映画の組曲とのカップリングで1959年にDeccaレーベルからLPとしてリリースされた(米Decca / DL710015)。このLPは1993年にVarese SarabandeレーベルよりCD化されてリリースされている(米Varese Sarabande / VSD-5405)。ここで紹介しているFilm Score MonthlyのCDは、このスコアのサウンドトラック音源の初リリースで、全33曲(+ボーナストラック6曲)/約69分にわたりローザの傑作が堪能できる。
(2002年3月)

Miklos Rozsa

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