(未公開)ジョー、満月の島へ行く   JOE VERSUS THE VOLCANO

作曲・指揮:ジョルジュ・ドルリュー
Composed and Conducted by GEORGES DELERUE

(米Masters Film Music / SRS 2014)


1990年製作のアメリカ映画。監督・脚本は「月の輝く夜に」(1987)「生きてこそ」(1993)「恐竜大行進」(1994)「コンゴ」(1995)等の脚本で知られるジョン・パトリック・シャンレー。出演はトム・ハンクス、メグ・ライアン(一人三役)、ロイド・ブリッジス、ロバート・スタック、ダン・ヘダヤ、キャロル・ケイン、アマンダ・プラマー、オシー・デイヴィス、エイブ・ヴィゴダ他。撮影はスティーブン・ゴールドブラット。製作会社はアンブリン・エンターテインメントで、製作総指揮はスティーヴン・スピルバーグ、キャスリーン・ケネディとフランク・マーシャル。SFXはILM。「めぐり逢えたら」「ユー・ガット・メール」トム・ハンクスメグ・ライアンが初共演したファンタジーだが、日本ではなぜか劇場未公開でビデオでのみリリースされている。

医者(スタック)から難病のために余命半年と宣告されたジョー・バンクス(ハンクス)は、会社を辞めて昔から好きだった同僚のディーディー(ライアン)とデートするが、彼女はジョーの寿命を聞いて去ってしまう。翌朝、とある会社の社長グレイナモア(ブリッジス)がジョーを訪ねてきて、生きている間はカード使い放題の代わりに、南の島ワポニ・ウーにしかないレアメタルを守るために、その島の火山を諫める生贄となってほしいと持ちかける。自暴自棄でこれを引き受けたジョーは、ニューヨークで山ほど買い物をしてロサンゼルスへと向かい、画家で詩人で情緒不安定な社長令嬢のアンジェリカ(ライアン、二役目)に空港で出迎えられる。ジョーはアンジェリカに送られ、彼女の妹パトリシア(ライアン、三役目)のヨットで島へと向かうが・・。

音楽はフランスのベテラン、ジョルジュ・ドルリューで、これは彼が亡くなる2年前に手がけたスコアである。冒頭の20秒ほどの「Once Upon A Time...」はオルゴール風の主題で、スコア中で繰り返し登場する。続く「Brain Cloud」は、始まった途端にドルリューだとわかる情感豊かな音楽だが、主人公ジョーの難病を描写したややトラジックなトーンの曲。「Dinner with Dee Dee」はジョーがディーディーとデートするシーンのチャーミングな音楽で、ラブテーマがギターで奏でられる。「Love Theme」は同じラブテーマのオーケストラによる演奏だが、まさに“ドルリュー節”全開の美しさで、心が洗われるような名曲。この主題は「To the Ship」「Pat Tells Joe」「Fishing」「I've Got to Go」等でも登場する。「Graynamore's Pitch」はジョーが社長から提案を受けるシーンの陰謀めいた音楽。「Shopping Spree」はジョーがニューヨークで買い物をするシーンの明るく華麗な曲。「The Storm and the Rescue」は、ジョー達が嵐に襲われるシーンのオーケストラによる激しいサスペンス調のアンダースコアで、9分以上に及ぶドラマティックな曲。「Hava Nagila and When Johnny Comes Marching Home」はワポニ・ウー島の島民たちがジョーを迎えるシーンの曲だが、“ジョニー(ジョー)の凱旋”が使われているところが可笑しい。「They Sail Away」は冒頭のオルゴール曲のリプライズ。「End Credits」ではドルリューのラブテーマに監督のジョン・パトリック・シャンレーが歌詞をつけた“Marooned Without You”という曲がコーラスでフィーチャーされている。尚、このサントラCDに収録されている「Brain Cloud」「Shopping Spree」「Alone in New York」「Fishing」等のアンダースコアは映画では既製曲の挿入歌にリプレースされてしまい、実際には使用されなかった。

このCDのレーベル“Masters Film Music”は、ロバート・タウンソンがVarese Sarabandeの社長に就任する前にカナダで立ち上げたレーベルで、当時はジェリー・ゴールドスミスがフィルハーモニア管弦楽団を指揮した作品集(別のレーベルから何度か再リリースされている)や、ロイ・バッドの「ワイルド・ギース」、バーナード・ハーマンの「愛のメモリー」、ジョン・ウィリアムスの「華麗なる週末」等のサントラCDをリリースしていた。この「ジョー、満月の島へ行く」は、“Masters Film Music”レーベルを復活させたシリーズの1枚として2002年に発売されたCDだが、ドルリューの晩年の傑作スコアの1つであり、ファンとしては非常に嬉しいリリースである。
(2002年6月)

Georges Delerue

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