ジョルジュ・ドルリュー=フィリップ・ド・ブロカ監督作品集(1969-1988)
LE CINEMA DE PHILIPPE DE BROCA: MUSIQUES DE GEORGES DELERUE 1969-1988

作曲・指揮:ジョルジュ・ドルリュー
Composed and Conducted by GEORGES DELERUE

(仏Universal / 980 988-5)


収録曲>

1. 君に愛の月影を LES CAPRICES DE MARIE (1969)
  ・Les caprices de Marie par Cora Vaucaire
  ・Broderick
  ・Gabriel et Marie
2. (未公開)CHERE LOUISE (1972)
  ・Chere Louise
  ・Luigi
  ・Solitude
3. ベルモンドの怪盗二十面相 L'INCORRIGIBLE (1975)
  ・Victor et Camille au Mont Saint-Michel
  ・Tendre Marie-Charlotte
  ・Imprevisible denouement
4. (未公開)JULIE POT-DE-COLLE (1977)
  ・Julie nostalgie
  ・Julie pot-de-colle
5. (未公開)TENDRE POULET (1977)
  ・Depart pour Honfleur
  ・Antoine et Lise
  ・Meurtre et bicyclette
  ・Lever du jour
  ・Les jardins de Lise
  ・Tendre poulet
6. (未公開)LE CAVALEUR (1978)
  ・Premier mouvement du concerto pour piano et orchestre n.4 en sol majeur (extrait)
7. (未公開)L'AFRICAIN (1983)
  ・Face to face, par Vivian Reed
  ・African Suite
8. (未公開)ソフィー・マルソーの愛、革命に生きて CHOUANS! (1988)
  ・Theme des chouans
  ・L'envol de la montgolfiere
  ・Celine et Aurele
  ・Chouans!

 

「大盗賊」(1961)「リオの男」(1963)「まぼろしの市街戦」(1967)「おかしなおかしな大冒険」(1973)「愛と復讐の騎士」(1997)等、洒落たコメディやシリアスなドラマで知られるフィリップ・ド・ブロカ監督(1933/3/15生)とジョルジュ・ドルリューとのコラボレーション作品(1969〜1988年製作)を集めたコンピレーション。

1. 君に愛の月影を LES CAPRICES DE MARIE (1969)

1969年製作(日本公開は1972年/英語題名は「GIVE HER THE MOON」)。出演はフィリップ・ノワレ、マルト・ケラー、ヴァレンティナ・コルテーゼ、フランソワ・ペリエ、フェルナン・グラヴェ、バート・コンヴィ他。脚本はダニエル・ブーランジェとフィリップ・ド・ブロカ、撮影はジャン・パンゼ。フランス北部の小さな村アンジュバンの村長の愛娘マリー(ケラー)と、彼女を密かに愛する学校の先生ガブリエル(ノワレ)、そして“海の女王”コンテストで優勝したマリーを婚約者として強引にニューヨークへ連れ帰ってしまうアメリカの大富豪ブロデリック(コンヴィ)の3人をめぐるお伽噺風の恋愛コメディ。音楽は「Les caprices de Marie par Cora Vaucaire」がコーラ・ヴォーケールのヴォーカルによるジェントルな主題歌。「Broderick」はライトで爽やかなタッチのブロデリックの主題。「Gabriel et Marie」はメインの主題のセンチメンタルなタッチの演奏で、ピアノとアコーディオンの響きが美しい。

2. (未公開)CHERE LOUISE (1972)

1972年製作(英語題名は「DEAR LOUISE」)。出演はジャンヌ・モロー、ジュリアン・ネグレスコ、ディディ・プレゴ、イヴ・ロベール、ピポ・スタルナッザ、ルシアン・ルグラン他。ジャン=ルイ・キュルティスの原作を基にジャン=ルー・ダバディが脚本を執筆。撮影はリカルド・アロノヴィッチ。40歳の女性(モロー)と年下の男の恋愛を描いたドラマ。ドルリューの音楽は、湧き上がるようなイントロからピアノとストリングスによるこの上なく美しくドラマティックなメインの主題へと展開する「Chere Louise」が素晴らしい。個人的にも大好きな曲。「Luigi」は口笛をフィーチャーしたメランコリックな主題。「Solitude」はメイン主題のリプライズ。実に美しく、深く心に染み入る。

3. ベルモンドの怪盗二十面相 L'INCORRIGIBLE (1975)

1975年製作(日本公開は1976年/英語題名は「THE INCORRIGIBLE」)。出演はジャン=ポール・ベルモンド、ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド、ジュリアン・ギオマール、シャルル・ジェラール、ダニエル・チェカルディ、ミシェル・ボーヌ、キャプシーヌ、アネモーネ、アンドレア・フェレオル他。脚本はフィリップ・ド・ブロカとミシェル・オーディアール、撮影はジャン・パンゼ。20の名前を使い分け、20人の愛人をもつ神出鬼没の大怪盗ヴィクトール(ベルモンド)。刑務所から出所した彼は、保護監察官のマリー=シャルロット(ビュジョルド)に一目ぼれして付き合いはじめるが、博物館の館長である彼女の父親が保有するエル・グレコの絵画に目をつけ・・。音楽は「Victor et Camille au Mont Saint-Michel」が、ジェントルなイントロから躍動的なワルツへ展開。「Tendre Marie-Charlotte」は、ピアノとストリングスによる繊細で美しいマリー=シャルロットの主題。「Imprevisible denouement」は軽快なワルツからサスペンス風のアンダースコアに展開する。

4. (未公開)JULIE POT-DE-COLLE (1977)

1977年製作のコメディ(英語題名は「JULIE GLUE POT」)。出演はジャン=クロード・ブリアリ、マルレーヌ・ジョベール、アレクサンドラ・ステュワート、クリスチャン・アレール、フィリップ・ルロー、フランシス・ルメール、ラインハルト・コルデホフ他。ピーター・ド・ポルネーの原作「The Chains of Pity」を基にジャン=クロード・カリエールが脚本を執筆。音楽は「Julie nostalgie」が静かでジェントルな主題、「Julie pot-de-colle」は同じ主題のやや明るめのアレンジメント。シンプルだがドルリューらしいメロディが良い。

5. (未公開)TENDRE POULET (1977)

1978年製作のアクション・コメディ(英語題名は「DEAR INSPECTOR」)。出演はアニー・ジラルド、フィリップ・ノワレ、カトリーヌ・アルリック、ユベール・デシャンプ、ポーレット・デュボスト、ロジェ・デュマ、レイモン・ジェローム、ギイ・マルチャン、シモーヌ・ルナン、ジョルジュ・ウィルソン他。クロード・オリヴィエとジャン=ポール・ルーランの原作「Le commissaire Traquerelle et le Frelon」を基にミシェル・オーディアールとフィリップ・ド・ブロカが脚本を執筆。撮影はジャン=ポール・シュワルツ。20年前に同じ大学に通っていた刑事のリズ(ジラルド)と教授のアントワーヌ(ノワレ)は交通事故をきっかけに再会する。リズは自分が刑事であることをアントワーヌに隠して、ある殺人事件の捜査を進める・・。この映画はアメリカで1979年にブレンダ・ヴァッカーロ主演のTV映画「DEAR DETECTIVE」としてリメイクされた。ドルリューの音楽は、クラシカルで美しい「Depart pour Honfleur」「Antoine et Lise」「Tendre poulet」、重いサスペンス調のイントロから軽快なワルツへと展開する「Meurtre et bicyclette」、メランコリックな「Lever du jour」、ジェントルな「Les jardins de Lise」の6曲が収録されている。「Tendre poulet」はアコーディオンのメランコリックな響きが大人のラブストーリーにふさわしい。このスコアは仏DEESSEレーベルよりサントラLPが出ていたが、現時点でアルバムとしてはCD化されていないので、この6曲の収録は貴重。

6. (未公開)LE CAVALEUR (1978)

1979年製作のコメディ(英語題名は「PRACTICE MAKES PERFECT」)。出演はカトリーヌ・アルリック、ジャン=クロード・ヴァンチュラ、ルシアン・ルグラン、ニコール・ガルシア、キャロル・リクソン、アニー・ジラルド、リーラ・ケドロヴァ、ジャン・ロッシュフォール、フィリップ・カステッリ、ドミニク・プロブスト、ダニエル・ダリュー他。脚本はミシェル・オーディアールとフィリップ・ド・ブロカ。撮影はジャン=ポール・シュワルツ。ロッシュフォール扮するコンサートピアニスト、エドゥアールと様々な年代の女性(アルリック、ガルシア、ダリュー等)との関係を描く恋愛コメディ。音楽はドルリューのオリジナルではなく、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番第1楽章(Premier mouvement du concerto pour piano et orchestre n.4 en sol majeur)をドルリューが編曲し、指揮したもの。劇中ではベートーヴェン以外にバッハ、オッフェンバック、シューマン等のクラシックも使われている。

7. (未公開)L'AFRICAIN (1983)

1983年製作のコメディ(英語題名は「THE AFRICAN」)。出演はカトリーヌ・ドヌーヴ、フィリップ・ノワレ、ジャン=フランソワ・バルメ、ジャック・フランソワ、ジャン・ベンギギ、ジョセフ・モモ、ヴィヴィアン・リード、ピエール・ミシャエル、ゴードン・ヒース、レイモン・アキロン、ジゼル・シャルパンティエ、マキシム・ドゥフー他。脚本はジェラール・ブラッシュとフィリップ・ド・ブロカ。撮影はジャン・パンゼ。ピグミー族の住むウィリアムス湖のそばに旅行センターを建設しようと東アフリカにやってきたシャルロット(ドヌーヴ)は、3年前に彼女の元を去りアフリカに移住した夫のヴィクトール(ノワレ)に再会する・・。音楽は、「Face to face, par Vivian Reed」はヴィヴィアン・リードのドラマティックなヴォーカル(なぜか英語の歌詞)による主題歌。映画がコメディであることを考えるとシリアスなトーンには少し違和感がある。続く「African Suite」はフル・オーケストラによるスケールの大きいアドヴェンチャー・スコアで、雄大なメインテーマからダイナミックなアクション音楽等へと展開するカラフルな組曲となっている。このスコアは公開当時に仏WEAレーベルよりサントラLPが出ていたが、現時点で正規にはCD化されておらず、この主題歌と7分48秒の組曲の収録はファンとしては嬉しいが、なぜかあまり音質がよくない。

8. (未公開)ソフィー・マルソーの愛、革命に生きて CHOUANS! (1988)

1988年製作の歴史ドラマ。出演はフィリップ・ノワレ、ソフィー・マルソー、ランベール・ウィルソン、ステファーヌ・フレス、ジャン=ピエール・カッセル、ラウール・ビレリー、ジャン・パレデス、ロジェ・デュマ、イザベル・ジェリナ他。脚本はフィリップ・ド・ブロカ、ダニエル・ブーランジェとジェローム・トネール。撮影はベルナール・ジッツェルマン。18世紀フランス。飛行機作りに熱中するケルファデック伯爵(ノワレ)に養子として育てられ、兄弟のように仲良く育ったオーレル(フレス)、タルカン(ウィルソン)とセリーヌ(マルソー)。やがて戦争が勃発し、オーレルとタルカンはセリーヌへの愛情を胸に敵と味方に別れて戦う運命となる・・。ドルリューのスコアは歴史劇にふさわしいソリッドなオーケストラ音楽で、「Theme des chouans」は中世音楽風のイントロからダイナミックな主題へ、「L'envol de la montgolfiere」は荘厳なタッチ、「Celine et Aurele」はトラジックなラブテーマ、ラストの「Chouans!」はストイックでドラマティックなメインの主題で締めくくる。このスコアは映画公開当時に仏CarrereレーベルよりサントラCDが出ており、長年入手困難となっていたが、2003年にカナダのDisques Cinemusiqueレーベルが異なるジャケットデザインにより再リリースしている。

尚、このコンピレーションCDの発売と同時に、同じ仏Universalレーベルからドルリュー=ド・ブロカのコラボレーションによる1959〜1968年製作作品を集めた以下のCDがリリースされている。

LE CINEMA DE PHILIPPE DE BROCA: MUSIQUES DE GEORGES DELERUE 1959-1968
Composed and Conducted by GEORGES DELERUE
(仏Universal / 980 988-4)
 
・(未公開)Les jeux de l'amour
  ・(未公開)Le farceur
  ・(未公開)L'amant de cinq jours
  ・大盗賊 Cartouche
  ・リオの男 L'homme de Rio
  ・ピストン野郎 Un monsieur de compagnie
  ・カトマンズの男 Les tribulations d'un Chinois en Chine
  ・まぼろしの市街戦 Le roi de coeur
  ・(未公開)悪党 Le diable par la queue

(2003年9月)

Georges Delerue

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