ラスト サムライ  THE LAST SAMURAI

作曲:ハンス・ジマー
Composed by HANS ZIMMER

指揮:ブレイク・ニーリィ
Conducted by BLAKE NEELY

演奏:ハリウッド・スタジオ交響楽団
Performed by the Hollywood Studio Symphony

(米Elektra/WMG / 62932-2)

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2003年製作のアメリカ映画。監督は「きのうの夜は…」(1986)「グローリー」(1989)「レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い」(1994)「戦火の勇気」(1996)「マーシャル・ロー」(1998)等のエドワード・ズウィック。出演はトム・クルーズ、ティモシー・スポール、渡辺 謙、ビリー・コノリー、トニー・ゴールドウィン、真田広之、小雪、小山田シン、池松壮亮、中村七之助、菅田 俊、福本清三、原田眞人、他。脚本はジョン・ローガン、エドワード・ズウィックとマーシャル・ハースコヴィッツ。撮影はジョン・トール。明治維新直後の日本。西洋式の戦術を取り入れようとする日本政府から政府軍指導のために招聘された南北戦争の英雄ネイサン・オールグレン大尉(クルーズ)は、政府軍に抵抗を続ける勝元盛次(渡辺)率いる侍たちに捕えられ、山深い彼らの村へと連れて行かれる・・。日本を描いたハリウッド大作というと、「ライジング・サン」や「パール・ハーバー」のように、あまりにもいい加減な“日本描写”が日本人から見て噴飯ものの作品が多いが、この映画は日本の文化やサムライの生き様に対しての製作者たちのリスペクトが感じられ、その製作姿勢に単純に感銘を受ける。ただ、アメリカでの興行成績がいまひとつだったのは、トム・クルーズ演じる主人公が非常に抽象的な理由のために命をかけて戦っており、アメリカ人として彼に感情移入するのが難しかったからだと思う。一方、日本人から見た渡辺 謙のキャラクターは、明確な目的のために戦っており、感情移入がしやすい。ただ、明らかな悪役が原田演じる日本政府役人だけというのが、ドラマ的には少し弱い。

音楽はハンス・ジマーだが、いつものようなメディア・ヴェンチャーズ一派の参加を避けたかなり独立した仕事になっており、気合が入っている。オーケストラをベースにヴォーカル(デロレス・クレイ)、ヴァイオリン(クレイグ・イーストマン)、琴(ジューン・クラモト)、太鼓(エミール・リチャーズ)、尺八(ビル・シュルツ)、シンセサイザー(ジマー自身)等のソロを加えた演奏で、11曲が途切れのない1つの交響楽のように展開する。「A Way of Life」は静かに情感豊かなメインの主題だが、(日本楽器の使用を除いて)特に日本的な味付けはなされていない。後半がジマーらしいストイックな主題により盛り上がるが、この主題は「Spectres in the Fog」「Safe Passage」「Red Warrior」等で繰り返し登場し、最も印象に残る。「Taken」はオールグレンが勝元たちに捕らえられ、村へと連れて行かれるシーンのドラマティックな音楽。「To Know My Enemy」は太鼓やヴォーカルを加えた神秘的なタッチ。「Idyll's End」の後半もパワフルに盛り上がる。「Red Warrior」ではサムライのかけ声(?)がアクセントになっている。「Spectres in the Fog」「Red Warrior」「The Way of the Sword」等でのパーカッシヴなアクション音楽も迫力あり。「A Small Measure of Peace」は、メインの主題により静かに締めくくる。最近のハンス・ジマーの作品中ではかなり力の入ったスコアで、ベテランらしい風格さえも感じさせる。
(2004年1月)

Hans Zimmer

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