バラバ BARABBAS
作曲:マリオ・ナシンベーネ 指揮:フランコ・フェラーラ (英Hallmark / 714562) |
このCD(輸入盤)を購入する |
1962年製作のアメリカ=イタリア合作映画。監督は「バイキング」(1957)「ミクロの決死圏」(1966)「絞殺魔」(1968)「トラ・トラ・トラ!」(1970)「ソイレント・グリーン」(1973)「王子と乞食」(1977)「キング・オブ・デストロイヤー/コナンPART2」(1984)等のリチャード・フライシャー(1916〜2006)。出演はアンソニー・クイン、シルヴァーナ・マンガーノ、アーサー・ケネディ、ジャック・パランス、ハリー・アンドリュース、ヴィットリオ・ガスマン、アーネスト・ボーグナイン、ケティ・フラド、ノーマン・ウーランド、ヴァレンティナ・コルテーゼ、アーノルド・フォア、マイケル・グウィン、ローレンス・ペイン、ダグラス・フォーリー、シモーヌ・シニョレ、シャロン・テイト他。スウェーデンの作家ペール・ラーゲルクヴィストによる1951年度ノーベル文学賞受賞小説『Barabbas』を基に「三文オペラ」(1952)「天地創造」(1966)等のクリストファー・フライ(1907〜2005)が脚本を執筆。撮影はアルド・トンティ。製作は「戦争と平和」(1956)「ワーテルロー」(1969)「狼よさらば」(1974)「キングコング」(1976)「コナン・ザ・グレート」(1982)「逃亡者」(1990)「ハンニバル」(2001)等のディノ・デ・ラウレンティス(1919〜2010)。かつてエルサレムでは、年に一度、ユダヤ民衆の指名によって罪人を一人処刑するとき、別の罪人を一人だけ釈放する慣習があった。イエス・キリストが刑に処された年、凶悪な盗賊の親玉バラバ(クイン)は、ローマのユダヤ総督ピラト(ケネディ)が民衆の声を聞き入れたことで、幸運にも釈放されることになった。キリストの死後、その信者になっていたバラバの愛人ラケル(マンガーノ)も、捕えられて処刑された。この出来事にバラバは再び狂暴化して捕えられ、シチリアの硫黄鉱に流刑となった。ガスの渦巻く地獄のような地下での労役に多くの囚人が生命を失ったが、バラバとキリスト教徒サハク(ガスマン)だけは生き延びた。不死身の二人の話を聞いた州総督夫妻は、彼らを闘士養成所へ入れた。しかしサハクは闘技場で相手を殺すことを拒み、反逆罪に問われて隊長のトルヴァルド(パランス)に処刑されてしまう……。キリストが処刑される日食のシーンは、実際に日食が起きたタイミングで撮影されている。
音楽は「アレキサンダー大王」(1956)「バイキング」(1957)「ソロモンとシバの女王」(1959)「剣と十字架」(1961)といったスペクタクル史劇のスコアで知られるイタリアの作曲家マリオ・ナシンベーネ(1913〜2002)。「Main
Theme」は、荘厳なファンファーレから静かなボレロ風の主題が徐々にクレッシェンドしてくメイン・テーマで、厳しいストイシズムとダイナミックな力強さが見事な傑作。ナシンベーネの数多い作品中でもベストの主題の1つだろう。スコア全体がこのメインの主題のバリエーションと、様々な効果音(SE)の組み合わせにより構成されている(ナシンベーネは、タイプライターや時計の音、自転車のベルといった楽器以外の音源をスコアに取り入れたことで知られる)。「The
Whipping of
Christ」は、嵐の中でキリストを鞭打つSEと人々の泣き叫ぶ声にメインの主題が重なる。「Eclipse」は、日食のシーンでの地響きのようなSEとメインの主題。「The
Tomb」は、抑制されたタッチからフルートによるメインの主題へ。「Intermezzo」は、メインの主題のダイナミックでスペクタキュラーなバリエーションによる間奏曲。「The
Mines」は、暴風のSEにパーカッシヴでダークな主題、ゆっくりとしたマーチ調のメイン主題が重なる。「Arrival in
Rome」は、ダイナミックでパワフルなマーチ。「Rome
Afire」は、重厚なサスペンス音楽。「The Death of
Barabbas」は、コーラスによるメインの主題にアンソニー・クインのセリフが重なる。最後の「Musical
Examples」は、スコア中で使われているSEの抜粋と、チャック・ブルースのナレーションによるその説明。
このスコアは、公開当時に米ColpixレーベルよりサントラLPが出ており、同じ内容のLPが1981年に米Citadelレーベルより再発され、1989年にはイタリアのLegendレーベルから「アレキサンダー大王」「コンスタンチン大帝」と組み合わせたコンピレーションCDがリリースされているが、このCDには「Main
Theme」が収録されていなかった。このHallmarkレーベルのCDは、当初のColpixレーベルのサントラと同内容。
(2015年2月)
Mario Nascimbene
Soundtrack Reviewに戻る
Copyright (C) 2015 Hitoshi Sakagami. All Rights Reserved.