ジュピター  JUPITER ASCENDING

作曲:マイケル・ジアッキーノ
Composed by MICHAEL GIACCHINO

指揮:ルートヴィヒ・ヴィッキ、ロバート・ジーグラー、ティム・シモネック
Conducted by LUDWIG WICKI, ROBERT ZIEGLER, TIM SIMONEC


演奏:ハリウッド・スタジオ交響楽団、ロンドン・ヴォイシーズ
Performed by the Hollywood Studio Symphony, Loncon Voices

(米Varese Sarabande / 302 064 223 2)

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2015年製作のアメリカ=イギリス合作映画。製作・監督・脚本は「バウンド」(1996)「マトリックス」(1999)「マトリックス リローデッド」(2003)「マトリックス レボリューションズ」(2003)「スピード・レーサー」(2008)「クラウド アトラス」(2012)等のラナ・ウォシャウスキー(1965〜)とアンディ・ウォシャウスキー(1967〜)の“ザ・ウォシャウスキーズ”。出演はミラ・クニス、チャニング・テイタム、ショーン・ビーン、エディ・レッドメイン、ダグラス・ブース、タペンス・ミドルトン、ニッキー・アミューカ=バード、クリスティナ・コール、ニコラス・A・ニューマン、ラモン・ティカラム、アリヨン・バケアー、ペ・ドゥナ、ジェームズ・ダーシー、ティム・ピゴット=スミス、テリー・ギリアム他。撮影はジョン・トール。視覚効果デザインはジョン・ゲイター。偉業を成し遂げる宿命を持つ星座に生まれながらも地球で貧しい暮らしを送るヒロインが、宇宙最大の王族を巡る王位継承の争いに巻き込まれ、彼女を護るために遣わされた究極戦士とともに人類の命運も左右する壮絶な戦いに身を投じていくさまを描くスペース・アドヴェンチャー大作。近未来のシカゴで清掃員として働くジュピター(クニス)は、ある日何者かに襲われ、突然現れた強靭な戦士(テイタム)に助けられる。ケインは、彼女が地球さえも支配管理する宇宙最大の王族の末裔だと告げる。その王族では3人の継承者が覇権めぐり争っており、その1人のバレム(レッドメイン)は、亡き女王と同じ遺伝子配列を持つジュピターを、彼女が住む地球ごと消し去ろうと画策していた。ケインはジュピターを護るために地球に送り込まれた遺伝子操作による最強の戦士だった……。当初はナタリー・ポートマンがジュピター役にキャストされており、彼女の降板後、ルーニー・マーラが検討されていた。

音楽は「スピード・レーサー」でも“ザ・ウォシャウスキーズ”と組んでいるマイケル・ジアッキーノ(1967〜)。CD2枚組に103分超のスコアを展開する力作。1枚目の最初の4曲は4楽章から成る切れ目のないシンフォニーとなっており、「Jupiter Ascending - 1st Movement」は、オーケストラとコーラスによる壮大なイントロから幻想的なソプラノとコーラスをフィーチャーした荘厳な主題へと展開する第1楽章。続く「Jupiter Ascending - 2nd Movement」は、静かにストイックな第2楽章。「Jupiter Ascending - 3rd Movement」は、メランコリックなピアノによるイントロからオーケストラとコーラスによるダイナミックでパワフルな主題へと展開する第3楽章。「Jupiter Ascending - 4th Movement」は、静かにドラマティックな主題からソプラノをフィーチャーした荘厳な主題へと展開する第4楽章。「The Houses of Abrasax」は、ダークで抑制されたタッチから躍動的なサスペンスアクション音楽へ。「I Hate My Life」は、オーケストラとコーラスによるストイックなタッチのアクション音楽。「Scrambled Eggs」は、ダイナミックでパワフルなアクション音楽。「The Abrasax Family Tree」は、幻想的なソプラノをフィーチャーしたややメランコリックなタッチの主題から後半サスペンスアクション音楽へ。「The Shadow Chase」「Mutiny on the Bounty Hunter」「It's a Hellava Chase」「Family Jeopardy」「Abdicate This!」は、オーケストラとコーラスによるビジーでパワフルなアクション音楽。「The Titus Clipper」は、ジェントルで大らかな主題から静かにドラマティックな主題へ。「One Reincarnation Under God」は、静かにドラマティックな主題から後半ダイナミックなアクション音楽へ。「Digging up the Flirt」は、ややメランコリックな曲。「A Wedding Darker」は、ドラマティックでストイックな曲。「Regenex Is People!」「The Lies Have It」は、ダークで抑制されたサスペンス音楽。「Dinosaur to New Heights」「Flying Dinosaur Fight」「Flying Dinosaur Fight with Guts (Bonus Track)」は、ビジーでパーカッシヴなアクション音楽。「Commitment」は、静かにメランコリックなタッチから後半オーケストラとコーラスによるビジーでパワフルなアクション音楽へ。オーケストラとコーラスをパワフルに鳴らしたダイナミックなシンフォニック・スコア。

監督たちから撮影に入る前にスコアを作曲してほしいと依頼されたマイケル・ジアッキーノは、文章による細かい説明を参照して映像なしに交響組曲を作曲し、ロンドンのアビー・ロード・スタジオで録音した。監督たちは撮影の際にその組曲を流して俳優たちに聴かせながら演出した。最終的な編集が完了した後、ジアッキーノは映像のタイミングに合わせて追加の音楽を作曲し、録音した(このCDには最初の組曲と追加スコアの全てが収録されている)。かつて、ジョルジュ・ドルリューエンニオ・モリコーネといったヨーロッパの作曲家が特定の監督と行っていた手法に似ているが、現在のハリウッドでは非常に珍しいケースだろう。
(2015年5月)

Michael Giacchino

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