午後の曳航 THE SAILOR WHO FELL FROM GRACE WITH THE SEA
作曲・指揮:ジョニー・マンデル
Composed and Conducted
by
JOHNNY MANDEL
(米Kritzerland / KR 20030-6)
1976年製作のイギリス映画。監督は「セコンド/アーサー・ハミルトンからトニー・ウィルソンへの転身」(1966)「女狐」(1967)「メカニック」(1972)等の脚本や「パパ」(1979)「恋のスクランブル」(1983)等の監督を手がけているルイス・ジョン・カリーノ(1932〜)。出演はサラ・マイルズ、クリス・クリストファーソン、ジョナサン・カーン、マーゴ・カニンガム、アール・ローズ、ポール・トロピー、ゲイリー・ロック、スティーヴン・ブラック、ピーター・クラファム、ジェニファー・トールマン。『潮騒』(1954年)『金閣寺』(1956)『鹿鳴館』(1956)『憂国』(1961)等で知られる三島由紀夫(1925〜1970)の原作『午後の曳航』(1963)を基にルイス・ジョン・カリーノが脚本を執筆。撮影は「大列車強盗団」(1967)「冬のライオン」(1968)「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」(1981)「ネバーセイ・ネバーアゲイン」等のダグラス・スローカム(1913〜2016)。イギリスの港町ダートマス。海と船をこよなく愛する少年ジョナサン(カーン)の前に、ベル号の2等航海士ジム・キャメロン(クリストファーソン)が現れる。海の男を体現しているかのようなジムに、ジョナサンは強い憧れを抱くが、未亡人である母のアン(マイルズ)も、彼に特別な感情を寄せるのだった。ジムが出航して行った後も、アンは彼が送って来る手紙をむさぼるように読みふける。ジョナサンが属する少年グループの“首領”(ローズ)は、下等な大人の男女が考える事は同じで、ジムは英雄なんかではなく、やがて結婚話でも持ち込むのだろう、とジョナサンをからかった。ジムを英雄視するジョナサンは、首領に強く反発する。ところが港町に帰って来たジムは、首領の予測通りアンに結婚を申し込む。“英雄”だった存在が“父親”となり、憧れていた船乗りがこの世の凡俗に属していくのを、ジョナサンは裏切りと感じる。彼は仲間たちにジムの“処刑”を相談するのだった……。
音楽は「いそしぎ」(1965)「動く標的」(1966)「殺しの分け前/ポイント・ブランク」(1967)「M★A★S★H
マッシュ」(1970)「アガサ/愛の失踪事件」(1979)「デストラップ・死の罠」(1982)等のアメリカの作曲家ジョニー・マンデル(1925〜)。「The
Chief」は、静かで寂寥感に満ちたややメランコリックなタッチの主題で、この主題は続く「The Knothole」「The
New Order of the World」でも繰り返される。「Jim's
Shark」は、サスペンスフルで気だるいタッチの曲。「Cedric」「The
Tower」は、幻想的で不吉なタッチの曲。「Jonathan and
Jim」は、明るくジェントルなタッチ。「Sea
Dream」は、リリカルでジェントルな主題で、この曲のみジム役のクリス・クリストファーソンが作曲している。「Reunion」「Cameron」は、「Sea
Dream」の主題のアレンジメント。「The Picnic」「Jonathan's
Fantasy」は、サスペンスフルでダークなタッチの曲。「Wedding
Preparations」は、ハイテンションなサスペンス音楽。「End
Titles」は、幻想的で不吉なタッチから「Sea
Dream」の主題へと展開するエンドタイトル。全体に静かでミニマルなタッチで、大きく盛り上がることはないが、効果的なスコア。クリストファーソン作曲の「Sea
Dream」の主題が美しい。
このスコアは公開当時に日本のPolydorレーベルからサントラLPとEPがリリースされており、この米KritzerlandレーベルのCDは同内容の初CD化で、1000枚限定プレス。
(2016年5月)
Johnny Mandel
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