熱砂の秘密 FIVE GRAVES TO CAIRO
作曲:ミクロス・ローザ
Composed by MIKLOS ROZSA
指揮:アーヴィン・タルボット
Conducted by IRVIN TALBOT
演奏:パラマウント・スタジオ管弦楽団
Performed by Paramount Studio Orchestra
(米Intrada / ISC 355)
<収録曲>
1. 熱砂の秘密 FIVE GRAVES TO CAIRO
2. (未公開)SO
PROUDLY WE HAIL!
3. (未公開)THE HOUR BEFORE DAWN
4. (未公開)生命をむさぼる男 THE MAN ON
HALF MOON STREET
5. (未公開)最後の対決 THE WOMAN OF THE TOWN
ハンガリー出身でハリウッド黄金期の名作曲家であるミクロス・ローザ(1907〜1995)が1943〜1945年にパラマウント・スタジオで手がけた作品のコンピレーション。パラマウントが初期のオプティカルマスターを35mm磁気フィルム、そしてCDへと変換しているレストレーション作業の一環により、米Intradaレーベルよりリリースされたヴィンテージ・サントラの1枚。
「熱砂の秘密(FIVE GRAVES TO
CAIRO)」は1943年製作のアメリカ映画(日本公開は1951年4月)。
監督は「サンセット大通り」(1950)「麗しのサブリナ」(1954)「昼下りの情事」(1957)「お熱いのがお好き」(1959)「アパートの鍵貸します」(1960)「あなただけ今晩は」(1963)「シャーロック・ホームズの冒険」(1970)等の名匠ビリー・ワイルダー(1906〜2002)。出演はフランチョット・トーン、アン・バクスター、エイキム・タミロフ、エリッヒ・フォン・シュトロハイム、ペーター・ヴァン・アイク、フォーチュニオ・ボナノヴァ、フィリップ・アールム、ケネス・アンスパック、ロジャー・クリード、レスリー・デニソン、ジョン・エリクソン、バッド・ギアリー、フレデリック・ギアーマン、アート・ギルモア、クライド・ジャックマン他。「紅はこべ」(1934)「来るべき世界」(1936)等の脚本を手がけたラホス・ビロの原作戯曲『帝国ホテル』を基にチャールズ・ブラケットとビリー・ワイルダーが脚本を執筆。撮影はジョン・F・サイツ。1942年の第二次大戦北アフリカ戦線。エルウィン・ロンメル元帥(シュトロハイム)率いるドイツ軍に追いつめられたイギリス軍の敗残兵ジョン・J・ブランブル伍長(トーン)は、独りシディ・ハルフェイアのホテルに辿りついた。そこにロンメルの部隊が進駐し、ブランブルは前夜の空襲で死んだ給仕ポール・ダヴォスに成りすましてそれを迎えた。ホテルのフランス人メイドのムーシュ(バクスター)は、ロンメルの副官シュヴェグラー中尉(ヴァン・アイク)にダンケルクで捕虜になった弟の命乞いをするが、その代償に身体を求められる。ダヴォスがドイツ軍のスパイだったため、ブランブルはロンメルがエジプトの5つの地点に秘密の貯蔵庫を隠し持っている事実を突き止めるが……。シチュエーション・コメディで有名なビリー・ワイルダー監督だが、本作や「深夜の告白」(1944)「情婦」(1957)といったサスペンス/ミステリ映画の傑作も残している。当初ブランブル役にはケイリー・グラント、ムーシュ役にはイングリッド・バーグマンやシモーヌ・シニョレが検討されたという。1943年度アカデミー賞の撮影賞(白黒)、室内装置賞、編集賞にノミネートされている。また、同じ原作が1926年に「帝国ホテル(HOTEL
IMPERIAL)」(監督:マウリッツ・スティレル、出演:ポーラ・ネグリ、ジェームズ・ホール)として映画化されている。
ミクロス・ローザは「深夜の告白」(1944)「失われた週末」(1945)「シャーロック・ホームズの冒険」(1970)「悲愁」(1979)でもワイルダー監督と組んでいるが、この「熱砂の秘密」のスコアは、冒頭の「Prelude / First Scene /
Walk in Desert (abridged)」が、
スペクタキュラーなファンファーレからマーチ調のメインの主題、ドラマティックなサスペンス音楽へと展開。「Herr
Rommel」は、勇壮なマーチによるロンメル元帥の主題。「Herr Rommel Takes
Coffee」は、“ルール・ブリタニア”の主題からサスペンス音楽、ロマンティックな主題へと展開。「Bramble &
Soda」は、サスペンス音楽から後半明るく躍動的な主題へ。「The Professor's
Photograph」「Ordered to Cairo」も、サスペンス音楽。「Davos
Discovered」は、ダイナミックでドラマティックなサスペンス音楽。「Lieutenant Is
Killed」「Davos Departs」は、ビジーなサスペンスアクション音楽。「Victory Montage
(abridged)」は、勇壮でパワフルなマーチ。「Finale」は、ロマンティックな主題から荘厳で格調高いマーチへと展開するフィナーレ。ローザ自身がロイヤル・フィルを指揮した本スコアの組曲が過去にLPでリリースされていたが、この組曲も見事だった。ワイルダー監督は当初フランツ・ワックスマンにスコアを依頼しようとしたが、ワックスマンはワーナーブラザース専属で起用できなかったため、ローザに依頼した。結果として監督はこのスコアに満足したが、パラマウントの音楽部長だったヴィクター・ヤングは不満だったという。
「(未公開)SO PROUDLY WE
HAIL!」は、1943年製作のアメリカ映画。
監督は「トップ・ハット」(1935)「スイング・ホテル」(1942)等のマーク・サンドリッチ(1900〜1945)。出演はクローデット・コルベール、ポーレット・ゴッダード、ヴェロニカ・レイク、ジョージ・リーヴス、バーバラ・ブリットン、ウォルター・アベル、ソニー・タフツ、メアリー・サーヴォス、テッド・ヘクト、ジョン・リテル、ヒュー・ホー・チャン、メアリー・トリーン、キティ・ケリー、ヘレン・リンド、イヴォンヌ・デ・カーロ他。脚本はアラン・スコット、撮影はチャールズ・ラング。ハワイ勤務中の真珠湾攻撃を経て、フィリピンのコレヒドール島へと駐在したジャネット・デヴィッドソン中尉(コルベール)たち8人のアメリカ軍女性看護師たちの活躍とロマンスを描くドラマ。戦時中に製作され公開された映画ではあるが、実際の看護師たちのエピソードに基づいており、プロパガンダ色は薄いという。1943年度アカデミー賞の助演女優賞(ポーレット・ゴッダード)、脚本賞、撮影賞(白黒)、特殊効果賞にノミネートされている。
ミクロス・ローザのスコアは「Prelude」が、栄光に満ちたファンファーレから明るく勇壮な主題へと展開する前奏曲。「Shipboard
(based on “California, Here I Come”)」「Brass Band (Aloha
'Oe)」は、明るくジェントルな曲。「Christmas
Tree」「Morning」は、牧歌的なタッチの曲。「Jingle Bells
(Foxtrot)」は、ビッグバンドの演奏による“ジングルベル”。「Love
Scene」は、ロマンティックなラヴテーマ。「Olivia and
Planes」は、ドラマティックな主題から後半ダイナミックなサスペンスアクション音楽へ。「A Woman
Driver」は、ビジーなアクション音楽。「Finale」は、壮大なフィナーレ。
「(未公開)THE HOUR BEFORE
DAWN」は、1944年製作のアメリカ映画。
監督は「グリーン家の惨劇」(1929)「地獄の埠頭」(1955)等のフランク・タトル(1892〜1963)。出演はフランチョット・トーン、ヴェロニカ・レイク、ジョン・サットン、ビニー・バーンズ、ヘンリー・スティーヴンソン、フィリップ・メリヴェイル、ニルス・アスター、エドマンド・ブレオン、デヴィッド・リーランド、アミンタ・ダイン、ハリー・アレン、デヴィッド・クライド、ハリー・コーディング、マリー・ドゥ・ベッカー、レスリー・デニソン他。『人間の絆』(1915)『月と六ペンス』(1919)『アシェンデン』(1928)『剃刀の刃』(1944)等で知られるイギリスの小説家・劇作家W・サマセット・モーム(1874〜1965)の原作『夜明け前のひととき』(1942)とレスリー・サミュエルズの脚色を基にマイケル・ホーガンが脚本を執筆。撮影はジョン・F・サイツ。第二次大戦中のイギリス。無抵抗主義者の教師ジム・ヘザートン(トーン)は、オーストリア移民のドーラ・ブラックマン(レイク)に恋して結婚するが、彼女はイギリス侵攻を企むナチス・ドイツが送り込んだスパイだった……。原作者のモーム自身がイギリス情報局秘密情報部に所属していたスパイだったことは有名。
ミクロス・ローザのスコアは「Prelude / England
1923」が、明るく栄光に満ちた前奏曲から優雅なワルツへと展開。「May
Returns」は、ミステリアスなタッチからジェントルな主題へ。「The Signal
Fire」は、サスペンス音楽から後半ビジーでダイナミックなアクション音楽へ。「The
Tragedy」は、ストイックでサスペンスフルな曲。「Finale (incorporating “There’ll
Always Be an England”)」は、明るく荘厳なフィナーレ。
「(未公開)生命をむさぼる男(THE MAN IN HALF MOON
STREET)」は、1945年製作のアメリカ映画(日本では劇場未公開でテレビ放映済)。
監督は「フロリダ超特急」(1936)「海賊船長」(1952)等のラルフ・マーフィ(1895〜1967)。出演はニルス・アスター、ヘレン・ウォーカー、ラインホールド・シュンゼル、ポール・キャヴァナー、エドマンド・ブレオン、モートン・ロウリー、マシュー・ブールトン、ブランドン・ハースト、アーニー・アダムス、ノーマン・エインズリー、フランク・ベイカー、ウィルソン・ベンジ、アーサー・ブレイク、ジョージ・ブロートン、エドワード・クーパー他。「謎の下宿人」(1944)「夜は千の眼を持つ」(1947)「宇宙戦争」(1953)「宇宙征服」(1955)「勇者カイヤム」(1957)等の脚本を手がけたバー・リンドンの原作とギャレット・フォートの脚色を基にチャールズ・ケニヨンが脚本を執筆。撮影はヘンリー・シャープ。クルト・ヴァン・ブルーケン博士(シュンゼル)の特殊な療法により寿命を永らえて120歳になった科学者のジュリアン・カレル博士(アスター)は、若い女性と恋に落ちるが、ブルーケン博士の療法が使えなくなったことを知り……。1959年にイギリスのハマー・フィルムにより「(未公開)THE MAN WHO COULD CHEAT
DEATH」(監督:テレンス・フィッシャー、出演:アントン・ディフリング、ヘイゼル・コート、クリストファー・リー)としてリメイクされている。
ミクロス・ローザのスコアは「Prelude」が、華麗でロマンティックな前奏曲。「The
Diary」は、サスペンス音楽。「Finale」は、サスペンスフルなタッチから壮大なエンディングへと展開するフィナーレ。
「(未公開)最後の対決(THE WOMAN OF THE
TOWN)」は、1943年製作のアメリカ映画(日本では劇場未公開でテレビ放映済)。
監督は「硝煙のカンサス」(1943)「(TV)バッファロー・ビルの冒険」(1955)等のジョージ・アーチェインバウド(1890〜1959)。出演はクレア・トレヴァー、アルバート・デッカー、バリー・サリヴァン、ヘンリー・ハル、マリオン・マーティン、ポーター・ホール、パーシー・キルブライド、ベリル・ウォーレス、アーサー・ホール、クレム・ベヴァンズ、テディ・シャーマン、ジョージ・クリーヴランド、ラッセル・ヒックス、ハーバート・ロウリンソン、マーリーン・メインズ他。ノーマン・ヒューストンの原案を基にアニーズ・マッケンジーが脚本を執筆。撮影はラッセル・ハーラン。ダッジシティで保安官を務め、後にニューヨークで新聞記者となったバット・マスターソン(デッカー)の、保安官時代の酒場の女ドーラ・ハンド(トレヴァー)との恋と、ならず者キング・ケネディ(サリヴァン)との対決を描く西部劇。1944年度アカデミー賞の劇・喜劇映画音楽賞にノミネートされている。
ミクロス・ローザのスコアは、ジェントルでロマンティックな「Boot Hill
(Finale)」1曲のみが残存している。
(2016年10月)
Miklos Rozsa
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