(未公開)ASSAULT ON AGATHON
パワープレイ POWER PLAY

作曲・指揮:ケン・ソーン
Composed and Conducted by KEN THORNE

(米Dragon's Domain Records / DDR759)

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「HELP!四人はアイドル」(1965)「クルーゾー警部」(1968)「マーフィの戦い」(1971)「(未公開)女ガンマン・皆殺しのメロディ」(1971)「ジャガーノート」(1974)「スーパーマン II/冒険篇」(1980)「プロテクター」(1985)「(TV)帰ってきたシャーロック・ホームズ」(1987)等のイギリスの作曲家ケン・ソーン(1924〜2014)が1970年代に手がけたサスペンス映画2作品のスコアをカップリングにしたCDで、「THE KEN THORNE COLLECTION VOLUME 1」としてリリースされている。500枚限定プレス。

「(未公開)ASSAULT ON AGATHON」は、1976年製作のオーストラリア=ギリシャ合作映画。監督は「セールスマンの死」(1951)「乱暴者」(1953)「進め!ベンガル連隊」(1954)「(未公開)ナイトビジター」(1970)等のハンガリー出身のラズロ・ベネデク(1905〜1992)。出演はニコ・ミナルドス、ニーナ・ヴァン・パラント、ジョン・ウッドヴァイン、マリアンヌ・フェイスフル、コスタス・バラディマス、ジョージ・ムスー、ディミトリ・アロニス、タキス・カヴーラス、ウォルター・ヘシッグ、クリストス・ナツィオス、ティナ・スパシ、ニコス・ツァチリディス他。アラン・ケイルー(1914〜2006)の原作を基にケイルー自身が脚本を執筆。撮影はヨルゴス・アルヴァニティスとアリス・スタヴロウ。国際刑事警察機構(インターポール)の捜査員キャボット・ケイン(ミナルドス)は、行方不明となった同僚の居場所を突き止めるべく、ギリシャとアルバニアでテロリスト活動を行うアガソン(ムスー)を追う……。

ケン・ソーンのスコアは、冒頭の「Assault on Agathon: Opening Credits」がリズミックなオープニング曲で、テレビの刑事ドラマ風のタッチが快調。このメインの主題は「Cabot Cain to the Rescue」「He's My Friend Too」「Memories / On the Road」「Cabot Goes to Confront Agathon」等でも登場する。「Car Chase」は、ダイナミックなアクション音楽。「Cafe Muzak」は、ギターをフィーチャーしたライトなタッチのソース曲。「Classical Piano」「Campfire」「Final Farewell」は、リリカルなタッチの曲。「I'll Tell You No More!」は、静かにメランコリックな曲。「Police Van」「Village Rescue」「Cain in Action」は、サスペンス調の曲。「Hotel Muzak」「Jewelry Store Muzak」「Having Drinks」は、ライトなソース曲。「Love Scene」は、コーラス入りのジェントルでリリカルなラヴ・テーマ。「Night Encounter」「Entering the Camp」「Escape from Cell / Final Confrontation」「Will I Be Remembered? / Fatal Shot」は、不吉なサスペンス音楽。ラストの「Sooner Than We Know」は、ダイアン・ソロモンのヴォーカルによるドラマティックな主題歌(作曲:ケン・ソーン、作詞:ハル・シャーパー)。

「パワープレイ(POWER PLAY)」は、1978年製作のイギリス=カナダ合作映画(日本公開は1979年11月)。監督は「ラスト・カーチェイス」(1980)「(TV)バトル・オブ・シリコンバレー」(1999)「シルベスター・スタローン ザ・ボディガード」(2002)等のカナダ出身のマーティン・バーク(1952〜)。出演はピーター・オトゥール、デヴィッド・ヘミングス、ドナルド・プレザンス、バリー・モース、ジョン・グラニック、マーセラ・セイント=アマント、ジョージ・トゥーリアトス、チャック・シャマタ、ハーヴェイ・アトキン、オーガスト・シェレンバーグ、イーライ・リル、デヴィッド・カルデリシ、アルバータ・ワトソン、マイケル・アイアンサイド他。エドワード・N・ルトワクの政治学書『Coup d'État: A Practical Handbook』を基にマーティン・バークが脚本を執筆。撮影は「ゴールド」(1974)「ドラブル」(1974)「狼たちの影」(1975)「スカイ・ライダーズ」(1976)等のオウサマ・ラーウィ(1939〜)。アラン・ドロンがプロデューサーに名前を連ねている。

ヨーロッパの架空の国で起きたクーデターをリアリスティックに描いたポリティカルサスペンスの傑作。大臣誘拐事件を機に、テロリスト一掃命令を下す大統領。だが、怪しき者は逮捕せよという秘密警察長官のブレア(プレザンス)の方針は、次々と無関係の犠牲者を出していった。知人の娘を殺されたナリマン大佐(ヘミングス)は、戦術に長けたルソー教授(モース)や同志と共にクーデターを計画。始めは拒んでいた戦車隊長ゼラー大佐(オトゥール)も加わり、遂に決行の日がやって来た……。ルソー、ナリマンといったクーデターの首謀者たちと秘密警察のブレアとの虚々実々の駆け引きや、クライマックスで街中を戦車隊が疾走し政府施設を占拠するシーン(カナダ軍全面協力)でのセミ・ドキュメンタリー・タッチの冷淡なリアリズムが迫力あり。日本でのテレビ放映時の吹替キャストは、ピーター・オトゥール(金内吉男)、デヴィッド・ヘミングス(仲村秀生)、ドナルド・プレザンス(島宇志夫)、バリー・モース(加藤精三)、ジョン・グラニック(寺島幹夫)、ジョージ・トゥーリアトス(阪脩)、チャック・シャマタ(幹本雄之)、ハーヴェイ・アトキン(池田勝)、オーガスト・シェレンバーグ(藤本譲)他で、特にプレザンスの島氏は本人が日本語をしゃべってるようにしか見えないはまり方。

ケン・ソーンのスコアは非常に緊張感のあるオーケストラによるサスペンス音楽で、彼のベストスコアの1つだろう。個人的にも嬉しいリリースだが、残念ながらフル・スコアではなく、音源が残っていた17曲のみを収録(メインタイトルも含まれていない)。「As Long As We Live」「Closing Credits」は、映画のエンドクレジットで流れる、ストリングスとギターによるメランコリックで美しい曲。「The Kidnapping」「Tank Kill」「Spy Kill」「The Colonel's Death」「Coup D'État」は、ダークで不吉なタッチのサスペンス音楽。「Torture and Death」「The Break Up」「The Betrayal」は、ドラマティックなサスペンス音楽。「Bugs」は、不吉なタッチから後半ダイナミックに盛り上がる。「The Takeover」「Arrival」は、クライマックスのクーデター遂行シーンでのダイナミックでミリタリスティックなサスペンスアクション音楽で、張り詰めたような緊張感が素晴らしい。最後にソース曲「The Dick Cavett Show Theme (Not Used in Film)」「Tango」「Birthday Muzak #1」「Birthday Muzak #2」を収録。
(2022年8月)

Ken Thorne

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