ア・マン・イン・ラブ UN HOMME AMOUREUX
(未公開)PREMIER VOYAGE

作曲・指揮:ジョルジュ・ドルリュー
Composed and Conducted by GEORGES DELERUE

(仏Music Box Records / MBR-208)

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ジョルジュ・ドルリュー(1925〜1992)が1980年代に女流監督による2作品に作曲したスコアをカップリングにしたCD。700枚限定プレス。

「ア・マン・イン・ラブ(UN HOMME AMOUREUX)」は、1987年製作のフランス=イタリア合作映画(日本公開は1988年11月/英語題名は「A MAN IN LOVE」)。監督は「女ともだち」(1983)「彼女たちの関係」(1994)「年下のひと」(1999)「サガン −悲しみよ こんにちは−」(2008)等のディアーヌ・キュリス(1948〜)。出演はピーター・コヨーテ、グレタ・スカッキ、ジェイミー・リー・カーティス、クラウディア・カルディナーレ、ピーター・リーガート、ジョン・ベリー、ヴィンセント・リンドン、ジャン・ピゴッツィ、イライア・カッツ、コンスタンティン・アレクサンドロフ、ジャン=クロード・ドゥ・ゴロ、ミシェル・メルガ、ジョル・シルヴァニ、ジャン=マルク・ビウール、ジェローム・デシャン他。ディアーヌ・キュリスの原案を基にディアーヌ・キュリスとオリヴィエ・シャッキが脚本を執筆。撮影はベルナール・ジツェルマン。

アメリカ人の俳優スティーヴ・エリオット(コヨーテ)は、イタリアの詩人/小説家のチェーザレ・パヴェーゼ(1908〜1950)を題材にした映画に出演するためローマにやって来た。共演者はイギリス人女優のジェーン・スタイナー(スカッキ)で、2人は撮影を進めるうちに実際に恋に落ちてしまう。スティーヴは既婚者で、妻子が映画のセットにやって来たので、彼とジェーンは密かに関係を続けざるを得なくなるが……。カーティスがスティーヴの妻、カルディナーレがジェーンの母を演じている。劇中の映画の題材となっているチェーザレ・パヴェーゼは、アメリカ人女優コンスタンス・ダウリング(1920〜1969)と恋愛関係にあったが、彼女に拒絶されたことをきっかけに、1950年にトリノ駅前のホテルの一室で服薬自殺を遂げている。1987年度カンヌ国際映画祭の正式コンペティション参加作品。

ジョルジュ・ドルリューのスコアは、公開当時にフランスのPathé Marconiレーベルから全15曲/約32分半収録のサントラLP(Pathé Marconi/EMI 2408011)が出ており、2002年にカナダのDisques Cinémusiqueレーベルが同内容のCD(Disques Cinémusique DCM 102)をリリースしているが、Music Boxレーベルが2022年5月にリリースしたこのCDは、ソース曲1トラックを除いた全14曲/約29分を収録し、全体がリマスターされている。

「Générique début」は、ドルリューの個性が強く出た情感豊かで美しくリッチなメインの主題。名曲。「Hôtel Roma」「Bruno repart seul」「Amour en plein」「La mort de Pavese」は、フルートとストリングスによるメランコリックなタッチの曲。「La rencontre」は、ドラマティックかつメランコリックな曲。「Délicieuse attente」は、ヴァイオリン・ソロをフィーチャーしたドラマティックで美しい曲。「Are you going to leave me?」「Solitude de Jane」は、クラリネット・ソロをフィーチャーしたメランコリックなタッチの曲。「Le pont des jouissances」は、ジェントルで美しいワルツ調の主題で、これもドルリューの個性がよく出た曲。「Steve and Jane」は、ダークかつ極めてドラマティックな曲。「Écran lunaire」も、ドラマティックで美しい。「Tango loupé」は、流麗で情感豊かなタンゴ。「Épilogue (Générique fin)」は、クラリネット・ソロによるメランコリックな主題からメインの主題のリプライズへと展開するエピローグ。全体に非哀感を帯びた美しくドラマティックなスコアで、ドルリューのベスト・パターン。

「(未公開)PREMIER VOYAGE」は、1980年製作のフランス映画(英語題名は「FIRST VOYAGE」)。監督は「恋びと」(1968)「哀しみの終るとき」(1971)等のナディーヌ・トランティニャン(ジャン=ルイ・トランティニャン、アラン・コルノー監督の元妻/1934〜)。出演はマリー・トランティニャン、ヴァンサン・トランティニャン、リシャール・ベリ、パトリック・シェスネ、ルシアン・アモン、フィリップ・ルーロー、ロジェ・リファール、ブノワ・フェルー、ジャン・ランディエ、モーリス・ベルナール他。脚本はアンリエット・ジェルネックとナディーヌ・トランティニャン。撮影はウィリアム・ルブシャンスキー。姉と弟が2人で旅する過程での冒険を描いたロードムービーで、ナディーヌ・トランティニャン監督の娘マリーと息子ヴァンサンが出演している(フランス映画は監督やプロデューサーの家族が出演している作品が多い)。主演のマリー・トランティニャンは、2003年にリトアニア滞在中に、当時ボーイフレンドだったフランスのロック・ミュージシャン、ベルトラン・カンタと口論になり、頭を何回も殴打された上で倒れたまま放置され、搬送されたヌイイ=シュル=セーヌの病院で脳浮腫により41歳で死亡した。カンタは2004年3月にリトアニア地方裁判所により過失致死罪で懲役8年の刑を受けたが、2007年に仮出所した。この決定に対して母ナディーヌやフランスのフェミニストたちから反発の声が上がったという。

ジョルジュ・ドルリューのスコアは、公開当時にフランスのRCAレーベルから「Premier voyage」と「Le retour du père」の2曲入りのEP(RCA Records RSB 494)が出ていたが、このMusic BoxのCDには作曲家自身のオリジナル・マスターから全6曲を収録。

「Premier voyage」は、モニーク・ローラン演奏のツィターをフィーチャーした明るくジェントルなメインの主題。「Marie et Vincent」も、ツィターによるメランコリックで美しい曲。「L'automobiliste」は、ダークなタッチのサスペンス調から後半ツィターによるジェントルな主題へ。「Le prince charmant」は、フルートとストリングによるジェントルでリリカルなタッチの曲。「Voyage」は、ツィターによる明るくジェントルな主題から、後半ドラマティックに盛り上がる。「Le retour du père」は、繊細で美しく心を洗われるような曲。

ジョルジュ・ドルリューの未亡人コレットがアルバム全体を監修している。

(2022年9月)

Georges Delerue

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