Adventures of the Time Travellers

 

INT. 221B BAKER ST.   NIGHT

DR.WATSON pours the contents of his GLASS into A BOTTLE OF SCOTCH.

HOLMES
(O.S.)

You are perfectly correct, my dear fellow.   Conscience is indeed a strict warden, is it not?

WATSON

Surely, too strict(looks at HOLMES in astonishmentHolmes!  Again you have  read my mind!   Pray explain to me how.

HOLMES

It is all absurdly simple, Watson.   I have been observing you since you came in

 

これは私がL.A.Film Productionの勉強をしていた時に、自分で脚本を書いて監督したSherlock Holmes in L.A.という映画の脚本の冒頭部分である。

話は19世紀ロンドンのベイカー街221Bでホームズとワトソンが掛け合いをやっているシーンで始まるが、20世紀から自分の発明したタイムマシンを使ってやって来た若いアメリカ人科学者(しかもシャーロッキアン)の依頼を受けて、ホームズとワトソンが現代のロサンゼルスにタイプスリップして事件を解決していくというSF仕立てのストーリーになっている。 シャーロック・ホームズが主役の映画を作りたかったのと、せっかくL.A.にいるのだからL.A.を舞台にした映画を作りたかったということもあるが、SF/ファンタジーのジャンルの、しかもタイムトラベルを題材にした映画を作りたかったというのが、この作品を製作した最大の動機である。

時間旅行を題材にしたストーリーには一定の約束事がある。 例えば同じ時間・空間に同一人物が存在できない、といったようなルールである。 もちろんこんなルールは全く無視した作品もあるが、あまりいい加減にプロットを組み立てるとあちこちに矛盾が発生して収拾がつかなくなる。 逆にあまり厳密に考えすぎても論理のループにはまり込んで脱出できなくなるので適度なバランスが重要である。 この映画のストーリーを考えた時も過去に作られたこの手の映画を観直したりして参考にしたが、プロットが適度に複雑で、最後に気の利いたオチが付いていてあまり矛盾の気にならない作品が映画として成功している例だと思う。

私はこのジャンルが好きで、以前にPlayback Messageというタイトルの自主映画を製作した時も、製薬会社に務める女性社員が未来を予知できる特殊な薬品を開発して危機を乗り切るというストーリーを考えた(この時は私の大好きなSF作家フィリップ・K・ディックの短編小説をベースに脚本を書いた)。

というわけで、今回はタイムトラベルを題材にした映画をいくつか紹介したいと思う。


著名なSF作家HG・ウエルズの作品は、「宇宙戦争」「来るべき世界」「透明人間」「モロー博士の島」「月世界探検」「巨大生物の島」等、これまでに多数映画化されているが、彼の小説「タイムマシン」をジョージ・パル監督が映画化した80万年後の世界へ/タイムマシン」The Time Machine60)は、時間旅行を題材にした最初の本格的なSF映画である。 タイムマシンを発明して未来へと旅する科学者にロッド・テイラーが扮した。 彼が訪れた80万年後の地球には、地上で腑抜けのように生活する人種と、地下で過酷な労働を続ける醜い人種とが共存しており、地下の人種が地上の人種の生活を支えてやっている代わりに、夜になると地下の人種が地上の人種をさらって食っているという、持ちつ持たれつ(?)の社会構造となっている。 原作では、ラストにタイムマシンが故障して更に先の未来まで猛スピードで進んでしまい、地球が崩壊していく様子が実にファンタスティックに描写されているのだが、映画では平凡な映像表現でちょっとがっかりさせられた(それでもこの映画のSFXは当時のオスカーを受賞した)。

HG・ウエルズ自身が、彼の発明したタイムマシンでヴィクトリア時代のロンドンから1979年のサンフランシスコへやって来るという映画が、「タイム・アフター・タイム」Time After Time79)で、シャーロッキアンとしても有名なイギリス人のニコラス・メイヤーが監督した。 自分のタイムマシンを奪って逃亡した切り裂きジャック(デヴィッド・ワーナー)を追って現代のアメリカにやって来たウエルズ(マルコム・マクダウエル)が、ジャックを探すうちに銀行に務める女性(メアリー・スティーンバージェン)とめぐり会い、恋に落ちるというストーリーだったが、全体におっとりした感じの映画で、特にスティーンバージェン(これがメジャーデビュー)がとぼけた雰囲気で実に良かった。

切り裂きジャック(Jack the Ripperというのは、19世紀ロンドンに実在した殺人鬼で、娼婦ばかりを狙って連続殺人を犯したが結局逮捕されることなくその存在は謎に包まれたままとなっており、ジャックを題材にした映画や小説や研究書が多数ある。 外科医が使うようなメスで女性を殺していたことから、外科手術の技術をもった人物が犯人とも考えられており、この映画でもウエルズの友人の医者が実はジャックだったという設定になっている。
余談になるが、切り裂きジャックが暗躍したロンドンはシャーロック・ホームズ(こちらは架空の人物だが)が活躍した時代と重なっており、ホームズがジャックと対決するというストーリーの映画が少なくとも2本作られている。 1本はMurder by Decree79)という映画で、クリストファー・プラマーがホームズ、ジェームズ・メイソンがワトソンに扮した。 もう1本はStudy in Terror65)という映画で、ここでホームズを演じたジョン・ネヴィルとうイギリスの俳優は、最近ではリュック・ベッソン監督の「フィフス・エレメント」で地球防衛軍の戦艦の艦長をやっていた。

ところで、私がL.A.に留学中にUCLAExtensionで映画音楽の講座を受講した時に、「タイム・アフター・タイム」の監督のニコラス・メイヤーがゲストスピーカーで来ており、この映画の音楽についての裏話を聞かせてくれた。 この映画には「ベン・ハー」等の音楽で有名なハンガリーの大作曲家ミクロス・ローザがスコアを書いているが、メイヤーはローザの大ファンであり、特に彼がヒッチコックの「白い恐怖」の為に書いた「Spellbound Concerto」というピアノ協奏曲がお気に入りで、どうしてもこの曲を使いたかったらしいが、版権の問題で使用できず、その代わりにローザがオリジナルの素晴らしい曲を新たに作曲してくれたと感激していた。 この映画でローザの格調高いスコアが果たしている役割は大きい。

そのニコラス・メイヤーが脚本を書いたのが、「スタートレックIV 故郷への長い旅」 Star Trek IV: The Voyage Home86)という映画で、世界中にトレッキーズと呼ばれる熱烈なファンを持つTVシリーズ「スタートレック」の映画化第4作である。 この作品はミスター・スポック役のレナード・ニモイが監督しているが、彼はこのシリーズ以外にもいくつか監督作品があり、なかなか才能豊かな人物である。 地球を危機から救うために宇宙船エンタープライズ号のカーク船長(ウィリアム・シャトナー)をはじめとしたお馴染みのクルーメンバーが、現代のアメリカにタイムスリップして活躍するというストーリーだったが、かなりコミカルなタッチを強調した演出で、面白さはシリーズ中でもベストだった。 ただ、メイヤーが脚本を書いているせいか、「タイム・アフター・タイム」に設定が似ており、舞台まで同じサンフランシスコだった。

私の大好きなSF/ファンタジー作家のリチャード・マシスンが彼の小説Bid Time Returnを自ら脚色した映画が「ある日どこかで」Somewhere in Time80)で、ジャノット・シュワークが監督し、クリストファー・リーヴ、ジェーン・シーモア、クリストファー・プラマー等が出演した。 70年前に描かれた肖像画の女優(シーモア)に恋した作家(リーヴ)が、彼女に逢う為に過去にタイムスリップするというロマンティクなストーリーで、ジョン・バリーによる音楽も非常に美しかった。 ただ、マシスンの本領は「激突!」や「ヘルハウス」といった強烈なサスペンスによるホラー小説であり、この作品はいつもとかなり違う作風だった。

ジェームズ・キャメロンの出世作である「ターミネーター」The Terminator84)も、タイムトラベルを題材にしており、非常によく練られた脚本だった(SF作家のハーラン・エリスンの作品をベースにしているらしい)。 ある人物を抹殺する為に過去に殺し屋(アーノルド・シュワルツェネッガー)を送り込んでその人物が生まれる前に母親(リンダ・ハミルトン)を殺してしまうという、かなり回りくどい設定ではあるが、まさに完璧な「巻き込まれ型」のストーリーであり、たたみ掛けるような展開と激しいアクション描写で最後まで一気に見せる演出力は見事だった。

「フォレスト・ガンプ」「コンタクト」とシリアスな作品が続いているロバート・ゼメキス監督の大ヒット作、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ Back to the Future IIIIII858990)も、タイムトラベルをテーマにしている。 1作目は自分の両親の学生時代にタイムスリップした主人公(マイケル・J・フォックス)が、二人を何とかして結び付けようとする(でないと自分が存在しなくなる)という比較的単純な設定だったが、シリーズが続くにつれてどんどん話が複雑になっていき、ストーリーにも矛盾が生じてしまっている(ただ、映画自体の娯楽性が極めて強いのであまり矛盾が気にならない)。 3作目に登場するメアリー・スティーンバージェンは「タイム・アフター・タイム」の時とほぼ同じ役柄をリピートしている(タイムスリップしてきたという男性と恋に落ち、最初は彼の話を信用せず馬鹿にされたと思って傷つくが、最後には本当だと知って彼と一緒にタイムスリップしてしまう女性の役)。

マイケル・クライトンの原作をスティーヴン・スピルバーグが監督した「ジュラシック・パーク」Jurassic Park93)は、過去に存在した恐竜を現代に蘇らせているという設定がタイムトラベル物の変形とも言える。

原作者のクライトンは「タイムスリップした空間を人工的に作り上げる」というテーマをこの映画の20年前にも取り上げている。 自ら監督した「ウエストワールド」Westworld73)という映画がそれで、ここでは人工的に作られた「中世の騎士の世界」や「西部開拓時代の世界」を楽しめるアミューズメントパークを題材にしている(現在であればVirtual Realityの技術を駆使して実際に実現できそうな話である)。 主人公たち(リチャード・ベンジャミン、ジェームズ・ブローリン)が遊びに来た「ウエストワールド」では、西部開拓時代のアメリカが忠実に再現されており、自分たち以外のガンマンやバーの店主等は全て精巧に作られたロボットである。 ガンマンとの決闘になっても相手のロボットの銃が自分の銃より少し遅れて発射されるようにセットされており、必ず勝てるようになっている。 ところが、このパークのコンピュータが故障してロボットが人間たちを襲い始めるというストーリーで、クライトンはこれと全く同じ設定を「ジュラシック・パーク」で繰り返している。 主人公を執拗に追跡するロボットのガンマンをユル・ブリンナーが演じており、実に不気味だった(無機質な演技で本当にロボットに見える)。 尚、この映画にはリチャード・T・ヘフロンが監督し、ピーター・フォンダが主演した「未来世界」Futureworld76)というB級の続編がある。

以上、時間旅行を題材にした映画をいくつか紹介したが、実はこの分野のSF小説で未だ映画化されていない非常に有名な作品がある。 ロバート・A・ハインラインの名作「夏への扉」である。 私自身この小説を読んでタイムトラベル物の面白さに開眼し、このジャンルのファンになった訳で、特に想い入れがある。 スピルバーグかゼメキスあたりが映画化しないだろうか…。 でなければ自分で映画化してみたい。

END

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