男の闘い THE MOLLY MAGUIRES

作曲・指揮:ヘンリー・マンシーニ
Composed and Conducted by HENRY MANCINI

未使用スコア作曲:チャールズ・ストラウス
Unused Score Composed by CHARLES STROUSE

指揮:フィリップ・J・ラング
Conducted by PHILLIP J. LANG

(スペインQuartet Records / QR569)

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1970年製作のアメリカ映画。製作・監督は「暴行」(1963)「寒い国から帰ったスパイ」(1965)「暗殺」(1968)「コンラック先生」(1974)「ノーマ・レイ」(1979)「アイリスへの手紙」(1989)等のマーティン・リット(1914〜1990)。出演はリチャード・ハリス、ショーン・コネリー、サマンサ・エッガー、フランク・フィンレイ、アンソニー・ザーブ、ベセル・レスリー、アート・ランド、フィリップ・ボアーヌフ、アンソニー・コステロ、ブレンダン・ディロン、フレンシス・ヘフリン、ジョン・アルダーソン、マラチー・マッコート、スーザン・グッドマン、ウィリアム・クルーン他。アーサー・H・ルイスの原作をベースにウォルター・バーンスタインが脚本を執筆。撮影はジェームズ・ウォン・ハウ。

1870年代のペンシルヴェニア州東部スクーカル郡の炭坑では、アイルランド移民の坑夫たちが秘密結社“モリー・マガイア”を組織し、苛酷な労働と生活のための闘いに立ち上がった。その争議がピークに達していた1876年、1人の労働者ジェームズ・マッケンナ(ハリス)が仕事を求めてこの地方にやってきた。結社の指導者ジャック・キーオ(コネリー)や、フレイジャー(ランド)、ドーハティ(ザーブ)、マクアンドリュー(コステロ)たち坑夫は、最初は怪しんだが、次第に彼を信用するようになった。しかし、実際には彼はピンカートン探偵社が結社に潜入させたジェームズ・マクパーランというスパイであり、冷酷な警察署長のデイヴィス(フィンレイ)と秘かに通じていた。ジェームズは病で寝たきりの父親と暮らしているメアリー・レインズ(エッガー)の家の部屋を借りることとなり、一緒に生活するうち、彼女に心をひかれていくが……。1970年度アカデミー賞の美術監督・装置賞にノミネートされている。興行的には、約1100万ドルの製作費に対し、全世界興行収入はわずか220万ドルで、監督のマーティン・リット、主演のショーン・コネリーにとって最も失敗した作品の1つとなった。

音楽は「ティファニーで朝食を」(1961)「ハタリ!」(1962)「酒とバラの日々」(1962)「シャレード」(1963)「ピンクの豹」(1963)「ひまわり」(1970)「料理長殿、ご用心」(1978)「スペースバンパイア」(1985)等のヘンリー・マンシーニ(1924〜1994)。このスコアは、公開当時の1970年に米Paramountレーベルから全15曲/約31分収録のサントラLP(Paramount PAS 6000)が出ており、その後、1992年に米Bay CitiesレーベルがLPと同内容のCD(Bay Cities BCD 3029)、2012年に米Kritzerlandレーベルが未発表曲とチャールズ・ストラウス作曲の未使用スコア(後述)を収録した1500枚限定プレスの全34曲/約60分のCD(Kritzerland KR 20021-3)を出しているが、Quartetレーベルが2024年12月にリリースしたこのCDは、ストラウスの未使用スコアに加えマンシーニの未発表曲を更に追加した全42曲/約77分のエクスパンデッド盤となっている。

「Theme from The Molly Maguires (Pennsylvania, 1876)」は、ハープによるイントロからリコーダーによる素朴でジェントルなタッチのメインの主題へと展開し、アルト・フルート、アコーディオンが加わってオーケストラによる演奏へと発展するメイン・テーマ。「The Mollys Strike」は、バスーン、ダブルベースを加えたドラマティックで躍動的なタッチの曲。「Main Title」は、大らかで力強いイントロから、ホルン、フルート、ストリングスによる躍動的でドラマティックな主題へと展開するメインタイトル。「Room and Board」「A Hard Day's Work」は、アコーディオンの演奏によるメインの主題。「Sandwiches and Tea」は、素朴なタッチのイントロからヴィオラの演奏によるメインの主題へ。「Work Montage」「Strike Two / Strike Three」「The Mollys Strike Again」「Kehoe Lights Up / The Last Strike」は、力強く躍動的でドラマティックな曲。「Pennywhistle Jig / On Your Knees」は、明るく快活な主題から後半静かにドラマティックなタッチへ。「Jamie and Mary」「The Hills of Yesterday」「There's More」は、フルートをフィーチャーしたジェントルでリリカルな曲。「Trip to Town」も、明るくジェントルなタッチ。「A Suit for Grandpa」は、ドラマティックでサスペンスフルかつダイナミックな曲。「The End」は、リコーダーが演奏するメインのリプライズによるエンドタイトル。この後にボーナストラックとして別バージョンや代替テイク等14曲を収録。

ヘンリー・マンシーニとしては珍しく主題歌がない純粋なドラマティック・アンダースコアで、本人も楽しんで作曲したという。オーケストレーションはレオ・シュケンとジャック・ヘイズ。

この映画には、当初「バイ・バイ・バーディー」(1963)「ボニーとクライド/俺たちに明日はない」(1967)「大脱獄」(1970)「ANNIE/アニー」(2014)等のアメリカの作曲家チャールズ・ストラウス(1928〜)によるスコアが付けられていたが、スタジオ(パラマウント)の役員が、映画に必要なスコープとドラマ性に欠けるとの理由でこのスコアをリジェクトしたため、マンシーニが雇われて全く新しいスコアを作曲した。

チャールズ・ストラウスによる未使用スコアは、「Sabotage」がアブストラクトでサスペンスフルなタッチの曲。「Fuse」は、抑制されたサスペンス音楽。「Work in the Mine」は、バンジョーやフィドルをフィーチャーしたカントリー調のリズミックな曲。「Bleak Street / To Find a Room / To Work」「The Long Walk」「Truant Picnic-ers」は、アコーディオンをフィーチャーした静かにジェントルな曲。「Widow Shopping」「The Company Store (Parts I And II)」は、明るく快活なタッチ。「The Last Rites」は、躍動的なタッチの曲。「Arson」は、ダイナミックなタッチ。「End Titles」は、ギター、フルート、アコーディオンをフィーチャーしたジェントルなタッチのエンドタイトル。

チャールズ・ストラウスは、「バイ・バイ・バーディー」(1961)「アプローズ (喝采)」(1970)「アニー」(1977)でトニー賞(ベスト・ミュージカル、ベスト・オリジナル・スコア)を受賞しているブロードウェイ・ミュージカルの作曲家・作詞家。ミュージカル、映画音楽の他に、オーケストラ作品、室内楽、ピアノ協奏曲、オペラ等も手がけており、2002年に9/11同時多発テロを記憶するために作曲された『協奏曲アメリカ』がボストン・ポップスにより初演されている。

チャールズ・ストラウスが手がけた映画音楽には
「(未公開/TV)Alice in Wonderland or What's a Nice Kid Like You Doing in a Place Like This?」(1966)
「ボニーとクライド/俺たちに明日はない(Bonnie and Clyde)」(1967)
「(未公開)The Night They Raided Minsky's」(1968)
「(未公開/TV)Justice for All」(1968)
「大脱獄(There Was a Crooked Man...)」(1970)
「(未公開)Replay」(1970)
「(未公開/TV)Applause」(1973)
「(未公開/TV)It's a Bird... It's a Plane... It's Superman!」(1975)
「(未公開/TV)Dorothy」(1979)
「(未公開)Just Tell Me What You Want」(1980)
「アニー(Annie)」(1982)
「(未公開/TV)Ein Abend für zwei Komödianten」(1982)
「天国から来たわんちゃん(All Dogs Go to Heaven)」(1989)
「(TV)アレクサンダーの、ヒドクて、ヒサンで、サイテー、サイアクな日(Alexander and the Terrible, Horrible, No Good, Very Bad Day)」(1990)
「(未公開/TV)A Child's Garden of Verses」(1992)
「(未公開)A Broadway Lullaby」(2012)
「(未公開/MV)Spirit Young Performers Company: It's the Hard Knock Life」(2014)
「(未公開/MV)Spirit Young Performers Company: You're Never Fully Dressed Without a Smile」(2014)
「(未公開)Morgen is er zon」(2016)
「(未公開/TV)Annie Live!」(2021)

等がある。

チャールズ・ストラウスは1982年の「アニー」で英国アカデミー賞の主題歌賞にノミネートされている。

(2025年4月)

Henry Mancini

Charles Strouse

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