(TV)パラレル・デス/殺しの真相 ONE SHOE MAKES IT MURDER
(TV)キルジョイ KILLJOY

作曲・指揮:ブルース・ブロートン
Composed and Conducted by BRUCE BROUGHTON

(米Dragon's Domain Records / DDR844)

 ★TOWER.JPで購入


「シルバラード」(1985)「ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎」(1985)「ミリィ/少年は空を飛んだ」(1986)「ハリーとヘンダスン一家」(1987)「ジャイアント・ベビー」(1992)「トゥームストーン」(1993)「ロスト・イン・スペース」(1998)等のブルース・ブロートン(1945〜)のスコアを集めた「THE BRUCE BROUGHTON COLLECTION - VOLUME 1」で、このCDには1980年代のテレビ映画2作品を初収録。500枚限定プレス。

「(TV)パラレル・デス/殺しの真相(ONE SHOE MAKES IT MURDER)」は、1982年製作のアメリカのテレビ映画(日本では劇場未公開でビデオ発売・テレビ放映済。テレビ放映時の邦題は「探偵シイルマン・墜落した女」)。監督は「(TV)タイム・トンネル」(1966〜1967)「(TV)サンフランシスコ捜査線」(1972〜1977)「失われた航海」(1979)「(TV)フィービー・ケイツのレース」(1984)「(TV)七十年目の審判」(1988)等のウィリアム・ヘイル(1931〜2020)。出演はロバート・ミッチャム、アンジー・ディキンソン、メル・ファーラー、ホセ・ペレス、ジョン・ハーキンス、ハワード・ヘッセマン、アシャー・ブローナー、ビル・ヘンダーソン、キャシー・シリフ、ウィリアム・G・シリング、サンディ・マーティン、グレインジャー・ハインズ、ピーター・レナデイ、トニー・マトランガ、ヴァレリー・C・ロビンソン他。エリック・バーコヴィッチの原作『So Little Cause for Caroline』を基にフェリックス・カルヴァー(バーコヴィッチの別名)が脚本を執筆。撮影はテリー・K・ミード。

自殺未遂でサン・ディエゴ警察をクビになった元警官でアル中の私立探偵ハロルド・シルマン(ミッチャム)は、カジノのオーナーで犯罪組織とつながりのあるカール・チャーノック(ファーラー)から、行方不明になっている彼の妻キャロライン(シリフ)の捜索を依頼される。シルマンはキャロラインがサンフランシスコのアパートにいることを突き止め、そこにやって来るが、彼女はアパートのバルコニーから落ちて死んでしまう。その遺体は片足だけ靴をはいており、もう1つの靴は部屋の中で発見された。現場に駆け付けたサンフランシスコ市警殺人課のカーモナ刑事(ペレス)は、殺人事件と判断して捜査を開始する。一方、シルマンはキャロラインの過去を知っているらしい旧友で元娼婦のフェイ・リード(ディキンソン)に近づくが……。ロバート・ミッチャム「さらば愛しき女よ」(1975)「(未公開)大いなる眠り」(1978)でのレイモンド・チャンドラー原作の私立探偵フィリップ・マーロウがはまり役だったが、ここでは落ちぶれた探偵を演じている。共演のメル・ファーラーが、本作のプロデューサーも兼ねている。1983年度エドガー賞のテレビ映画賞にノミネートされた。

ブルース・ブロートンのスコアは、「Main Title」がサックス、ピアノ、ストリングスをフィーチャーしたジェントルなタッチのジャズによるメインタイトル。「Shill and Fay」「Drink and Talk」は、サックスを加えた静かにジェントルなタッチの曲。「Ride to Vallejo」「To San Francisco」「Back to Los Angeles」「Shill Comes Home」も、ピアノ、サックス、ストリングスによるジェントルなジャズ。「Finding Caroline and Caroline's Fall」は、抑制されたサスペンス音楽。「The Next Day and Back to the Lodge」は、静かにドラマティックなタッチから後半サスペンス調へ。「About Caroline」は、ピアノとストリングスによる静かにジェントルな曲。「Confrontation and Burning the Film」は、不吉なタッチから後半ダイナミックなサスペンス音楽へ。「Return to Charnock」は、メインの主題のリプライズによるエンディング。ジャズ愛好家のメル・ファーラーの意向によりブロートンが初めて手がけたジャズ・ベースのスコアで、ゲイリー・フォスターがテナーサックス、レイ・ブラウンがベース、シェリー・マンがドラムス、ラリー・バンカーがヴィブラフォン(鉄琴)、マイク・ラングがピアノを演奏している。

「(TV)キルジョイ(KILLJOY)」は、1981年製作のアメリカのテレビ映画(日本では劇場未公開でビデオ発売・テレビ放映済。テレビ放映時の邦題は「解剖室殺人事件」)。監督は「(TV)サンフランシスコ大空港」(1970)「(TV)事件記者コルチャック/ナイト・ストーカー」(1971(「(TV)黒いジャガー/暗殺団のツラをはげ」(1973)「(TV)チャーリーズ・エンジェル/ぶどう園乗っ取り殺人事件」(1976)等のジョン・リュウェリン・モクシー(1925〜2019)。出演はキム・ベイシンガー、ロバート・カルプ、スティーヴン・マクト、ナンシー・マーチャンド、ジョン・ルービンスタイン、アン・デューセンベリー、アン・ウェッジワース、ヘレン・ウィンストン、フランシーン・ヴェレット、テリー・バーンズ、アーサー・ロバーツ、ケリー・ジーン・ピータース。脚本はサム・H・ロルフ。撮影はロバート・B・ハウザー。

総合病院の理事長の娘ローリー・メドフォード(ベイシンガー)には、同病院に勤める外科医のマックス・ヘラー(マクト)と病理主任のポール・トレントン(ルービンスタイン)の2人の婚約者候補がいたが、ローリーはマックスと婚約したとポールに告げる。失意のポールはジョイ・モーガンという女性を作り上げ、ジョイの部屋にマックスの服や写真を飾ってあるよう仕立てて、婚約を破棄させようとする。しかしそこに、ジョイを探しているという刑事のルー・コービン(カルプ)が現れる。ジョイは実在するのか、どこにいったのか、あるいは殺されたのか……。サム・H・ロルフの脚本が1982年度エドガー賞のテレビ映画賞を受賞しているほか、ブルース・ブロートンのスコアが同年のエミー賞の音楽賞にノミネートされている。

ブルース・ブロートンのスコアは、「Main Title / The Murder」が不吉なサスペンス調のメインタイトル。「Laury Drives / Into the House」は、ミステリアスなタッチからドラマティックなサスペンス音楽へ。「Devious Plan / Photo Album」「Joy Morgan」「The Real Joy Morgan / Finding the Body」「The Hospital」は、不吉なタッチのサスペンス音楽。「Soap Opera Muzak / Tailing Laury」は、静かにドラマティックなタッチから抑制されたサスペンス音楽へ。「The Morgue / Searching the House」は、不吉なタッチから後半ダイナミックなサスペンス音楽へ。「Coming Home / Joy's House」は、静かにドラマティックなタッチの曲。「Finale」は、ダイナミックなサスペンス調のフィナーレ。「Bumper Suite」は、シーンの変わり目等に流れる短いバンパー音楽を集めた曲。最後にボーナストラックとして代替テイク等6曲を収録。本作のプロデューサーはデヴィッド・ローズを起用しようとしていたが、スケジュールが合わなかったため、ブロートンが仕事を引き受けた。そのプロデューサーから「ミクロス・ローザのようなスコアを作曲してほしい」と依頼されたブロートンは、ちょうど劇場で上映されていた「タイム・アフター・タイム」(1978)を見に行ったが、あまり参考にならず、独自のスタイルで作曲することにしたらしい。

ブルース・ブロートンは劇場映画でいくつかの傑作スコアを作曲しているが、テレビでの仕事が多く、エミー賞の23回ノミネートされ(上記「(TV)キルジョイ」を含む)、うち10回受賞している。
(2025年4月)

Bruce Broughton

Soundtrack Reviewに戻る


Copyright (C) 2025  Hitoshi Sakagami.  All Rights Reserved.