ダーククリスタル THE DARK CRYSTAL

作曲:トレヴァー・ジョーンズ
Composed by TREVOR JONES

指揮:マーカス・ドッズ
Conducted by MARCUS DODDS

演奏:ロンドン交響楽団
Performed by The London Symphony Orchestra

(米La-La Land Records / LLLCD 1646)

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1982年製作のイギリス=アメリカ合作映画(日本公開は1983年3月)。監督は「(未公開)マペットの大冒険/宝石泥棒をつかまえろ!」(1981)「ラビリンス/魔王の迷宮」(1986)「(TV)ジム・ヘンソンのストーリーテラー」(1987)「(TV)ジム・ヘンソン アワー/ドッグ・シティ」(1988)等のジム・ヘンソン(1936〜1990)と、「ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ」(1988)「スコア」(2001)「ステップフォード・ワイフ」(2004)等の監督や「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」(1980)等でのヨーダの声で知られるフランク・オズ(1944〜)。ジム・ヘンソンが開発した“マペット(The Muppets)”(操り人形:マリオネットと指人形:パペットを組み合わせた造語)がキャラクターを演じるファンタジー。声の出演はスティーヴン・ガーリック、リサ・マックスウェル、ビリー・ホワイトロー、パーシー・エドワーズ、バリー・デネン、マイケル・キルガリッフ、ジェリー・ネルソン、シック・ウィルソン、ジョン・バッドレイ、デヴィッド・バック、チャールズ・コリングウッド、ショーン・バレット、ミキ・アイヴェリア、パトリック・モンクトン、スーザン・ウェスタービィ他。ナレーターはジョセフ・オコナー。マペットのパフォーマーはジム・ヘンソン、キャスリン・ムーレン、フランク・オズ、デイヴ・ゴールツ、スティーヴ・ホイットミア、ルイーズ・ゴールド、ブライアン・ミール、ボブ・ペイン、マイク・クイン、ティム・ローズ、ジャン=ピエール・アミー、ヒュー・スパイト、ロビー・バーネット、スウィー・リム、サイモン・J・ウィリアムソン他。ジム・ヘンソンの原案を基にデヴィッド・オデルが脚本を執筆。撮影はオズワルド・モリス。

かつて気高い思考と創造力を持つ高潔な種族に統治されていた世界には、絢燗たる城がそびえ、その中央では3つの太陽から力を授かった水晶が光を放っていた。しかし、地震によって水晶は割れて力を失い、スケクシスという邪悪な種族が世界を支配すると、腐敗と貪欲がはびこるようになった。ゲルフリング族に権力を奪われるとの予言を怖れるスケクシスは、ゲルフリングの根絶をはかるが、ただ1人生き残ったジェン(ガーリック)は、ウール族によって育てられる。ジェンを育てた長老は、息を引き取る際に「水晶のかけらを見つけ出し、3つの太陽が重なる前に元の場所へ戻さないと、すべてが破壊され、スケクシスの支配は永遠に続くだろう」と告げるのだった……。コンセプチュアル・デザインをイギリスのファンタジー・イラストレーター、ブライアン・フロード(1947〜)が担当。製作費は約1500万ドル。全世界興行収入は約4463万ドル。1983年度アボリアッツ・ファンタスティック映画祭でグランプリを受賞。

音楽は「エクスカリバー)」(1981)「(未公開)キャプテン・ブーリーの大冒険」(1983)「エンゼル・ハート」(1987)「アラクノフォビア」(1990))「ラスト・オブ・モヒカン」(1992)「クリフハンガー」(1993)「絶体×絶命」(1998)「ダークシティ」(1998)「13デイズ」(2000)等のトレヴァー・ジョーンズ(1949〜)で、これは彼の初期の傑作。このスコアは、公開当時の1982年に米Warner Bros.レーベルから全13曲/約40分収録のサントラLP(Warner Bros. 9 23749-1)が出ており、その後、2003年に米NumenoreanレーベルよりCD2枚組で全41曲/約112分収録、5000枚限定プレスのサントラCD(Numenorean Music NMCD 003)、2007年に25周年記念盤として米La-La LandレーベルよりオリジナルLPと同内容のCD(La-La Land Records LLLCD 1059)が出ていたが、2025年1月に同じLa-La LandレーベルがリリースしたこのCDは、3枚組で全43曲/約137分を収録。CD1〜2枚目に未発表曲を含むオリジナルスコア、3枚目に1982年盤の内容を収録しており、トレヴァー・ジョーンズ自身が監修・プロデュースしている。5000枚限定プレス。

CD1枚目の冒頭「Power Ceremony and Main Title」は、重厚でダイナミックなイントロ から幻想的でドラマティックなタッチのメインタイトルへ。「Jen Plays Pipes and Mystic Master Dies」は、メランコリックな主題から後半ドラマティックなタッチへ。「Skeksis Funeral Ceremony」は、オルガンをフィーチャーした荘厳でダイナミックな曲。「Mystics Funeral Ceremony」は、幻想的なタッチの曲。「Jen's Journey and Council Chamber」は、メインの主題から後半不吉なタッチへ。「Skeksis Fight Duel」も、メインの主題のバリエーション。「Chamberlain Is Disrobed and Garthim Pursues Jen」は、ダークで不気味なタッチから後半ダイナミックに盛り上がる。「Jen Encounters Aughra」「Mystics 9-Tone Chant and the Observatory at Night」は、幻想的でジェントルなタッチの曲。「Garthim Attack Observatory and Mystics Leave Valley」は、パーカッシヴでダイナミックなアクション音楽。「Jen and Kira in Forest」は、美しいラヴ・テーマ。「Mindspeech, Nebrie and Mystics Journey」は、ダイナミックで躍動的なタッチからラヴ・テーマをはさんで、ダイナミックなアクション音楽へ。「Skeksis Celebratory Banquet」は、ややおどけたタッチの曲。「Jen & Kira Duet」は、森のSEに女声ヴォーカルを加えたリリカルなタッチの曲。「Introduction and Pod Dance」は、オカリナ、シターン(水滴型の共鳴体を持った撥弦楽器)、ダルシマー(ツィター属打弦楽器)、タボール(ドラム)といった民族楽器をフィーチャーした躍動的な舞踏音楽。

CD2枚目の冒頭「Kira Brings Down the Bat-Bird and Garthim Attack Pod Village」は、パーカッシヴで躍動的な主題からダークでサスペンスフルなタッチへ。「Jen & Kira Love Theme」は、リリカルかつトラジックで情感豊かなラヴ・テーマで、後半大らかに盛り上がる。シンプルな主題だが、ピーター・ナイトの華麗なオーケストレーションにより極めてドラマティックに展開する名曲。この曲はCD3枚目の8曲目「Love Theme」で最も美しく演奏される。「In the Ruins of the Gelfling Village」は、ミステリアスで幻想的なタッチからメインの主題へ。「Landstriders Introduction and Journey」は、ラヴ・テーマから後半メインの主題の躍動的でダイナミックなアレンジメントへ。「Chamber of Life」は、ダークで不吉なサスペンス音楽から後半ドラマティックなタッチへ。「Landstriders Battle with Garthim and the Second Mystics Journey」は、ダイナミックなサスペンスアクション音楽。「In the Sewer of the Castle」は、メインの主題を織り込んだ不吉なサスペンス音楽。「Kira Removed to the Council Chamber」は、ダイナミックで重厚なサスペンス音楽。「Kira in the Chamber of Life」「 Kira Is Freed and Jen in the Garthim Lair」は、ミステリアスでドラマティックなタッチの曲。「Jen and Aughra in the Chamber of Life」「Skeksis Panicked by Gelfling and Jen in the Crystal Chamber」は、ややおどけたタッチのサスペンス音楽。「The Great Conjunction and the Arrival of The Mystics」は、重厚でドラマティックな主題から、ラヴ・テーマ、躍動的なタッチへ展開し、メインの主題が壮大に盛り上がる。「The Mystics and Skeksis Fuse to Become the UrSkeks」は、幻想的なコーラスからラヴ・テーマ、メインの主題、躍動的でダイナミックな主題が交互に展開していく。「Pod Dance (Reprise) and Finale」は、リズミックな舞踏音楽からメインの主題のリプライズによるフィナーレへ。

ロンドン交響楽団の流麗な演奏にシンセサイザーや各種民族楽器を加えた構成。オーケストレーションはトレヴァー・ジョーンズピーター・ナイトジョン・コールマン。トランペットはモーリス・マーフィ、ハープはスカイラ・カンガ、パイプはリチャード・ハーヴェイ、パーカッションはモリス・パート、ヴォーカルはキャサリン・ボット。フラジョレット(Flageolet)というフィップル・フルート属の木管楽器を、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のフルート/リコーダー奏者であるクリストファー・テイラーが演奏しているが、トレヴァー・ジョーンズの要請でこの楽器の演奏方法を学びはじめた時、彼は白血病で余命いくばくもない状態だった。そして最後の曲を演奏し終わった翌日、53歳でこの世を去った。
(2025年5月)

Trevor Jones

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