(未公開)ブラッディ・ガン QUIGLEY DOWN UNDER
作曲・指揮:ベーシル・ポールドゥーリス
Composed and Conducted by BASIL POLEDOURIS
(米Intrada / Intrada Special
Collection Volume 518)
1990年製作のアメリカ=オーストラリア合作映画(日本では劇場未公開でビデオ発売済)。監督は「ハーレクィン」(1980)「(未公開)砂漠の勇者」(1987)「ハーレーダビッドソン&マルボロマン」(1991)「フリー・ウィリー」(1993)「(未公開)ザ・ファントム」(1996)等のオーストラリア出身のサイモン・ウィンサー(1943〜)。出演はトム・セレック、ローラ・サン・ジャコモ、アラン・リックマン、クリス・ヘイウッド、ロン・ハドリック、トニー・ボナー、ジェローム・イーラーズ、コナー・マクダーモットロー、ロジャー・ウォード、ベン・メンデルソーン、ステューヴ・ドッド、カレン・デイヴィット、カイリー・フォスター、ウィリアム・ザッパ、ジョナサン・スウィート、ジョン・イウィング他。脚本はジョン・ヒル。撮f影はデヴィッド・エグビー。
愛用の1874年製シャープス・バッファロー・ライフルで1200ヤード(1.09キロメートル)先の標的を撃ち抜けるワイオミング出身の射撃の名手マシュー・クイグリー(セレック)は、オーストラリアの牧場主エリオット・マーストン(リックマン)が出した求人広告を見て現地にやってくる。男たちがクレイジー・コーラ(サン・ジャコモ)を強引に馬車に乗せようとしているのに遭遇したクイグリーは、彼女を助けてやるが、その男たちは彼を迎えに来たマーストンの手下だった。クイグリーの射撃の腕に感銘を受けたマーストンは、高額の報酬を提示するが、その任務がマーストンの土地に侵入した地元のアボリジニたちの抹殺だと知ったクイグリーは、嫌悪感を露わにして仕事を断る。激怒したマーストンとクイグリーは格闘になるが、マーストンの手下たちがクイグリーを殴り倒し、彼とコーラをオーストラリアの原野に置き去りにして殺そうとする。彼らはアボリジニたちに助けられるが、マーストンの手下たちがそのアボリジニたちを襲撃したので、クイグリーは彼らを撃退し、マーストン一味のせん滅を決意する……。製作費は約2000万ドル。全世界興行収入は約2141万ドル。当初は製作費4000万ドルで、「第七の暁」(1964)「アルフィー」(1966)「007/私を愛したスパイ」(1977)等のルイス・ギルバートが監督する予定だったが、予算が半分に削られたためギルバートは降板。主演にはスティーヴ・マックィーンがキャストされていたが、彼が「ハンター」(1980)の後に病気に倒れた(1980/11/7死去)ので、しばらく企画が棚上げになり、その後ハリソン・フォードにもオファーされたが、最終的にトム・セレック主演で映画化された。シャープス・ライフルの売上はこの映画の公開後に10倍以上に跳ね上がり、当時は「クイグリー・ガン」の愛称で呼ばれていたという。
音楽は「(TV)ロンサム・ダブ」(1989)「ハーレーダビッドソン&マルボロマン」(1991)「フリー・ウィリー」(1993)「クロコダイル・ダンディーin
L.A.」(2001)等でもサイモン・ウィンサー監督と組んでいるベーシル・ポールドゥーリス(1945〜2006)。このスコアは公開当時の1990年に米Intradaレーベルから全11曲/約40分収録のサントラCD(Intrada
MAF 7006D)が出ており、その後2006年にベルギーのPrometheusレーベルから全30曲/約74分収録のエクスパンデッド盤(Prometheus
XPCD 162)が出ていたが、Intradaレーベルが2025年2月にリリースしたこの“35周年記念盤”CDは全31曲/約77分を収録で、限定プレス。
「Main Title」は、クラリネット、チューバ、トランペット、バンジョーをフィーチャーした明るく軽快なイントロから、オーケストラによる大らかでヒロイックなメインの主題へと展開するメインタイトル。かつてのエルマー・バーンステイン作曲による西部劇スコアを想起させるメインの主題が秀逸。「The
Fight」は、明るく躍動的なタッチから後半メインの主題へ。「The Redcoats Move On」は、バンジョーを加えた快活なマーチから明るく軽快なタッチへ。「Arrival」「Native
Montage」「Under the Boat」「The Gift」は、メインの主題のバリエーション。「The
Test」「Marston's Game」「Quigley Pans Out」「Aborigines」「The Baby」は、抑制されたタッチのサスペンス音楽。「Quigley
Gets Beat Up」は、パーカッシヴなサスペンス音楽。「The Stabbing」は、ドラマティックなサスペンス音楽。「The
Desert Trek」は、ダークでドラマティックなタッチの曲。「Cora's Story」は、アメリカの子守歌『可愛い仔馬たち(All
the Pretty Little Horses)』を織り込んだメランコリックでドラマティックな曲。「Marston's Murderers」は、ダイナミックなアクション音楽。「Royus
Interrupts」は、ジェントルなコーラの主題。「The Cliff」は、重厚でダイナミックなタッチ。「The
Bodies」「Quigley and Cora」は、静かにドラマティックな曲。「You'll Be Back」「The
Fire」「The Attack」は、ダイナミックでヒロイックなタッチの曲。「Rising of the Moon」は、ヴァイオリン・ソロをフィーチャーしたジェントルな曲。「Dingo
Attack」は、ジェントルなコーラの主題からダークなサスペンス音楽、ドラマティックなタッチへ。「The Warning」は、躍動的でヒロイックなタッチの曲。「The
Capture」は、ドラマティックなサスペンス調から後半ダイナミックなアクション音楽へ。「Freedom」は、ドラマティックな主題から大らかに盛り上がり、快活なマーチへ。「The
Aborigines Return」は、ドラマティックなタッチの曲。「Matthew Quigley」は、メインの主題のリプライズにより締めくくる。
(2025年5月)
Basil Poledouris
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