007/消されたライセンス LICENCE TO KILL

作曲・指揮:マイケル・ケイメン
Composed and Conducted by MICHAEL KAMEN

演奏:ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the National Philharmonic Orchestra

(米La-La Land Records / LLLCD1657)

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1989年製作のイギリス=アメリカ合作映画。監督は「007/ユア・アイズ・オンリー」(1981)「007/オクトパシー」(1983)「007/美しき獲物たち」(1985)「007/リビング・デイライツ」(1987)「エイセス/大空の誓い」(1991)「ネバー・セイ・ダイ」(2001)等のジョン・グレン(1932〜)。出演はティモシー・ダルトン、キャリー・ローウェル、ロバート・ダヴィ、タリサ・ソト、アンソニー・ザーブ、フランク・マクレー、エヴェレット・マッギル、ウェイン・ニュートン、ベニチオ・デル・トロ、ペドロ・アルメンダリス・Jr、デスモンド・リューウェリン、デヴィッド・ヘディソン、プリシラ・バーンズ、ロバート・ブラウン、キャロライン・ブリス、ドン・ストラウド、ケイリー=ヒロユキ・タガワ、クリストファー・ニーム他。脚本はマイケル・G・ウィルソンとリチャード・メイボーム。撮影はアレック・ミルズ。イアン・フレミング原作の“007/ジェームズ・ボンド”シリーズの第16作目で、4代目ボンド俳優のティモシー・ダルトン(1946〜)にとって2本目で最後の作品。

CIAエージェントの友人フェリックス・ライター(ヘディソン)とデラ・チャーチル(バーンズ)の結婚式に出席するためフロリダを訪れたジェームズ・ボンド(ダルトン)は、アメリカ麻薬取締局に協力し、コロンビアの麻薬王フランツ・サンチェス(ダヴィ)を逮捕するが、サンチェスはビジネスパートナーのミルトン・クレスト(ザーブ)の助けにより逃亡し、デラを凌辱して殺害した上にフェリックスに瀕死の重傷を負わせる。友の仇を討とうとするボンドに、上司のM(ブラウン)は事件から手を引くように命じ、ボンドから殺しの許可証をはく奪する。組織を離れ個人として復讐することを決意したボンドは、フェリックスの友人シャーキー(マクレー)の協力でサンチェスとクレストの隠れ家をつきとめ、そこで麻薬捜査官キリファー(マッギル)の裏切りを知って彼を始末する。クレストの船ウェイヴクレストでサンチェスの愛人ルペ・ラモーラ(ソト)と出会ったボンドは、彼に接触してきた元CIAのパイロット、パメラ・ブーヴィア(ローウエル)も仲間に引き入れ、サンチェスが潜むカジノ、イストマス・シティへと向かうが……。製作費は約3200万ドル。全世界興行収入は約1億5617万ドル。サディスティックな殺し屋ダリオ役でデビュー2作目のベニチオ・デル・トロが登場。シリーズ中でQ(リューウェリン)が最も活躍するエピソード。ティモシー・ダルトンは、本作の後で3本目の作品となる「Property of a Lady」と仮のタイトルが付けれらた映画の撮影を1990年からスタートする準備をしていたが、MGMとの法的問題が長引いて製作開始が大幅に遅延したため、ボンド役からの引退を決意したという。

音楽は「デッドゾーン」(1983)「リーサル・ウェポン」(1987)「ダイ・ハード」(1988)「ロビン・フッド」(1991)「三銃士」(1993)「陽のあたる教室」(1995)等のマイケル・ケイメン(1948〜2003)で、これは彼の唯一の007シリーズ作品。ケイメンがスコアの収録でよく起用していたロンドンのナショナル・フィル(82人編成)による演奏。このスコアは、公開当時の1989年に米MCAレーベルから全10曲/約45分収録のサントラLP(MCA Records MCA-6307)とCD(MCA Records MCAD-6307)が出ていたが、La-La Landレーベルが2025年1月にリリースした全56曲/約149分収録の“35周年記念盤”CDは2枚組となっており、1枚目と2枚目の前半にオリジナルスコア、2枚目の後半に追加音楽と1989年盤サントラのリマスター版を収録。5000枚限定プレス。

CD1枚目の冒頭「Gun Barrel / Cray Cay Landing」は、銃口の中に現れたボンドがこちらに向けて銃を発射するいつものオープニングに流れる“ジェームズ・ボンドのテーマ”(作曲:モンティ・ノーマン、ギターの演奏はヴィック・フリック)から、重厚なサスペンス音楽へ。「His Funny Valentine (Film Version)」「Pam (Film Version)」「Sanchez's Home」「Bond Sneaks Out」「Bond Confronts Pam」は、ギターをフィーチャーした抑制されたサスペンス音楽。「Sanchez Is in the Bahamas / Shark Fishing (Extended Version)」は、ヒロイックな主題からダイナミックなサスペンス音楽へ。「Bond Hooks Sanchez」は、スパニッシュ・ギターをフィーチャーしたダイナミックなサスペンス音楽。「James & Felix on Their Way to Church (Film Version)」「Ocean Exotica Break-In」は、ボンドの主題のバリエーション。「Licence to Kill (Performed by Gladys Knight)」は、アトランタ出身の黒人歌手で“ソウルの女帝(The Empress of Soul)”と呼ばれるグラディス・ナイト(1944〜)のヴォーカルによる主題歌(作曲・作詞はナラダ・マイケル・ウォーデン、ウォルター・アファナシエフとジェフリー・コーエン)。「Sanchez Escapes」「Licence Revoked (Film Version)」は、重厚でダイナミックなサスペンスアクション音楽。「Della's Goodbye」「Torturing Felix」「Let's Go Shark Hunting」「You Earned It」「Hemingway House」「Uncle Q / Let's Get Some Rest」「Framing Krest」「Q in Disguise」は、抑制されたサスペンス音楽。「He Disagreed with Something That Ate Him」「Planting the Explosives」は、ドラマティックなサスペンス音楽。「Bond Aboard / Sharkey Dead」は、抑制されたサスペンス調から後半ダイナミックなサスペンスアクション音楽へ。「Seaplane Escape」「Ninja (Film Version)」は、マイケル・ケイメンの個性が強く出たダイナミックでパワフルなサスペンスアクション音楽。「Enter Ms. Kennedy / Enter Lupe / Sanchez's Office」「Leaving Harbour」「Bond and Lupe」は、ギターとピアノを加えたメランコリックでドラマティックなタッチの曲。「Kwang / Assassination Attempt」は、ギターを加えたジェントルなタッチからボンドの主題を織り込んだ抑制されたサスペンス音楽へ。

CD2枚目の冒頭「The Lab / The Process」「Dario Sees Pam / Chewed Up」「Problem Eliminated / Get In」は、抑制されたサスペンス音楽。「The Conveyor Belt」「Escape from the Compound」は、ダイナミックなサスペンスアクション音楽。「Tanker Downhill」「Truck Chase」は、ボンドの主題を織り込んだリズミックでダイナミックなアクション音楽。「Pam and Bond」は、ギターをフィーチャーしたジェントルなタッチの曲。この後にソース曲等8曲の追加音楽を収録。

1989年盤サントラのリマスターには挿入歌「Wedding Party」(ヴォーカル:アイヴォリー)「Dirty Love」(ヴォーカル:ティム・フィーハン)や、クロージング・ソングの「If You Asked Me To」(作曲:ダイアン・ウォーレン、ヴォーカル:パティ・ラベル)も収録。

(2025月7月)

Michael Kamen

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