(未公開)ニムの秘密 THE SECRET OF NIMH
作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH
演奏:ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the National Philharmonic Orchestra
(米Intrada / Intrada
Special Collection Volume 524)
1982年製作のアメリカのアニメーション映画(日本では劇場未公開でビデオ発売・テレビ放映済)。監督は「アメリカ物語」(1986)「リトルフットの大冒険/謎の恐竜大陸」(1988)「おやゆび姫
サンベリーナ」(1993)「アナスタシア」(1997)「タイタンA.E.」(2000)等のドン・ブルース(1937〜)。声の出演(ビデオ版の日本語吹替)は、エリザベス・ハートマン(上田みゆき)、アーサー・マレット(千葉順二)、ドム・デルイーズ(富山敬)、シャナン・ドーハティ(川田妙子)、ウィル・ウィートン(羽村京子)、デレク・ジャコビ(大木民夫)、ジョン・キャラディーン(藤本譲)、ハーマイアニ・バッドリー(斎藤昌)、ピーター・ストラウス(納谷六朗)、ポール・シェナー(中庸介)、アルド・レイ(緒方賢一)、ジョディ・ヒックス、イアン・フリード、トム・ハッテン、ルシール・ブリス他。「死の谷間」(2015)等のロバート・C・オブライエン(1918〜1973)の原作『フリスビーおばさんとニムの家ねずみ(Mrs.
Frisby and the Rats of NIMH)』を基にドン・ブルース、ウィル・フィン、ゲイリー・ゴールドマンとジョン・ポムロイが脚本を執筆。
ネズミの世界を擬人化し、母ネズミと子ネズミとの絆を描くファンタジー。野ネズミのミセス・ブリスビー(ハートマン)は、子供たちと牧場で暮らしていたが、種まきの時期が近づいたため引っ越しを考えていた。ところが息子のティモシー(フリード)が肺炎になり、最低3週間は安静にすべきと診断される。人間たちが種まきをはじめ、一家の近くにトラクターが押し寄せたため、困ったミセス・ブリスビーが大フクロウ(キャラディーン)とカラスのジェレミー(デルイーズ)に相談したところ、薔薇の茂みの下に暮らす、あるクマネズミの集落を訪れ、そこのニコデムス(ジャコビ)に聞いてみてはどうかと助言される。その集落は、ミセス・ブリスビーの亡き夫ジョナサンやその知人の医者ミスター・エイジス(マレット)の故郷だったが、同時に国立保健医学研究所(N.I.M.H.:the
National Institute of Mental
Health)で実験を受け、高度な知能を持つネズミたちの集落でもあった……。製作費は約700万ドル。全世界興行収入は1467万ドル。ディズニー・アニメ「眠れる森の美女」(1959)「ロビン・フッド」(1973)「ビアンカの大冒険」(1977)等の作画を手がけたアニメーターのドン・ブルースが、ゲイリー・ゴールドマン、ジョン・ポムロイとともにディズニーから独立して製作・監督した作品。ミセス・ブリスビーの声を演じたエリザベス・ハートマンは1987年6月10日に自殺したため、本作が彼女の遺作となった。
音楽はジェリー・ゴールドスミス(1930〜2004)で、これは彼が初めて手がけたアニメーション映画のスコア。このスコアは、公開当時の1982年に米Varese
Sarabandeレーベルから全12曲/約48分半収録のサントラLP(Varese Sarabande STV 81169)とCD(Varese
Sarabande VCD 47231)が出ており、その後2015年に米Intradaレーベルから全16曲/約62分収録のCD(Intrada Special
Collection Volume
332)が出ていたが、同じIntradaレーベルが2025年7月にリリースした全37曲/約125分収録のこのCDは、2枚組となっており、1枚目にフィルムスコア全21曲とエクストラ4曲、2枚目にオリジナル盤の12曲を収録。限定プレス。
CD1枚目の冒頭「Main Title (Film Version)」は、オーケストラとコーラスによる静かに幻想的な主題からトランペット・ソロとストリングスに大らかなメインの主題へと展開するメインタイトル。「Potion」は、メインの主題を含む幻想的でミステリアスなタッチの曲。「Allergic
Reaction (Film Version)」「Step Inside My House」「New Resolve」は、ダークで重厚なサスペンス音楽。「Athletic
Type (Film Version)」「In Disguise (Film Version)」「Tied Up」「In Disguise」は、コミカルでおどけたタッチの主題。「Flying
Dreams (Vocal by Sally Stevens)」は、サリー・スティーヴンスのヴォーカルによるジェントルでリリカルな主題歌。「The
Tractor」は、ピアノとストリングスによる躍動的なタッチからオーケストラによるダイナミックなサスペンスアクション音楽へ。「No
Thanks」「At Your Service」は、オーケストラとコーラスによるサスペンス音楽。「The Sentry
Reel (Film Version)」は、ダークで重厚なサスペンス音楽から幻想的なコーラスによる主題、ビジーで躍動的なサスペンスアクション音楽へ。「Be
Brief」は、抑制されたサスペンス音楽。「The Story of NIMH (Film Version)」は、メインの主題を織り込んだ幻想的なコーラスからダイナミックなサスペンス音楽へ。「Escape
from NIMH (Film Version)」「A Better Mousetrap」「Moving Day」は、ビジーでダイナミックなサスペンス音楽。「House
Raising」は、ダイナミックなサスペンスアクション音楽からコーラスを加えてメインの主題がドラマティックに盛り上がる。「Flying
High / Flying Dreams (Film Version) / End Title (Film Version)」は、コミカルなタッチの主題からメインの主題へ展開し、ポール・ウィリアムスのヴォーカルによる主題歌で締めくくる。この後にエクストラとして主題歌『Flying
Dreams』のデモ・バージョン4曲を収録。
ジェリー・ゴールドスミスは、本作を引き受けるにあたりプロデューサーたちに「ディズニー流のキャラの動きと完全にシンクロした音楽(いわゆる“ミッキーマウジング”)ではなく、実写映画と同様の形でスコアを作曲したい」と申し入れて了解を得たという。彼自身のお気に入りであるスコアの1つで、特にラヴリーなタッチの主題歌が秀逸。オーケストレーションはアーサー・モートン。
(2025年12月)
Jerry Goldsmith
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