女王陛下の007 ON HER MAJESTY'S SECRET SERVICE

作曲・指揮:ジョン・バリー
Composed and Conducted by JOHN BARRY

(米La-La Land Records / LLLCD1667)

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1969年製作のイギリス映画。監督は「007/ドクター・ノオ」(1962)「国際諜報局」(1964)等の編集や「ゴールド」(1974)「ロジャー・ムーア/冒険野郎」(1976)「(未公開)ワイルド・ギース II」(1985)「(未公開)トップレディを殺せ」(1986)等の監督を手がけているピーター・ハント(1925〜2002)。出演はジョージ・レーゼンビー、ダイアナ・リグ、テリー・サヴァラス、ガブリエル・フェルゼッティ、イルゼ・ステパット、ロイス・マクスウェル、ジョージ・ベイカー、バーナード・リー、バーナード・ホースフォール、デスモンド・リュウェリン、ユーリ・ボリエンコ、ヴァージニア・ノース、アンジェラ・スコーラー、カトリーヌ・シェル、ジュリー・エーゲ、ジョアンナ・ラムレイ、ジュディ・ギーソン他。イアン・フレミング(1908〜1964)の原作を基にリチャード・メイボームとサイモン・レイヴンが脚本を執筆。撮影はマイケル・リード。製作はハリー・サルツマンとアルバート・R・ブロッコリ。

ショーン・コネリーに代わって二代目ジェームズ・ボンドに起用されたオーストラリア人のジョージ・レーゼンビー(1939〜)が登場したシリーズ第6作。国際的犯罪組織スペクターの首領エルンスト・スタヴロ・ブロフェルド(サヴァラス)の動向を探っていたボンドは、トレイシー(リグ)という女性と出会い、自殺しようとしていた彼女を救うが、大胆な振る舞いをする彼女に惹かれていく。トレイシーの父は強大な犯罪組織ユニオン・コルスのボスであるマルク=アンジュ・ドラコ(フェルゼッティ)で、ボンドはドラコから娘の面倒を見てほしいと懇願されると同時に、彼からブロフェルドの情報を入手することに成功する。こうしてボンドは、ブロフェルドが潜むスイスへ飛ぶが、そこで彼は、ブロフェルドが催眠療法を施した女性たちに世界各地で細菌をばらまかせるという人類抹殺計画を企てていること知る……。俳優経験のなかったレーゼンビーの平坦な演技が難だが、悪役のサヴァラス、ボンドガールのデイム・ダイアナ・リグの強いカリスマと、スキーやボブスレーによるハイスピードなアクションシーンの迫力で、シリーズ中でも傑作と考えられている作品。クリストファー・ノーラン監督のお気に入りのボンド映画でもある。製作費は約700万ドル。全世界興行収入は約2283万ドル。

音楽は「007/ドクター・ノオ」(1962)「007/ロシアより愛をこめて」「007/ゴールドフィンガー」(1964)「007/サンダーボール作戦」(1965)等シリーズ前半の常連作曲家で、本作がシリーズ6本目の登板となるジョン・バリー(1933〜2011)。このスコアは公開当時の1969年に米United Artistsレーベルから全11曲/約37分収録のサントラLP(United Artists UAS 5204)が出ており、1988年にEMI Manhattanレーベルから同内容のCD(EMI Manhattan CDP 7 90618 2)、2003年にCapitol/EMI Recordsレーベルから全21曲/約79分半収録でリマスターされたCD(Capitol/EMI Records 72435-41419-2-8)が出ていた。La-La Landレーベルが2025年7月にリリースした全53曲/約152分収録のCDは2枚組となっており、1枚目と2枚目の前半にはオリジナル・スコアのエクスパンデッド版、2枚目後半には過去のサントラLPの内容のリマスター版とボーナストラックを収録。5000枚限定プレス。

CD1枚目の冒頭「Gun Barrel (From “On Her Majesty's Secret Service”)」は、銃口の中に現れたボンドがこちらに向けて銃を発射するいつものオープニングに流れる“ジェームズ・ボンドのテーマ”(作曲:モンティ・ノーマン)から、抑制されたサスペンス音楽へ。「This Never Happened to the Other Fella (Film Version)」は、ボンドの主題を織り込んだサスペンス音楽。「Main Title: On Her Majesty's Secret Service (Film Version)」は、スリリングかつダークでストイックなタッチのメインタイトルで、ジョン・バリーがこのシリーズに作曲した中でもベストの主題曲だろう。「We Have All the Time in the World (Film Version)」は、大らかでジェントルな主題歌のジャズ・ピアノによる演奏。「Try (Film Version)」も、ジェントルなタッチのジャズ・ピアノ。「James and Tracy」は、ボンドとトレイシーのラヴ・テーマでもある主題歌のバリエーション。「You Have an Appointment」「The Capu」「Resignation」「Two Weeks Leave」「The College of Arms」「Proposal」も、主題歌のバリエーション。「Prelude for Guitar and Strings」は、ギターとストリングスによるメランコリックなタッチの曲。「We Have All the Time in the World (Film Mix) (Performed by Louis Armstrong)」は、アメリカのジャズ・トランペット奏者/歌手ルイ・アームストロング(1901〜1971)のヴォーカルによる主題歌(作曲:ジョン・バリー、作詞:ハル・デヴィッド)。名曲。“サッチモ”の愛称で親しまれたアームストロングが最後に録音した曲で、彼はこの2年後に死去している。「Gumbold's Safe」は、ダークなタッチのサスペンス音楽。「Journey to Piz Gloria」は、大らかなタッチの曲。「The Usual Comforts」「I'll Do What I Claim」「Deep Hypnosis」「Blizzard」は、抑制されたタッチのサスペンス音楽。「Twelve Gorgeous Girls」は、ボンドの主題のバリエーション。「Heraldry」は、気だるいタッチの曲。「Count Balthazar de Bleuchamp」「It's True! / The Hidden Persuader / You'll Need to Be」「Uncovered」は、ドラマティックなサスペンス音楽。「Eight」は、メランコリックなタッチの曲。「Escape from Piz Gloria」「Ski Chase (Extended Version)」は、メインの主題を織り込んだダイナミックでスリリングなアクション音楽。

CD2枚目の冒頭「Don't Be So Proud」は、メインの主題のバリエーション。「Over and Out (Film Version)」「Battle at Piz Gloria」は、メインの主題を織り込んだダイナミックなアクション音楽。「Bobsled Chase」は、ボブスレーによるチェイス・シーンのダイナミックでスリリングなアクション音楽。「The Wedding Ring」は、主題歌のバリエーション。ラストの「We Have All the Time in the World – James Bond Theme (Film Version)」は、フルートとストリングスによる主題歌のバリエーションからボンドの主題に展開して締めくくる。

この後に1969年版サントラの内容のリマスター版11曲が収録されており、劇中でソース曲として流れるクリスマス・ソング「Do You Know How Christmas Trees Are Grown?」(作曲:ジョン・バリー、作詞:ハル・デヴィッド)も含まれているが、この曲を歌っているのは「ロング・グッドバイ」(1973)「アメリカン・ジゴロ」(1980)等に出演しているデンマーク人の女優/歌手ニーナ・ヴァン・パラント(1932〜)。更に未使用音源等の追加音楽8曲を収録。

「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」(1997)「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ」(1999)「007/ダイ・アナザー・デイ」(2002)「007/カジノ・ロワイヤル」(2006)「007/慰めの報酬」(2008)のスコアを手がけているデヴィッド・アーノルド(1962〜)がこのCDのライナーノーツでコメントしている通り、ジョン・バリーが作曲した007シリーズ中ではベストのスコアだろう。
(2026年2月)

John Barry

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