ジョルジュ・オーリック
  Georges Auric

Date of Birth: 1899/2/15
Place of Birth: Lodeve, France
Date of Death: 1983
Mini Biography:
Befriended in his teens by Erik Satie and taught by D'Indy, he studied music in Paris as the First World War raged on. In 1919, he joined forces with five like-minded rebellious young composers, including Darius Milhaud and Francis Poulenc, who together began to revitalise the French musical scene as "Le Six". Throughout the 1930s, he embraced the two worlds of concert hall and movie studio with equal ease.

 


ジョルジュ・オーリック映画音楽集   THE FILM MUSIC OF GEORGES AURIC

作曲:ジョルジュ・オーリック
Composed by GEORGES AURIC

指揮:ラモン・ガンバ
Conducted by RUMON GAMBA

演奏:BBCフィルハーモニー管弦楽団
Performed by the BBC Philharmonic Orchestra

(英Chandos / CHAN 9774) 1999

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<収録曲>

1. シーザーとクレオパトラ Caesar and Cleopatra
2. (未公開)The Titfield Thunderbolt
3. (未公開)夢の中の恐怖 Dead of Night
4. (未公開)Passport to Pimlico
5. 回転 The Innocents
6. (未公開)The Lavender Hill Mob
7. 赤い風車 Moulin rouge
8. (未公開)Father Brown
9. (未公開)It Always Rains on Sunday
10. 乱闘街 Hue and Cry

フランスの作曲家ジョルジュ・オーリックが、イギリス映画のために作曲したスコアを集めた新録音コンピレーション。オーリックは、画家ロートレックの生涯を描いた映画「赤い風車」の主題歌「ムーラン・ルージュの歌」で最もよく知られている作曲家だと思うが、このパリを舞台にした有名な作品も実はイギリス映画である(このアルバムにも収録されている)。もちろん彼はジャン・コクトー監督やルネ・クレール監督等のフランス映画のスコアも多数手がけているが、ここに集められた映画音楽を聴くと、とてもフランス人が書いたとは思えないほど"イギリス色"なのに驚かされる。
ここに収録された音楽は全てフィリップ・レインによりリコンストラクトされたスコアを基に新たに録音されたものである。ラモン・ガンバの指揮による演奏も迫力がある。

1. シーザーとクレオパトラ Caesar and Cleopatra

1945年製作(日本公開は1950年)の史劇。ジョージ・バーナード・ショウの原作戯曲を基にガブリエル・パスカルが監督。出演はクロード・レインズ、ヴィヴィアン・リー、ステュワート・グレンジャー、フローラ・ロブソン、アンソニー・ハーヴェイ、ルネ・アシャーソン、ケイ・ケンドール、ジーン・シモンズ他。プロデューサーでもあったパスカルは、この作品の音楽をベンジャミン・ブリテン、ウィリアム・ウォルトン、プロコフィエフ、アーサー・ブリスといった著名な作曲家に依頼したが全て断れれ、最後にオーリックが引き受けてくれたらしい。絢爛豪華なイントロから軽快なマーチへと展開する「Main Titles」、幻想的な「At the Sphinx」、勇壮なマーチとダイナミックな戦闘音楽「The Battle」の3曲から成る組曲が演奏される。非常に豪快なスコア(「シーザーとクレオパトラ」という感じではないが・・)。

2. (未公開)The Titfield Thunderbolt

1953年製作のコメディ(オーリックはイギリスのイーリング・スタジオのコメディを多数手がけている)。監督はチャールズ・クライトン。出演はスタンリー・ホロウェイ、ジョージ・レルフ、ノートン・ウェイン、ジョン・グレグソン、ヒュー・グリフィス他。バスとの競合に苦しむ地元の蒸気機関車鉄道を守ろうとする人々を描く。脚本はT・E・B・クラーク、撮影はダグラス・スローカム。オーリックの音楽は、ブラスの響きが小気味良い「Titles」や、蒸気機関車を描写した躍動的な「The Triumph of the Thunderbolt」が楽しい。

3. (未公開)夢の中の恐怖 Dead of Night

欧米では非常に評価の高い1945年製作の5話から成るオムニバス・ホラー映画。監督はチャールズ・クライトン、ベイジル・ディアデン、アルベルト・カヴァルカンティ、ロバート・ハーマーの4人が担当。H・G・ウェルズ、E・F・ベンソン、ジョン・ベインズ、アングス・マクファイルの原作を基に、ベインズとマクファイルが脚本を執筆。出演はマーヴィン・ジョンズ、ローランド・カルヴァー、アンソニー・ベアード、ジュディ・ケリー、マイケル・レッドグレーヴ、ベイシル・ラドフォード、サリー・アン・ハウズ他。レッドグレーヴが腹話術師を演じる最終話が強烈。音楽は、分厚いブラスとティンパニによる不吉なメインテーマから、優雅なワルツ、そしてメインテーマのリプライズによるフィナーレへと展開する組曲が収録されている。クラシカルなホラー音楽。

4. (未公開)Passport to Pimlico

1949年製作のコメディ。監督はヘンリー・コーネリアス。出演はスタンリー・ホロウェイ、マーガレット・ラザフォード、ベティ・ウォーレン、ベイシル・ラドフォード、ノートン・ウェイン、マイケル・ホーダーン他。古い協定書によりロンドンの中心部に自らの自治区を作る権利を持った少数のイギリス人グループを描く。脚本はコーネリアスとT・E・B・クラーク。オーリックのスコアは、短いファンファーレから軽快なタッチのメインテーマへと展開。全体に陽気で軽妙なコメディ音楽。

5. 回転 The Innocents

ヘンリー・ジェームズの原作「ねじの回転」を映画化した1961年製作のスリラー。監督はジャック・クレイトン。出演はデボラ・カー、マイケル・レッドグレーヴ、ピーター・ウィンガード、メグス・ジェンキンズ、パメラ・フランクリン、マーティン・スティーヴンス他。脚本はウィリアム・アーチボルド、トルーマン・カポーティ(!)、ジョン・モーティマーが担当。撮影は名手フレディ・フランシス。メインタイトルの音楽には民謡 "O Willow Waly" が使われているが、ここではアンテア・ケンプストンの幻想的で美しいソプラノにより演奏される。ホラー映画にリリカルな主題曲を使う手法のはしりかもしれない。続く「Coachride and Arrival at Bly」は一転して明るいタッチの音楽。

6. (未公開)The Lavender Hill Mob

1951年製作のコメディ。監督はチャールズ・クライトン。出演はアレック・ギネス、スタンリー・ホロウェイ、シドニー・ジェームズ、アルフィー・バス、ジョン・グレグソン他。ギネス扮する銀行員がホロウェイと組んで金塊輸送車を襲撃するまでを描く。T・E・B・クラークの脚本はアカデミー賞を受賞。オードリー・ヘップバーンが冒頭にチョイ役で出ているらしい。スコアは、華麗なファンファーレから、コミカルなタッチの強奪シーンの音楽、そしてビジーな追跡シーンの音楽へと展開していく。

7. 赤い風車 Moulin rouge

ピエール・ラミュールの原作を基にジョン・ヒューストンが1952年に監督したドラマ。出演はホセ・ファーラー、ザ・ザ・ガボール、シュザンヌ・フロン、コレット・マルシャン、ジル・ベネット、セオドア・バイケル他。ハマー・フィルムの「フランケンシュタインの逆襲」で共演する前のクリストファー・リーピーター・クッシングの2人が偶然脇役で出ている。脚本はヒューストンとアンソニー・ヴェイラーが担当。撮影はオズワルド・モリス。赤い風車を看板に掲げたパリの名物キャバレー"ムーラン・ルージュ"を中心に、画家アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック(ファーラー)の生涯を描いた名作。ここに収録された組曲は、ドラマティックなオープニングから主題曲へと続く「Main Titles」、おっとりとしたタッチのポルカ、そして有名な主題歌のワルツ "April again, beside the river Seine" へと展開するが、この主題歌を歌うメアリー・カレウによる情感のこもった美しいソプラノが素晴らしい。これは非常に有名な曲なので、ジョルジュ・オーリックの名前を知らない人でも、音楽を聴けば「ああ、この曲か」とわかるはずである。映画ではザ・ザ・ガボールが歌手役で、彼女の歌声はミュリエル・スミスが吹き替えた。後にこの曲はウィリアム・エングヴィックの新しい歌詞により"Where Is Your Heart?"というヒットソングにもなった。

8. (未公開)Father Brown

1854年製作のミステリドラマで、アメリカでの公開題名は「The Detective」。監督はロバート・ハーマーアレック・ギネスが、G・K・チェスタートン原作の名探偵ブラウン神父に扮する。共演はジョーン・グリーンウッド、ピーター・フィンチ、セシル・パーカー、バーナード・リー、シドニー・ジェームズ他。ミステリ映画だが、音楽はやはり活劇調なのが楽しい。イギリス風の軽快なマーチとコミカルなフランス風音楽の組合わせになっている(犯人がフランス人なので)。

9. (未公開)It Always Rains on Sunday

1947年製作のドラマ。監督はロバート・ハーマー。出演はグージー・ウィザーズ、ジャック・ワーナー、ジョン・マッカラム、エドワード・チャップマン他。雨の日曜日、ロンドンの下町を舞台に脱獄囚と彼をかくまう元恋人を描く。アーサー・ラバーンの原作を基に、ヘンリー・コーネリアス、アンガス・マクファイルとハーマーが脚本を執筆。ドラマティックでクラシカルなオープニングの音楽から、繊細で静かなラブテーマへと展開。激しい追跡シーンの音楽からメインテーマのリプライズによるフィナーレで締めくくる力作。

10. 乱闘街 Hue and Cry

ロンドンの下町に住む少年たちがギャングを壊滅させるまでを描いた1947年製作の活劇。監督はチャールズ・クライトン。出演はアラステア・シム、ジャック・ワーナー、フレデリック・パイパー、ジャック・ランバート他。ここでは、快活で躍動的なタッチの序曲が演奏される。

 

ジョルジュ・オーリックは、40年間の映画音楽作曲家としてのキャリア中に30本近いイギリス映画、100本以上のフランス映画、そしてイタリア、ドイツ、アメリカ映画のスコアを担当した。上記以外の主な作品には、「(未公開)詩人の血」(1930)「自由を我等に」(1931)「乙女の湖」(1934)「巴里の秘密」(1935)「悲恋」(1943)「美女と野獣」(1946)「田園交響楽」(1946)「双頭の鷲」(1947)「スペードの女王」(1948)「娼婦マヤ」(1949)「オルフェ」(1949)「夜ごとの美女」(1952)「七つの大罪」(1952)「恐怖の報酬」(1952)「ローマの休日」(1953)「アンリエットの巴里祭」(1954)「男の争い」(1955)「歴史は女で作られる」(1956)「ピカソ−天才の秘密」(1956)「ノートルダムのせむし男」(1956)「スパイ」(1957)「旅」(1958)「さよならをもう一度」(1961)「火刑の部屋」(1962)「悪のシンフォニー」(1966)「女と女」(1967)「クリスマス・ツリー」(1968)等がある。
(2001年1月)

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