Date of Birth: 1934/7/25
Place of Birth: Los Angeles, California, USA
Date of Death: 1978/12/17
Mini Biography:
Ellis was an influential bandleader, composer, trumpeter, teacher and author often regarded as one of the most innovative artists in the history of jazz. He was most active from 1966 to 1975, leading his 22-piece big band and expanding the art of jazz music, particularly with his use of odd meters - 5/8, 7/8, 13/8 or even 33/16. He recorded 14 albums and scored 12 films, won one Grammy award and was nominated for 6 others. In 1975 he was overtaken by heart problems and suffered a massive heart attack. After a long recovery, he continued to compose jazz and score films, performing only sporadically until he suffered a second heart attack and died in 1978 at the age of 44.
フレンチ・コネクション
THE FRENCH CONNECTION フレンチ・コネクション2 FRENCH CONNECTION II 作曲・指揮:ドン・エリス (米Film Score Monthly / FSM Vol.4 No.6) |
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「フレンチ・コネクション」は、当時30歳だったウィリアム・フリードキンが1971年に監督した刑事アクション映画の傑作。出演はジーン・ハックマン、ロイ・シャイダー、フェルナンド・レイ、トニー・ロー・ビアンコ、マルセル・ボズッフィ、フレデリック・ド・パスカル、ビル・ヒックマン、アン・レボット、ハロルド・ゲイリー、ケヴィン・ドブソン他。実在のニューヨーク市警察麻薬課刑事エディー・イーガンとソニー・グロッソによる1962年の麻薬取引検挙を描いたロビン・ムーアの原作を基に、アーネスト・タイディマンが脚本を執筆。撮影はオーウェン・ロイズマン、編集はジェリー・グリーンバーグが担当。イーガンとグロッソをモデルとした、“ポパイ”ことジミー・ドイル刑事と“クラウディ”ことバディ・ルッソ刑事にハックマンとシャイダーが扮し、この2人はこの作品でトップスターの仲間入りをした(イーガンとグロッソはアドバイザーとしてこの映画の撮影に協力すると共に、脇役で出演もしている)。フランスのマルセイユからニューヨークに密輸されたヘロインを巡る麻薬取引を追う刑事たちの執念の捜査を描いているが、ドキュメンタリー映画出身のフリードキンを監督に起用し、ドライでリアリスティックな描写に徹底したことが成功している。高架鉄道をハイジャックして逃げるフランスの組織の殺し屋ニコリ(ボズッフィ)をドイルが車で延々と追跡するシーンは、映画史上に残る見事なカーチェイスのモンタージュで、今見ても凄い緊張感がある。この映画は、1971年度アカデミー賞の作品賞、主演男優賞(ハックマン)、監督賞、脚色賞、編集賞の5部門を受賞した他、助演男優賞(シャイダー)、撮影賞、音響賞にもノミネートされた。この映画の成功により、ロイ・シャイダーを主役にした刑事ドラマ「重犯罪特捜班/ザ・セブン・アップス」(1973)と、ハックマン主演の完全なフィクションによる続編「フレンチ・コネクション2」(1975)が製作された。
音楽を担当したドン・エリスは、ジャズの作曲家・演奏家として知られているが、映画音楽も12作ほど手がけており、中でもこの「フレンチ・コネクション」は最も有名な作品である。このFilm Score MonthlyによるCDには、エリスが作曲した全てのスコアが収録されているが、その大半は映画のドキュメンタリー的なタッチを優先するために最終的にカットされてしまった。エリスはジャズバンドとストリングスによるかなり前衛的なアプローチのアンダースコアを書いているが、それでも彼のスコアがそのまま全て使われていたら映画のリアリズム性が薄れ、ここまでの成功にはならなかったように思う。これはエリスのスコアが殆どそのまま使われた続編「フレンチ・コネクション2」と比較すると明らかで、こちらはより娯楽映画的でコンベンショナルなアクション映画として作られている。
冒頭の「Main Title」は短いが印象的なタイトルバックに流れる曲で、攻撃的なブラスの不協和音によるダイナミックなタッチが良い。「Charnier」はフランスの組織のボス、シャルニエ(フェルナンド・レイが演じる。彼はスペイン人なのでフランス語は全て吹替えらしい)のテーマで、このフランス風のロマンティックな曲はスコア中に何度が登場するが、最終的に映画からは完全に削除された。この曲があるのとないのとでは映画の印象がかなり異なると思う。「Copstail」は主役の2人の刑事が夜のナイトクラブで怪しい男たちを見張るシーンの音楽で、アブストラクトなタッチのジャズだが、この曲もやはりカットされた。「Hotel Chase」はドイルがシャルニエをホテルから追跡するシーンの音楽(これも大半が削除された)で、スコア中の聴きどころの1つ。徐々にサスペンスを盛り上げて行く骨太なタッチのジャズ。「Subway」はドイルが地下鉄の駅までシャルニエを追跡するシーンのサスペンスフルな音楽で、劇中最も印象に残る曲。1973年にColumbiaレーベルからリリースされたエリスのアルバム「Connection」にも、この曲が“Theme from the French Connection”として収録されている。「The Shot」は激しいカーチェイスの後にニコリを追いつめたドイルが殺し屋を射殺するシーンの音楽で、映画では使用されたかったが、高音のトランペットによるフランティックなパッセージが印象的。「The Last Roundup」はクライマックスの銃撃戦シーンの音楽(これも削除)で、分厚いブラスによるメインテーマのパワフルなリプライズが迫力あり。全体として極めて前衛的で、しかもダイナミックで緊張感のあるアンダースコアとなっており、非常に興味深い。
1975年に製作された続編の「フレンチ・コネクション2」は、「五月の七日間」(1963)「大列車作戦」(1964)「(未公開)ブラック・サンデー」(1977)等のベテラン、ジョン・フランケンハイマーが監督を担当。出演はジーン・ハックマン、フェルナンド・レイ、ベルナール・フレッソン、ジャン=ピエール・カスタルディ、キャスリーン・ネスビット、フィリップ・レオタール、シャルル・ミロ、エド・ローター他。ロバート・ディロンとローリー・ディロンの原作を基に、アレクサンダー・ジェイコブスとロバート&ローリー・ディロンが脚本を執筆。撮影はクロード・ルノワール。シャルニエの顔を唯一認識できる刑事としてマルセイユに派遣されたジミー・ドイル刑事が、現地の刑事(フレッソン)たちに協力して麻薬組織の捜査に当たるが、ドイルは組織に捕らえられ、ヘロイン漬けにされてしまう。地獄の苦しみを味わって麻薬中毒から立ち直ったドイルは、執念の鬼と化してシャルニエを追う……。前作ほどリアリズムを強調した演出ではなく、よりオーソドックスなアクション映画になっているが、フランケンハイマー監督らしい骨太なタッチが秀逸で、大ヒット作の続編としては非常によく出来た映画だと思う。フランケンハイマーはこの映画を全編フランス・ロケで撮影しており、キャストやクルーにもフランス人を多数起用している(彼はアメリカ人だがフランス語を流暢に話す)。
音楽は前作に続きドン・エリスが担当しているが、ここではよりトラディッショナルでドラマティックなタッチのスコアを書いており、その殆どが意図した通りに劇中で使用されている。「Main
Title / Waterfront」でのストイックなタッチの主題は全編を通して登場する。ドイルがマルセイユの街を徘徊するシーンの「Popaye's
Montage」はクールなジャズ。ドイルがシャルニエの部下に襲われるシーンの「Hit」は、アブストラクトなジャズでなかなか面白い。ドイルが捕らわれてヘロイン漬けにされる過程の「Heroin」「O.D.」「Pain」といった曲は、シンセとオーケストラによる前衛的なタッチのスコア。「Revenge」は麻薬中毒から回復したドイルが自分の捕えられていたホテルを思い出し、ガソリンを撒いて焼き討ちにするシーンの音楽で、パワフルでパーカッシヴなアクション・スコア。「Big
Chase」はクライマックスの追跡の音楽で、メインタイトルの主題がオーケストラとビッグバンドによりパワフルに演奏される。
(2001年5月)
重犯罪特捜班/ザ・セブン・アップス THE SEVEN-UPS
作曲・指揮:ドン・エリス
Composed and Conducted by DON ELLIS
(米Intrada / Intrada Special Collection Volume 47)
1973年製作のアメリカ映画。監督は「ブリット」(1968)「フレンチ・コネクション」(1971)「(TV)マンハッタン25時/ザ・コネクション」(1973)「(TV)NY犯罪地図/アンタッチャブル・コップス」(1973)等の刑事・犯罪映画のプロデューサーであるフィリップ・ダントニ。出演はロイ・シャイダー、トニー・ロー・ビアンコ、ビル・ヒックマン、リチャード・リンチ、ラリー・ヘインズ、ケン・カーチェヴァル、ジョー・スピネル、ヴィクター・アーノルド、ジェリー・レオン、ルー・ポラン、マット・ルッソ、ロバート・バー、レックス・エヴァーハート、デヴィッド・ウィルソン、エド・ジョーダン、メアリー・ムルタリ、ソニー・グロッソ他。脚本はアルバート・ルーベンとアレクサンダー・ジェイコブス、撮影はアース・ファーラー。ジェラルド・B・グリーンバーグが編集とアソシエイト・プロデューサーを担当。逮捕されれば7年以上の刑期(Seven-Ups)が確実な重犯罪人たちを追うNY市警特捜班の活躍を描くポリス・アクション。バディ・マヌッチ(シャイダー)率いる特捜班“ザ・セブン・アップス”は、チームの1人が殺害されたことで犯罪関与の嫌疑がかかり、自分たちの汚名をはらすために真犯人を追う……。「フレンチ・コネクション」で同じバディという名の刑事を演じたロイ・シャイダーが主演のため、スピン・オフ映画と考えられている。
音楽は、フィリップ・ダントニ製作の「フレンチ・コネクション」とその続編「フレンチ・コネクション2」も手がけているジャズ・ミュージシャンのドン・エリス。「Main Title」は、ストリングスによる緊迫したイントロから、アブストラクトで不安定なタッチのメインタイトルが展開。ジェリー・フィールディング的なストリングスのピッチカートが印象的。「Car Wash 1」「Car Wash 2」「In Garage」は、ストリングスの不協和音によりテンションを高めていく曲。「Festa Kidnapping / Funeral」「Ice House」も、アブストラクトで不気味。「Coffin」「Vito & Moon/Scream」は、ビジーなストリングスによる緊迫したタッチで、ジャズがベースになっているところがこの作曲家らしい。「Stalking」は、ダイナミックでサスペンスフルな曲。「End Credits」は、ストリングとピアノによるドラマティックなエンドタイトル。「フレンチ・コネクション」の延長線上にある極めてサスペンスフルな劇伴スコア。
尚、この米IntradaレーベルのCDには、「いそしぎ」(1965)「動く標的」(1966)「殺しの分け前/ポイント・ブランク」(1967)「M★A★S★H マッシュ」(1970)「アガサ/愛の失踪事件」(1979)「デストラップ・死の罠」(1982)等のジョニー・マンデルが作曲した「重犯罪特捜班/ザ・セブン・アップス」の未使用スコア(9曲)と、同じくマンデル作曲でシドニー・ルメット監督/ポール・ニューマン主演の「評決」(1982)のスコア(6曲)も収録されている。マンデルの未使用スコアは、オーケストラによる、よりオーソドックスなアクション音楽で、「フレンチ・コネクション」でのドン・エリス作曲の追跡音楽に似た「Antique Shop」や、「Cops and Robbers」「Home to the Junkyard」等でのビジーで重厚なサスペンスアクション音楽が面白い。1200枚限定プレス。
ドン・エリスが手がけた映画音楽には「(TV)スパイ大作戦−甘きマイクロ回路(Mission:
Impossible - A Cube of Sugar)」(1967)「宇宙船02(Moon Zero Two)」(1969)「フレンチ・コネクション(The
French Connection)」(1971)「カンサスシティの爆弾娘(Kansas City
Bomber)」(1972)「重犯罪特捜班/ザ・セブン・アップス(The Seven-Ups)」(1973)「(未公開/TV)In
Tandem」(1974)「フレンチ・コネクション2(French Connection II)」(1975)「(未公開/TV)Doctors'
Hospital」(1975)「(TV)パニック・イン・テキサスタワー(The Deadly
Tower)」(1975)「(未公開)Ruby」(1977)「(未公開)ランサム(The Ransom)」(1977)「(未公開)Natural
Enemies」(1979)がある。
この内、「宇宙船02」は、「ハマー映画音楽集
Volume 1(THE HAMMER FILM MUSIC COLLECTION - Volume One)」というコンピレーションCDにメインテーマのみが収録されている(英GDI
/ GDICD002)。エリスは1978年にわずか44歳で心臓発作により惜しくも他界している。
(2007年8月)
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