Date of Birth: 1927/2/7
Place of Birth: Hampstead, London, England, UK
Date of Death: 2024/1/16
Mini Biography:
Laurie Johnson (Laurence Reginal Ward Johnson) studied at the Royal Academy of Music in London and his scores reflect this classical training in their complexity. He embarked on a professional musical career at the age of 21, composing and arranging for a variety of big bands, a love which continues to this day with his jazz ensemble, The London Big Band. He began scoring films and television in 1956, and soon proved to have an affinity for quirky and fantastic films with his scores for Stanley Kubrick's "Dr. Strangelove"(1963) and "First Men in the Moon"(1964). In addition, he scored episodes of "Thriller" and "The Avengers" for television, including the latter's popular title theme. Since 1974, he has also controlled and jointly owned the independent production companies that produced these programmes, the most famous being Avengers Mark One Productions Ltd., thereby being involved in all aspects of the film production, in addition to composing the score.
(未公開)H.G.ウェルズのS.F.月世界探険 H.G. Wells' FIRST MEN IN THE MOON
作曲・指揮:ローリー・ジョンソン
Composed and Conducted by LAURIE JOHNSON
(英Cloud Nine / ACN 7015) 1991
1964年製作のイギリス映画(日本では劇場未公開でビデオでのみリリース)。監督は「シンバッド七回目の航海」(1958)「絞首台の決闘」(1959)「ジャックと悪魔の国」(1962)等のファンタジー/アクション映画で知られるオーストラリア出身の職人ネイザン・ジュラン。出演はエドワード・ジャッド、マーサ・ハイヤー、ライオネル・ジェフリーズ、マイルズ・メイルソン、エリック・チティ、ピーター・フィンチ他。H・G・ウェルズ原作の古典的SF小説を基に、「原子人間」(1955)「恐怖の雪男」(1957)「火星人地球大襲撃」(1967)等で知られるSF作家ナイジェル・ニールとジャン・リードが脚本を執筆。製作はチャールズ・H・シニア。撮影はウィルキー・クーパー。SFXは「猿人ジョー・ヤング」(1949)「原子怪獣現わる」(1953)「水爆と深海の怪物」(1955)「世紀の謎・空飛ぶ円盤地球を襲撃す」(1956)「シンバッド七回目の航海」(1958)「ガリバーの大冒険」(1960)「SF巨大生物の島」(1961)「アルゴ探険隊の大冒険」(1963)「恐竜100万年」(1966)「シンドバッド黄金の航海」(1973)「シンドバッド虎の目大冒険」(1977)「タイタンの戦い」(1981)等の“ダイナメーション”特撮で有名なレイ・ハリーハウゼンが担当している。
ヴィクトリア時代のイギリスの探検家たちが特殊な装置で月面に降り立ち、グロテスクな月人(?)と遭遇し、巨大なモンスターに襲われる、という荒唐無稽なファンタジー。H・G・ウェルズが原作小説を書いた1901年には月旅行はまだまだ空想の世界だったが、この映画が1964年に劇場公開された時に、ちょうどNASAが無人探索機による月面写真を発表したという(それが映画にとって最高のプロモーションになったという話はちょっと信じ難いが……)。製作のチャールズ・H・シニアとSFXのレイ・ハリーハウゼンは、この作品以前に「シンバッド七回目の航海」「SF巨大生物の島」「アルゴ探険隊の大冒険」といったファンタジー映画を手がけているコンビだが、この「S.F.月世界探険」ではストップモーション・アニメ以外のSFX技術が主体となるため、ハリーハウゼンの呼びかけでベテランのレス・ボウイとキット・ウエストがスタッフに参加している。
音楽は400本以上の映画やTVのスコアを手がけているイギリスのベテラン作曲家ローリー・ジョンソンが担当しているが、冒頭の「Prelude」でのフルオーケストラによるスペクタキュラーな“月の主題(Lunar
Theme)”は、バーナード・ハーマンがハリーハウゼンのファンタジー映画に書いた傑作スコアにも匹敵する“センス・オブ・ワンダー”を感じさせる。「Cherry
Cottage / Kate and Bedford」はいかにも英国ヴィクトリア風の牧歌的なタッチからリリカルなラブテーマへと展開。「Cavor's
Experiments」は科学者(ジェフリーズ)が月旅行用の装置を調整するシーンのコミカルな音楽。「The
Sphere」は“月の主題”のバリエーション。「Love Theme」は主人公(ジャッド)とそのフィアンセ(ハイヤー)とのラブテーマで、非常にオールドファッションな曲。「To
the Moon!」「Lens Pit / Shadows」等のサスペンス音楽や、「Battle
with the Selenites」でのカラフルなアクション音楽も良い。「The
Moon Beast」はハリーハウゼンのダイナメーションによるモンスターが主人公たちを襲うシーンの音楽で、ブラッシーでパーカッシヴなタッチがやはりハーマンのスコアを思い出させる。「End
of the Eclipse / The Grand Lunar」のクライマックスでの盛り上がり、「Bedford
Shoots at the Grand Lunar」でのダイナミックなアクションスコアも秀逸。ラストの「Pursuit
and Escape from the Moon / End Title」は、“月の主題”による壮大なフィナーレで締めくくる。
全体として、バーナード・ハーマンの影響を少なからず感じるスコアだが、ジョンソンは実際に生前のハーマンと親交があり、ハーマンが音楽を担当した「悪魔の赤ちゃん2」の追加スコアを作曲したり、ハーマンの「北北西に進路を取れ」のスコアを指揮して新録音したアルバムをリリースしたりしている。
ローリー・ジョンソンが手がけた作品には
「(未公開)Girls at Sea」(1958)
「(未公開)No Trees in the
Street」(1959)
「追いつめられて…(Tiger Bay)」(1959)
「(未公開)Operation Bullshine」(1959)
「(未公開/TV)No Hiding Place」(1959)
「(未公開)Wernher von Braun」(1960)
「暴力の門(Spare
the Rod)」(1961)
「(未公開/TV)Top Secret」(1961)
「(未公開)What a Whopper」(1961)
「苦い報酬(Bitter Harvest)」(1963)
「(未公開)Siege of the Saxons」(1963)
「博士の異常な愛情/または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(Dr. Strangelove or: How I Learned to
Stop Worrying and Love the Bomb)」(1964)
「(未公開)激流ナイルの恋(East of Sudan)」(1964)
「欲望の終着駅(The Beauty Jungle)」(1964)
「(未公開)H.G.ウェルズのS.F.月世界探険(First Men in the
Moon)」(1964)
「(未公開)You Must Be Joking!」(1965)
「(TV)おしゃれ(秘)探偵(The
Avengers)」(1966〜1969)
「(未公開)Hot Millions」(1968)
「(未公開)女子大生・恐怖のサイクリングバカンス(And Soon the Darkness)」(1970)
「(未公開/TV)Mister
Jerico」(1970)
「(未公開)The Firechasers」(1971)
「(TV)作家探偵ジェイソン・キング(Jason
King)」(1971)
「(未公開/TV)The Adventurer」(1972〜1973)
「(未公開/TV)Thriller」(1973〜1976)
「(未公開)ベルストーン・フォックス(The Belstone Fox)」(1973)
「(未公開)The Maids」(1974)
「(未公開)キャプテン・クロノス/吸血鬼ハンター(Captain Kronos: Vampire
Hunter)」(1974)
「(未公開)Hedda」(1975)
「(未公開)Diagnosis: Murder」(1975)
「(未公開/TV)The New Avengers」(1976)
「(TV)特捜班CI☆5(The Professionals)」(1977)
「(未公開)悪魔の赤ちゃん2(It's Alive II)」(1978)
「(未公開)Tvingad att leva」(1980)
「(未公開)It's Alive III: Island of the Alive」(1987)
「(未公開/TV)A Hazard of
Hearts」(1987)
「(未公開/TV)ヒュー・グラントの浪漫騎士(The Lady and the Highwayman)」(1989)
「(未公開/TV)A Ghost in Monte Carlo」(1990)
「(未公開/TV)Duel of Hearts」(1992)
「(未公開)London Big Band in Concert at the Albert Hall」(1999)
等がある。
中でも「(TV)おしゃれ(秘)探偵」のテーマ曲は有名で、このイギリスの人気テレビシリーズがハリウッドで1998年にレイフ・ファインズ、ユマ・サーマン、ショーン・コネリー主演で「アベンジャーズ」としてリメイクされた際にも、ジョンソンのテーマ曲は流用されていた(この映画のスコアはジョエル・マクニーリーが作曲)。
ローリー・ジョンソンは、あまりサントラ・アルバムのリリースに恵まれていない作曲家だが、1992年にイギリスのUnicorn-Kanchanaレーベルより以下のような自作自演コンピレーションCDが発売されている。このCDの冒頭4曲(バーバラ・カートランドの原作小説を基にしたTV映画を集めたもの)での華麗でゴージャスなオーケストラの響きや、「おしゃれ(秘)探偵」「Hot Millions」等でのイギリス流のユーモアは、同じイギリスの作曲家ロン・グッドウィンの作風にも通ずるものがある。
「THE ROSE AND THE GUN: THE MUSIC
OF LAURIE JOHNSON」
Composed and Conducted by LAURIE JOHNSON
Performed by the London Studio Symphony Orchestra
(英Unicorn-Kanchana / FLY CD103) 1992
The Lady and the Highwayman
ヒュー・グラントの浪漫騎士
A Hazard of Hearts
A Duel of Hearts
A Ghost in Monte Carlo
The Avengers おしゃれ(秘)探偵
The New Avengers
Tiger Bay 追いつめられて…
When the Kissing Had to Stop
Hot Millions
Shirley's World
I Aim at the Stars
This Is Your Life
Jason King 作家探偵ジェイソン・キング
The First Men in the Moon H.G.ウェルズのS.F.月世界探険
The Professionals 特捜班CI☆5
また、1982年には米Varese Sarabandeレーベルより以下のコンピレーションがリリースされている。
「THE AVENGERS」
Composed and Conducted by LAURIE JOHNSON
Performed by the London Studio Symphony Orchestra
(米Varese Sarabande / VCD 47270) 1982
The Avengers おしゃれ(秘)探偵
The New Avengers
Dr.Strangelove 博士の異常な愛情
First Men in the Moon H.G.ウェルズのS.F.月世界探険
Hedda
Captain Kronos, Vampire Hunter
キャプテン・クロノス/吸血鬼ハンター
(2002年6月)
(未公開)キャプテン・クロノス/吸血鬼ハンター CAPTAIN KRONOS: VAMPIRE HUNTER
作曲・指揮:ローリー・ジョンソン
Composed and Conducted by LAURIE JOHNSON
(米Buysoundtrax / BSXCD 8831)
1974年製作のイギリス映画(日本では劇場未公開でビデオ発売済み)。製作・監督・脚本は「(未公開)ジキル博士とハイド嬢」(1971)「(TV)ダンディ2 華麗な冒険」(1971〜1972)「シンドバッド黄金の航海」(1973)等の脚本や、「(TV)特捜班CI☆5」(1977〜1983)等のプロデューサーとして知られるブライアン・クレメンスで、本作が唯一の監督作。出演はホルスト・ヤンソン、ジョン・カーソン、シェーン・ブライアント、キャロライン・マンロー、ジョン・カーター、ロイス・デイン、ウィリアム・ホッブス、ブライアン・タリー、ロバート・ジェームズ、ペリー・ソブロスキー、ポール・グリーンウッド、リサ・コリングス、ジョン・ホーリス、イアン・ヘンドリー、ワンダ・ヴェンサム他。撮影はイアン・ウィルソン。「吸血鬼ドラキュラ」や「フランケンシュタインの逆襲」等のホラー映画で知られるイギリスのハマー・フィルム・プロダクションが製作した吸血鬼ホラー+スワッシュバックリング・アクション作品。バンパイア・ハンターのキャプテン・クロノス(ヤンソン)は、彼の戦友が医師を務める小さな村で、女たちが吸血鬼によって若さを吸い取られてしまっているのを発見する……。欧米での劇場公開時の成績が不調だったために、当初予定されていたシリーズ化はキャンセルされたが、ハマー・フィルムのファンにはカルト的な人気のある作品。
音楽はブライアン・クレメンス製作の「(TV)特捜班CI☆5」も手がけているイギリスの作曲家ローリー・ジョンソン。冒頭の「Innocent
Maidens / Drained of Life」は、ややメランコリックな主題によるドラマティックなイントロダクション。続く「CAPTAIN
KRONOS Main Titles」は、勇壮なファンファーレから躍動的でダイナミックな主題へと展開するメインタイトル。単純にヒロイックな主題ではなく、ややダークなタッチでホラー調なのが絶妙。このメインタイトルを含め、「Vampire
Hunters Start Work」「Fight to the Death - God's Blade」等の曲にバーナード・ハーマンの影響が強く感じられる。「Carla
Released from Stocks」「Angry Mob, Magic Sword」等は、メインの主題のバリエーション。スコア全体を通して、「Birthday
Victim」「Kronos Meets Doctor Marcus / Evil in the Church」「Doctor Is Refused /
Toad in the Hole」「Doctor Rides to the Castle / Doctor Enters the Castles」「Bar
Confrontation」「Doctor Returns to Kronos / Setting Trap」「Doctor Is a Vampire /
Peace at Last」といったサスペンス調の曲と、「Girl Attacked by Bats」「Vampire at Door /
More Victims / Sarah at Father's Grave」「Stalking the Prey」「Bloom of Youth /
Father Returns from the Dead」「The End of Lady Durwood」等のホラー調の曲が展開。「Couple
Kissing in the Woods / Girl Attacked Going Home」は、冒頭のメランコリックな主題のバリエーション。「Kronos
Leaves / CAPTAIN KRONOS End Credit」は、トラジックな主題から、メインの主題のリプライズによるエンドクレジットへ。ラストに効果音や短いフレーズ等のボーナス・トラックが9曲収録されている。この「(未公開)キャプテン・クロノス/吸血鬼ハンター」のスコアは、1982年に米Varese
Sarabandeレーベルがリリースした、ジョンソン指揮ロンドン・スタジオ交響楽団による自作自演コンピレーションCDに一部含まれていたが、完全なサントラ盤はこれが初リリース。2000枚限定プレス。Buysoundtraxのサイトから直接購入された最初の100枚は、ヒロインを演じたキャロライン・マンローの自筆サイン入りだった。
(2007年10月)
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