MERLIN

（未公開）エクスカリバー聖剣伝説　MERLIN

作曲：トレヴァー・ジョーンズ
Composed by TREVOR JONES

指揮：ジェフリー・アレクサンダー
Conducted by GEOFFREY ALEXANDER

演奏：ロンドン交響楽団
Performed by The London Symphony Orchestra

（米Varese Sarabande / VSD-5929）

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イギリスに古くから伝わるアーサー王伝説は、これまでにも「円卓の騎士（Knights of the Round Table）」（1953／リチャード・ソープ監督）、「エクスカリバー（Excalibur）」（1981／ジョン・ブアマン監督）、「トゥルー・ナイト（First Knights）」（1995／ジェリー・ザッカー監督）等、何度も映画化されており、スピルバーグ監督の「インディ・ジョーンズ最後の聖戦（Indiana Jones and the Last Crusade）」（1989）でも、アーサー王が捜し求めた聖杯（Holy Grail）が主人公たちの探求の対象となっている。

今回のTV映画（1998年製作）の原題名「Merlin」は、アーサー王伝説に登場する魔法使いの名前であり、ブアマン監督の「エクスカリバー」ではイギリスの名優ニコル・ウィリアムソンが演じた役柄である。このTV映画では、「ジュラシック・パーク」等のサム・ニールが主役のマーリンを演じており、共演はヘレナ・ボナム・カーター、ジョン・ギールガッド、ルトガー・ハウアー、ジェームズ・アール・ジョーンズ、ミランダ・リチャードソン、イザベラ・ロッセリーニ、マーティン・ショートと非常に豪華。プロデューサーのロバート・ハルミはテッド・ダンソン主演の「ガリバーの冒険（Gulliver’s Travels）」（1996製作／NHKで放映済。こちらもピーター・オトゥール、オマー・シャリフ、エドワード・フォックス、ジョン・ギールガッド等超豪華キャスト）でもトレヴァー・ジョーンズを音楽に起用している（SFXをジム・ヘンソンズ・クリーチャー・ショップが担当しているのも同じ）。

トレヴァー・ジョーンズは南アフリカ出身のベテラン作曲家で、ジム・ヘンソン／フランク・オズ共同監督のマペット映画「ダーククリスタル」に書いた上質なシンフォニック・スコアで注目され、「ラスト・オブ・モヒカン」「クリフハンガー」「G.I.ジェーン」「絶対×絶命」等多数の作品を担当しているが、前述の「エクスカリバー」の音楽も書いており、アーサー王伝説を題材にした映画は今回で二度目になる（但し「エクスカリバー」では、音楽の大半にワーグナーのオペラ「ニーベルングの指輪」や、カルル・オルフの「カルミナ・ブラーナ」等クラシックがそのまま使われており、ジョーンズ自身の作曲によるオリジナル・スコアが劇中で流れた時間はごくわずかだった）。

これまでシンセサイザーを中心にしたスコアの多かったジョーンズが、このスコアでは久々にフル・オーケストラによる幻想的な一大交響詩を書いており、「ダーククリスタル」でも組んだイギリスの名門、ロンドン交響楽団の重厚で壮麗な演奏も素晴らしい。「ダーククリスタル」や「ガリバーの冒険」もそうだったが、この作曲家はファンタジー映画の音楽を得意としており、ここでのスコアも「センス・オブ・ワンダー」に満ち溢れた、極めてドラマティックなものである。作品数が多い割には、凡庸なスコア（特にシンセサイザー系の音楽）が多いジョーンズにとって、正に本領発揮とも言えるジャンルであり、「ダーククリスタル」以降、無味乾燥なシンセ音楽ばかりを聴かされてがっかりさせられてきたファンにとっては、久々に上質な映画音楽を堪能できる傑作である。
（1999年1月）

Trevor Jones

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