「コレット・水瓶座の女」 BECOMING COLETTE

作曲・指揮: ジョン・スコット
Composed and Conducted by JOHN SCOTT

(米JOS/JOSCD 115)


'91年製作の米・仏・独合作映画。 監督はダニー・ヒューストン(「マルタの鷹」「キー・ラーゴ」等の名匠ジョン・ヒューストン監督の息子)。 20世紀初頭に活躍した女流作家シドニー・ガブリエル・コレット(マチルダ・メイ)と、彼女を作家へと導いた最初の夫(クラウス・マリア・ブランダウアー)との運命的な出逢いを描いたラブ・ストーリー。 共演はヴァージニア・マドセン、ポール・リス、ジョン・ヴァン・ドリーレン、ジャン=ピエール・オーモン他。

音楽を担当したジョン・スコットは、現在活躍中のイギリス人作曲家の中で、エルガーやウォルトンといった正統派イギリス音楽の流れを最も色濃く受け継いでいる人だと思う。過去の作品でも、「アントニーとクレオパトラ」「グレイストーク」「(未公開)シューティング・パーティ The Shooting Party」「(未公開/TV)ガンジーと総督/自由への長い道 Mountbatten - The Last Viceroy」等は、英国的な風格と優雅さを持った素晴らしいスコアで、いずれも私のお気に入りである。また一方で、「ファイナル・カウントダウン」「キング・コング2」「(未公開)燃える男 Man on Fire」「影なき男」等に、ダイナミックなアクション・スコアも書いており、非常に才能豊かな実力派である。

この「コレット・水瓶座の女」の音楽は、スコットの作品中でも「シューティング・パーティ」や「グレイストーク」等と同様の英国調のスコアである(舞台はフランスだが)。映画はパリの劇場でのバレエのシーンから始まるが、この冒頭のバレエのシーンの序曲や、パリでの結婚式の音楽、パリの社交界でのワルツやポルカ、そしてラブシーンの音楽と、どの曲も優雅で情感豊かであり、極めて上質な映画音楽となっている。

このCDはスコット自身が運営するJOSレーベルからリリースされているが、このレーベルは作曲家個人のプロモーション用のプライベートレーベルとしては異例な数のアルバムをこれまでに出してきている。上述した「アントニーとクレオパトラ」「シューティング・パーティ」等も、CDはこのレーベルからリリースされている(LPは別レーベル)。ある程度採算度外視の部分もあるのだろうが、これだけ長く運営し、アルバムを出し続けていて経営が破綻しないのは大したものだと思う。
('99年8月)

John Scott

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