スプラッシュ SPLASH

作曲・指揮:リー・ホールドリッジ
Composed and Conducted by LEE HOLDRIDGE

(米Super Tracks / LHCD-02)


「バックドラフト」「アポロ13」「身代金」等のロン・ハワードが1984年に監督したファンタジー=ラブストーリー。出演はダリル・ハンナトム・ハンクス、ユージン・レヴィ、ジョン・キャンディ、ドディ・グッドマン、リチャード・B・シャル、シェッキー・グリーン、ハワード・モリス、ジョディ・ロング、ボビー・ディ・シッコ他。ブライアン・グレイザーの原作をローウェル・ガンツ、ババルー・マンデル、ブルース・J・フリードマンが脚色(1984年度アカデミー賞の脚本賞にノミネートされた)。撮影はドン・ピーターマンが担当。

8歳の時にケープ・コッドでボートから転落し溺れていたところを人魚に助けられたアレン・バウアー(ハンクス)が、20年後にまたもケープ・コッドにやって来て美しく成長した人魚(ハンナ)に再会し、恋に落ちる。コメディ・タッチのラブストーリーで、他愛ない話だが主役二人の強い個性と魅力によってかなり得をしている。ロン・ハワードは元々は役者で、子役や青春スターとして知られていたが(ドン・シーゲル監督の「ラスト・シューティスト」でジョン・ウェイン扮する老ガンマンと心を通わせる若者を演じていたのが印象的)、B級映画の帝王ロジャー・コーマンの下で撮った「バニシング in Turbo」という低予算映画で監督としてデビューし、ジョージ・ルーカスがプロデュースした「ウィロー」あたりから大作を任せられる職人監督になった。いかにもコーマン門下生らしい手堅い娯楽作品を撮る人だが、あまりはっきりした個性はない。

この映画のリー・ホールドリッジのスコアは、公開当時に作曲家自身が指揮したロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるLPがPolydorレーベルから出ていたが、これは再録音によるスコア盤だった。今回Super TracksレーベルからリリースされたCD(プロモーショナル盤)はれっきとしたサントラで、映画に使われた通りの曲が収録されている。非常にロマンティックで美しいラブテーマの主題が、「Main Title」「First Meeting」「The Boat/Mermaid on the Beach」「Underwater」「Late at Night」「"I Love You"」「Reunion」等で様々なアレンジにより何度も登場するが、最後の方の「Return Home」でほぼ完全な形で演奏される。上述のPolydorのLPには、コンサート的なアレンジによりフル・オーケストラで感動的に盛り上がるラブテーマの演奏が収録されていたが、このバージョンは映画には使われなかったということだろう。Varese Sarabandeレーベルからチャールズ・ゲルハルト指揮ロンドン交響楽団の演奏によるホールドリッジ作品集が出ているが(VCD47244)、ここに収録されている「スプラッシュ」もこれと同じアレンジである。その他、爽やかなロック調の「Madison at Bloomingdale's」や、マーチ風の「Raid on a Museum」、アクション音楽の「Escape and Chase」等、ラブテーマ以外の部分もスタイリッシュに巧くまとめている。リタ・クーリッジのヴォーカルによるラブテーマ「Love Came For Me」も収録(作詞はウィル・ジェニングズ)。「(TV)エデンの東」(1981)「ミラクルマスター/7つの大冒険」(1982)のようなホールドリッジならではの力強さはなく、全体に軽めのタッチだが、彼の作品中でも最もロマンティックでジェントルなスコアだろう。

リー・ホールドリッジは1944年ハイチ生まれで、「かもめのジョナサン」(1973)「(未公開)突撃バンパイア・レポーター/トランシルバニア6-5000」(1985)「私が愛したグリンゴ」(1989)「(TV)風に向かって」(1991)「(TV)野性の呼び声」(1993)「(TV)バッファロー・ガールズ」(1995)「(TV)スター・コマンド」(1996)等に優れたスコアを提供している他、協奏曲等のクラシック音楽も手がけている実力派である。1984年ロサンゼルス・オリンピックのドキュメンタリー「16 Days of Glory」(米LaserLight / 12 760)に付けたフル・オーケストラによる壮大な音楽も良かった。
(2000年3月)

Lee Holdridge

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