1999年製作のフランス=スペイン合作映画。「ローズマリーの赤ちゃん」「チャイナタウン」「フランティック」「死と処女(おとめ)」等のロマン・ポランスキー監督によるスリラー。出演はジョニー・デップ、フランク・ランジェラ、レナ・オリン、エマニュエル・セイナー、バーバラ・ジェフォード、ジャック・テイラー、ホセ・ロペス・ロデーロ、ジェームス・ルッソ他。アルトゥーロ・ペレス=レヴェルテの小説「El Club Dumas」を基に、ジョン・ブラウンジョンとポランスキーが脚色。撮影はダリウス・コーンジが担当。
悪魔を呼び起こすと言われる17世紀のオカルト書「闇の王国への九つの扉」の現存する3冊の内の1冊を手に入れた男が、希少本のディーラーであるディーン・コルソ(デップ)に、残りの2冊を探し出すことを依頼するが・・・、という古典的なホラー・ストーリー。偶然だが、私が10年以上前に友人と製作した「魔書 The Book」とう短編映画に設定がよく似ており、題材となる本の中の挿絵のタッチまでそっくりなのには驚いた。
音楽は「死と処女」(1995)でもポランスキーと組んだポーランドの作曲家ヴォイチェフ・キラールで、今回の映画の音楽は、フランシス・コッポラ監督の「ドラキュラ」(1992)に彼が書いた音楽と同様のゴシック・ホラー風スコアとなっている。冒頭とラストの「Vocalise - Theme from the Ninth Gate」は、物悲しいタッチのピアノとストリングスに、韓国の歌手スミ・ジョーによる幻想的なソプラノをフューチャーした美しい曲。ジョーのソプラノはこの曲以外にも全編を通して効果的に使われている。「Opening Titles」は低音のストリングスによる重く引きずるような陰鬱な音楽で、ゴシック・ホラーの雰囲気がよく出ている。主人公のテーマである「Corso」は、少しコミカルな印象もあるミステリアスな曲で、全体に暗めのスコア中でアクセントになっている。ダークなタッチのボレロ「Plane to Spain」や、サスペンスフルな「Missing Book / Stalking Corso」「Liana's Death」「"Boo!" / The Chase」等も上手いが、クライマックスの「Balkan's Death」では、オーケストラにコーラスが加わり、こうなるとどうしても印象はゴールドスミスの「オーメン」になってしまう。オーソドックスなホラー音楽だが、この作曲家の個性はよく出ている。
ヴォイチェフ・キラール(1932〜)は、上記作品以外にも「約束の大地」(1974)「コルチャック先生」(1990)「ある貴婦人の肖像」(1996)等のフィルムスコアを担当している他、クラシック音楽等も手がけているベテラン。
(2000年4月)
Copyright (C) 2000 Hitoshi Sakagami. All Rights Reserved.