007/ユア・アイズ・オンリー FOR YOUR EYES ONLY

作曲・指揮:ビル・コンティ
Composed and Conducted by BILL CONTI

(米RYKO / RCD 10751)

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1981年製作の007シリーズ第12作。監督はこのシリーズのエディターだったジョン・グレンで、この作品以降、第16作目の「007/消されたライセンス」まで連続して監督を担当している。出演はロジャー・ムーア、キャロル・ブーケ、トポル、リン=ホリー・ジョンソン、ジュリアン・グローヴァー、ジル・ベネット、カサンドラ・ハリス、マイケル・ゴサード、デスモンド・リュウェリン、ロイス・マックスウェル、ウォルター・ゴテル、チャールズ・ダンス他。イアン・フレミングの原作を基に、リチャード・メイボームマイケル・ウィルソンが脚本を執筆。撮影はアラン・ヒューム、SFXはデレク・メディングスが担当。

ギリシャ沖で遭難したイギリスの監視船に積載されていたミサイル誘導装置ATACをめぐる、英国諜報部員ジェームズ・ボンドの活躍を描く。前作「007/ムーンレイカー」で宇宙にまで飛び出してコミックブック化していたボンドが、オーソドックスな肉体アクションによる原点に立ち戻った作品で、スキー・アクションや、ロッククライミング・シーンでのスタントは息を呑む迫力。「他人のそら似」等のキャロル・ブーケが、知的でクールなボンドガールを演じている。原題名の意味は「読後焼却すべし」。

007シリーズの音楽といえばジョン・バリーだが、この作品の際にはバリーの都合が合わなかったため、彼は製作者側にビル・コンティを推薦した。コンティの書いたボンド映画の音楽はこの作品だけだが、彼のヒット作「ロッキー」の音楽にも通ずる歯切れの良いブラスを利かせたディスコ調のスコアを提供している。

タイトル・ソング「For Your Eyes Only」は、コンティ作曲/マイケル・リーソン作詞で、シーナ・イーストンが歌っているが、映画のタイトルバックは珍しく歌うイーストンの顔のアップだった(これまでこのシリーズではアップに耐えうる美貌の歌手がいなかったということだろうか?)。この主題歌は1981年度アカデミー賞の歌曲賞にノミネートされた。

続く「A Drive in the Country」「Runaway」はコンティの個性が良く出た軽快なディスコ調のスコアだが、モンティ・ノーマン作曲による「ボンドのテーマ」もきちんとリファーしている。コンティがあるインタビューで語ったところによると、この映画のスポッティングの際に、プロデューサーのアルバート・ブロッコリから、「ジェームズが行動を起こす場面では、"彼のテーマ"を使ってもらえると大変ありがたい」と極めて丁重にお願いされたという。当時、「ロッキー」シリーズのスコアを何度も担当し、例のテーマを繰り返し使うことに辟易していたコンティが、このブロッコリの発言から、ロッキーの活躍する場面で「ロッキーのテーマ」を使うことが、映画の視聴者から見た場合にいかに自然なことであるかを再認識させられたという。

このRYKOレーベルによるアルバムは、このスコアの初めてのCD化だが、以前にリリースされていたLP盤には収録されていなかった未発表曲を7曲含んでいる。これらは映画の冒頭の「Gunbarrel Music」を含む、オーケストラによる劇伴音楽だが、緊張感のあるサスペンスアクション・スコアで、ファンにとっては貴重なトラックである。「Sub Vs. Sub」の音楽は、コンティが後に担当した「F/X 引き裂かれたトリック」(1986)でのチェイスシーンの音楽にそのまま流用されている。

ビル・コンティ(1942〜)は、1976年の「ロッキー」で有名になって以来、「ふたりでスロー・ダンスを」(1978)「フィスト」(1978)「結婚しない女」(1978)「勝利への脱出」(1980)「ライトスタッフ」(1983)「ベスト・キッド」(1984)「ルーカス・ルーカス」(1985)「死にゆく者への祈り」(1987)「イヤー・オブ・ザ・ガン」(1991)「ブラッド・イン ブラッド・アウト」(1993)「トーマス・クラウン・アフェアー」(1999)等の音楽を担当している。「ライトスタッフ」のスコアで1983年度アカデミー賞の作曲賞を受賞。
(2000年5月)

Bill Conti

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