宮廷料理人ヴァテール VATEL

作曲・指揮:エンニオ・モリコーネ
Composed and Conducted by ENNIO MORRICONE

(仏Virgin / 8493652)

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「キリング・フィールド」「ミッション」「シティ・オブ・ジョイ」「スカーレット・レター」等で知られるイギリスのローランド・ジョフィ監督によるドラマで第53回カンヌ映画祭のオープニングに上映された作品(フランスでの公開は2000年5月)。出演はジェラール・ドパルデュー、ユマ・サーマン、ティム・ロス、ジュリアン・グローヴァー、ジュリアン・サンズ、ティモシー・スポール、ジェローム・プラドン、マリーヌ・デルテルム、マレー・ラクラン・ヤング、ナタリー・セルダ、ニック・ロビンソン、アリエル・ドムバスル、ヒューエル・ベネット、リチャード・グリフィス、ジェームズ・ティエーレ、フィリップ・ルロイ=ボーリュー、ジェフリー・ベイトマン、フェドール・アトキン他。脚本はジャンヌ・ラブリュンとトム・ストッパード。撮影はロベール・フレッスが担当。

ドパルデュー扮する17世紀フランスの宮廷料理人フランソワ・ヴァテール(1631〜1678)が、重要な政治的会合でシャンティイー城を訪れる国王ルイ14世(サンズ)を迎えるため、晩餐会の準備をする過程の3日間を描く。ヴァテールが恋に落ちる国王の愛人アンをサーマンが演じる。

音楽は「ミッション」や「シティ・オブ・ジョイ」でもジョフィ監督と組んだエンニオ・モリコーネで、特に「ミッション」はオーケストラとコーラスの組合わせによる宗教音楽的な荘厳さと美しさを持った素晴らしいスコアだった。

この「宮廷料理人ヴァテール」でも、コーラスを多用した中世バロック音楽調のクラシカルで華麗なスコアを展開している。メインテーマ「Theme de Vatel」は讃美歌的な明るく親しみやすい曲で、全編を通じて何度か登場する。続く「L'amour suspendu」はいかにもモリコーネらしい、しっとりと美しいラブテーマで、最近の彼のスコア中でも特筆すべき出来。「Symphonie avec voix」「Fete et cynisme」での明るいコーラスや、「Kaleidoscope」「Deuxieme symphonie」での軽快で躍動的なオーケストラ・サウンドも秀逸。「Deux courtisanes」「Debut de la fete」「Ouverture de la cour」等はバロック調のオーケストラ音楽だが、やはりこういう曲を書かせると上手い。モリコーネのオリジナル・スコアに混じって、ジャン=フィリップ・ラモー、ジョヴァンニ・パオロ・コロンナやヘンデルの既製曲も含まれているが、全体のトーンは統一されており、違和感はそれほどない。

映画の出来はいま一つのようだが、音楽はいつものモリコーネのクオリティを維持しており、ベテランらしい安定した仕事をしている。
(2000年7月)

Ennio Morricone

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