溺れゆく女 ALICE ET MARTIN

作曲:フィリップ・サルド
Composed by PHILIPPE SARDE

指揮:デヴィッド・スネル
Conducted by DAVID SNELL

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演奏:ロンドン交響楽団
Performed by the London Symphony Orchestra

(仏Travelling / K 1040)


「バロッコ」(1977)「ブロンテ姉妹」(1979)「海辺のホテルにて」(1981)「ランデヴー」(1985)「密会」(1986)「イノセンツ」(1987)「深夜カフェのピエール」(1991)「私の好きな季節」(1992)「野性の葦」(1993)「夜の子供たち」(1996)等のアンドレ・テシネ監督が1998年に監督したドラマ(日本公開は2000年9月)。出演はジュリエット・ビノシュ、アレクシス・ロレ、カルメン・マウラ、マチュー・アマルリック、ジャン=ピエール・ロリ、マルト・ヴィラロンガ、ピエール・マグロン、エリック・クライケンマイヤー、ケヴィン・ゴフェット他。脚本はテシネとジル・トラン、オリヴィエ・アサヤスが担当。撮影はカロリーヌ・シャンプティエ。

南仏の家を飛び出してパリに住む兄のアパルトマンに転がり込んだ20歳の青年マルタン(ロレ)は、そこでアリス(ビノシュ)という美しいバイオリン奏者に出会い、恋に落ちる。2人は深く愛し合い幸せなひとときを過ごすが、アリスが彼女の妊娠を打ち明けると、マルタンは彼の父親を巡る過去のトラウマに襲われる。アリスはマルタンを再生させるため、彼の過去を辿り始める・・。

音楽はテシネ監督と「バロッコ」「ブロンテ姉妹」「海辺のホテルにて」「ランデヴー」等でも組んでいるフィリップ・サルドで、ここでは傑作「ブロンテ姉妹」にも通ずる繊細でドラマティックなオーケストラル・スコアを提供している。特にジョルジュ・アリロルのフルート・ソロとロンドン・シンフォニーの流麗な演奏によるメインテーマ「Alice et Martin」と、エンディングの「Dedicace a Juliette」が実に美しく、いかにもサルドらしい深い色彩を帯びた名曲である。「L'echapee」「Tango Illusion」「Paricide」等ではサスペンス調の複雑なタッチのスコアを展開。「Bain de nuit」等、単に表面的に美しい音楽ではなく、映画のキャラクターの精神面も深く表現しているところがさすがに上手い。

このアルバムのライナーノーツによると、サルドはテシネ監督とのコラボレーションにおいては、映画のシーンに細かくタイミングを合わせたスコアを書くのではなく、作品に対する自分の感性とビジョンを表現した長めの音楽を提供し、監督に自由に映像に付けさせるようにしているらしい。トリュフォーとドルリューのコラボレーションのように、互いに深い信頼関係があればこそできるやり方だと思う。

尚、サルドがテシネ監督と組んだ作品を集めた以下のコンピレーションCDが、フランスのMilanレーベルからリリースされている。

「Philippe Sarde: Musiques originales de films d'Andre Techine」
(仏Milan / CD343)1988

Les innocents
Le lieu du crime
Rendez vous
Hotel des Ameriques
Les soeurs Bronte
Barocco

(2000年9月)

Philippe Sarde

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