十二哩の暗礁の下に
BENEATH THE TWELVE MILE REEF 作曲・指揮:バーナード・ハーマン (米Film Score Monthly / FSM Vol.3 No.10) |
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1953年製作のアメリカ映画。監督はロバート・D・ウェッブ。出演はロバート・ワグナー、テリー・ムーア、ギルバート・ローランド、J・キャロル・ネイシュ、リチャード・ブーン、ピーター・グレイヴス、アンジェラ・クラーク、ハリー・ケリー・Jr、ジェイ・ノヴェロ他。脚本はA・I・ベゼリデス、撮影はエドワード・クロンジャガー(1953年度アカデミー賞の撮影賞にノミネート)。フロリダ沖の海中で海綿を採る二組の漁師一家の確執と、それぞれの一家の息子と娘の恋愛を描いた「ロミオとジュリエット」的なストーリー。「(TV)スパイ大作戦」のジム・フェルプスことピーター・グレイヴスがここでは陰険な悪役を演じている。Foxが「百万長者と結婚する方法」「聖衣」に続いてシネマスコープ方式を採用した映画で、当時としては珍しかった水中撮影が見所となっている。
これはバーナード・ハーマンが作曲した比較的初期のスコアだが、随所にハーマンらしいタッチが見られる傑作である。彼はオーケストラの構成に凝る作曲家だったが、ここではなんと9台のハープを使って海底の雰囲気を描写している。冒頭の「The Sea」はハープによる沸き上がるようなグリッサンドのイントロに続いて壮大でファンタスティックなメインテーマが展開する名曲で、まさに"ヴィンテージ・ハーマン"である。続く「The Undersea/The Boat」や「The Undersea Forest」は、上述したハープによる深海の描写が幻想的。「The Homecoming」ではメインテーマが明るく快活なタッチでリプライズされる。「The Conch Boat/The Harbor」「The Marker」「The Fire」はハーマンがヒッチコック監督作品に書いた音楽に近いサスペンスフルなスコア。「The Lagoon」もハーマンの個性がよく出た深みのあるラブテーマで、ストリングスとハープの音色が美しい名曲。「The Octopus」は深海で巨大なタコが主人公に襲いかかるシーンの音楽だが、重厚で不気味なサウンドはハリーハウゼンのモンスター映画そのもの。映画自体は平凡な出来でむしろB級作品だが、ハーマンはここでも例によって天才的な仕事をしており、彼の音楽によってのみ後世に記憶される映画と言ってもよい。
Foxの名プロデューサーのダリル・F・ザナックはこの映画の試写を見た後、同社の音楽監督だったアルフレッド・ニューマンに以下のような内容のメモを送ってハーマンの音楽を絶賛している:
「これは私が今までに聴いた中で最もオリジナルなスコアで、本当に興奮した。映画全体の質がこの素晴らしいスコアによって大いに高められている。もともと映画にはなかった壮大さを付与し、それでいて邪魔をせず、ドラマ性を加えている」
チャールズ・ゲルハルトがナショナル・フィルハーモニー管弦楽団を指揮した有名なクラシック・フィルムスコア・シリーズのハーマンの作品集にも、以下の3曲から成る「十二哩の暗礁の下に」の組曲が収録されているが、こちらも壮大で華麗な演奏が素晴らしい。
CITIZEN KANE / THE CLASSIC FILM SCORES OF BERNARD
HERRMANN
CHARLES GERHARDT conducting The National Philharmonic Orchestra
(米BMG / 0707-2-RG) 1989
"BENEATH THE TWELVE MILE REEF"
The Sea; The Lagoon (4:41)
Descending (1:51)
The Octpus; Homecoming (4:54)
(2001年3月)
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