愛のエチュード THE LUZHIN DEFENCE

作曲・指揮:アレクサンドル・デスプラ
Composed and Conducted by ALEXANDRE DESPLAT

演奏:ロンドン交響楽団
Performed by the London Symphony Orchestra

(英Silva Screen / FILMCD 345)

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2000年製作のイギリス=フランス合作映画(日本公開は2001年夏)。監督は「アントニア」(1995)「ダロウェイ夫人」(1997)等で知られるオランダ人のマルレーン・ゴリス。出演はジョン・タトゥーロ、エミリー・ワトソン、ジェラルディン・ジェームズ、ステュアート・ウィルソン、クリストファー・トンプソン、ファビオ・サルトル、ピーター・ブライス、オーラ・ブレイディ、マーク・タンディ、ケリー・ハンター、アレクサンダー・ハンティング他。ウラジミール・ナボコフの原作を基にピーター・ベリーが脚本を執筆。撮影はベルナール・リュティック。1929年のイタリアを舞台に、チェスの世界トーナメントに出場するためにやって来た天才的なチェスプレイヤーと、偶然その場所を訪れていた上流階級の令嬢との恋愛を描くラブストーリー(映画自体のレビューは「Quick! Film Review」をご参照)。

フランスの若手作曲家アレクサンドル・デスプラによる音楽は、抑制されたタッチの繊細で美しいドラマティック・アンダースコアで、映画の題材、舞台、時代背景等によくマッチしており、劇中では非常に効果的だった。「The Luzhin Defence」はピアノによる悲劇性を感じさせる主題にオーケストラが加わる上品なメインタイトル。「Love Theme from the Luzhin Defence」はしっとりとしたラブテーマで、ジョルジュ・ドルリューの作風に近い。「The Arrival」は軽快なストリングスとピアノが小気味よいクラシカルなタッチの音楽。「Memories of Russia」は主人公がロシアでの少年時代を回想するシーンの音楽で、メインテーマのサスペンスフルなバリエーション。悪役のヴァレンティノフを描いた「Valentinov」もダークなタッチ。主人公の2人がダンスを踊るシーンで、ディミトリ・ショスタコヴィッチ作曲の「ジャズ組曲第二番」「ワルツ第二番」(Walz No.2 from Jazz Suite No.2)が効果的に使われている。映画の中ではリッカルド・シャイイー指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏が使用されていたと思うが、このCDではおそらく権利上の関係で、ポール・ベイトマン指揮プラハ市フィルハーモニー管弦楽団(Silva Screenレーベルの映画音楽コンピレーションCDの常連)の演奏が収録されている(なんかちょっと軽い)。

デスプラは非常に上品で洗練されたスコアを書く作曲家だが、地味で小粒な作品が多く、ドルリューやサルドのような明確な個性がまだ感じられない。今後の活躍に期待したい。
(2001年4月)

Alexandre Desplat

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