タワーリング・インフェルノ THE TOWERING INFERNO

作曲・指揮:ジョン・ウィリアムス
Composed and Conducted by JOHN WILLIAMS

(米Film Score Monthly / FSM Vol.4 No.3)


TVシリーズのプロデューサーだったアーウィン・アレンが1974年に製作した大作で、当時流行した“パニック映画”(Disaster Movie)の代表的作品。ワーナー・ブラザースが映画化権を購入したリチャード・マーティン・スターンの原作『そびえたつ地獄(The Tower)』と、20世紀フォックスがその2ヶ月後に購入したトーマス・N・スコーシアフランク・M・ロビンソンによる原作『タワーリングインフェルノ(The Glass Inferno)』が、両方とも高層ビルの火災を題材にしていたため、両社が企画を持ち寄って1本の映画を共同製作することにしたもの(製作費折半、収入も折半)。映画製作費が高騰した現在ではメジャースタジオによる合作は珍しくないが、当時としては画期的なことで、映画のパブリシティも「あまりにも巨大な映画のため2大スタジオが結集した」というような宣伝のされ方をした。

監督は「ブルー・マックス」(1966)「レマゲン鉄橋」(1968)「ハイジャック」(1972)「キングコング」(1976)「ナイル殺人事件」(1978)等ジョン・ギラーミン。出演はスティーヴ・マックィーン、ポール・ニューマン、ウィリアム・ホールデン、フェイ・ダナウェイ、フレッド・アステア、O・J・シンプソン、リチャード・チェンバレン、スーザン・ブレイクリー、ロバート・ヴォーン、ロバート・ワグナー、ジェニファー・ジョーンズ、スーザン・フラナリー、グレゴリー・シエラ、ダブニー・コールマン他のオールスター・キャスト。脚本はスターリング・シリファント、撮影はフレッド・コーネカンプとジョセフ・バイロック、特撮はL・B・アボットが担当。サンフランシスコにそびえ立つ地上135階の超高層ビル“グラス・タワー”。市長や上院議員も招いた盛大な落成パーティの当日、手抜き工事が原因で発生した小さな火災が、あっという間にビル全体を飲み込み、最上階のパーティ会場に閉じ込められた人々を襲う。この映画は、1974年度アカデミー賞の作品賞、助演男優賞(アステア)、撮影賞、作曲賞、歌曲賞、美術・装置賞、音響賞、編集賞にノミネートされ、撮影、歌曲、編集の3部門を受賞した。当初、ビル設計者の役をオファーされていたスティーヴ・マックイーンは、消防隊長(アーネスト・ボーグナインが演じるはずだった)の役への変更を希望し、その後ポール・ニューマンがビル設計者にキャストされた際に、自分とニューマンのセリフの数を同一にするように主張したという。この2大スターのどちらがトップビリングか、ということを曖昧にするためにポスター等ではマックイーンが左下、ニューマンが右上にクレジットされ、両者は100万ドルの出演料の上に映画の配給収入の7.5%の報酬を獲得した(いわゆるグロス・パーティシペーション契約)。

音楽はアーウィン・アレン製作のTVシリーズ「宇宙家族ロビンソン」等のテーマ曲や、アレンの前作で“パニック映画”ブームの火付け役となった「ポセイドン・アドベンチャー」のスコアも担当したジョン・ウィリアムス。この「タワーリング・インフェルノ」の音楽は、その後のウィリアムスの大作映画におけるオーケストラルスコアの原点となる傑作である。映画の冒頭、ポール・ニューマンの乗ったヘリコプターがシスコの街を飛行するタイトルバックに流れるダイナミックな「Main Title」が何といっても素晴らしく、映画のスケール感とドラマ性を一気に決定付けている。映画全体はこのメインタイトルの主題と、ポール・ニューマン=フェイ・ダナウェイ、フレッド・アステア=ジェニファー・ジョーンズの2組のカップルを描いた各々のラブテーマを中心に構成されている。ニューマン=ダナウェイのラブテーマは「Something for Susan」でエレクトリックピアノのジャジーなタッチにより演奏されるが、こういった曲には依然としてヘンリー・マンシーニの影響を感じる。アステア=ジョーンズのラブテーマは「Lisolette and Harlee」で当初軽いソース音楽風に演奏される。これらの主題は、ドラマがクライマックスに近づくにつれ、劇伴音楽に組み込まれてオーケストラによるドラマティックな演奏に発展していく。「We May Never Love Like This Again」はアル・カシャとジョエル・ハーシュホーン作詞作曲によるこの映画の主題歌(上述の通りアカデミー賞受賞)で、モーリーン・マクガヴァーンがパーティ会場での歌手の役で実際に画面に登場して唄っている。この曲は劇中ではロバート・ワグナー=スーザン・フラナリーのカップルのラブテーマとしても機能しており、特にこの2人が逢い引きの直後に炎に巻き込まれて壮絶な最期を遂げる場面の「Trapped Lovers」ではブラスとストリングスにより非常にエモーショナルに演奏される。ウィリアムスは、この曲や「The First Victim」「Helicopter Rescue」等で火災によるパニックを描いたダイナミックはアンダースコアを展開しているが、クライマックスの消火シーンに至る「Planting the Charges」では9分に及ぶサスペンス音楽で徐々に緊張感を盛り上げている。エンドクレジットに流れるドラマティックな「An Architect's Dream」も素晴らしい。

このCDは、かつてワーナーから出ていたサントラLPよりも大幅に曲数が増えたほぼ完全なスコアを収録しており、ボーナストラックには「We May Never Love Like This Again」のLPアルバムバージョン等も含まれている。興味深いのは、「ポセイドン・アドベンチャー」の主題歌「The Morning After」(作詞作曲は同じくA・カシャとJ・ハーシュホーン)のインストゥルメンタルバージョンがボーナストラックに入っていることだが、この曲は実際に「タワーリング・インフェルノ」のパーティのシーンでもソース音楽として流れていたらしい。このスコアはジョン・ウィリアムスのキャリア中でも重要なポイントにある作品と言えるだろう。

(2001年4月)

= 2018年10月追記 =

ところで、ここからは音楽とは全く無関係な余談になるが、日本語吹替洋画ファンとしては、この映画の吹替版は豪華な声優キャストの共演が楽しめる傑作でもある。しかもこれには以下の4つのバージョンがある。

<フジテレビ版>

マックイーン(宮部昭夫)、ニューマン(川合伸旺)、ホールデン(近藤洋介)、ダナウェイ(平井道子)、アステア(中村 正)、ヴォーン(小林恭治)、ワグナー(城 達也)、チェンバレン(野沢那智)、シンプソン(小川真司)、他

<日本テレビ版>

マックイーン(宮部昭夫)、ニューマン(井上孝雄)、ホールデン(近藤洋介)、ダナウェイ(田島令子)、アステア(中村 正)、ヴォーン(矢島正明)、ワグナー(城 達也)、チェンバレン(石丸博也)、シンプソン(麦人)、他

<TBS版>

マックイーン(内海賢二)、ニューマン(堀 勝之佑)、ホールデン(小林 修)、ダナウェイ(池田昌子)、アステア(中村 正)、ヴォーン(安原義人)、ワグナー(谷口 節)、チェンバレン(中尾隆聖)、シンプソン(千田光男)、他

<BSジャパン版>

マックイーン(小山力也)、ニューマン(てらそままさき)、ホールデン(佐々木勝彦)、ダナウェイ(山像かおり)、アステア(岩崎ひろし)、ヴォーン(森田順平)、ワグナー(木下浩之)、チェンバレン(横堀悦夫)、シンプソン(藤真秀)、他

フジテレビ版と日本テレビ版の吹替音声は2017年6月にワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメントがリリースしたブルーレイに収録されている。

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John Williams

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