離愁  LE TRAIN: PHILIPPE SARDE / PIERRE GRANIER-DEFERRE

作曲:フィリップ・サルド
Composed by PHILIPPE SARDE

指揮:カルロ・サヴィーナ
Conducted by CARLO SAVINA (Le train)

演奏:サンタ・チェチリーア管弦楽団
Performed by Orchestre Santa Cecilia (Le train)

(仏Universal EmArcy / 013 542-2)

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<収録曲>

1. 離愁  Le train (9曲)
2. (未公開)Le chat (3曲)
3. 帰らざる夜明け  La veuve couderc (1曲)
4. (未公開)Le fils (2曲)
5. 個人生活  La race des seigneurs (3曲)
6. (未公開)L'etoile du nord (2曲)

 

ピエール・グラニエ=ドフェール監督(1927/7/22生)とフィリップ・サルドとのコラボレーション作品を集めたコンピレーション。かなり前にフランスのGeneral Musicレーベルから「PHILIPPE SARDE / SIMENON / GRANIER-DEFERRE」というタイトルで同様のコンピレーションLPが出ており、これには「離愁」から6曲、「Le chat」から1曲、「帰らざる夜明け」から3曲、「L'etoile du nord」から5曲が収録されていた。今回のCDは「帰らざる夜明け」と「L'etoile du nord」の曲数が減っているが、「離愁」「Le chat」は増え、更に「Le fils」から2曲、「個人生活」から3曲が追加されている。特にサルドのベストスコアの1つである「離愁」は9曲全曲が収録されており、ファンにとっては待望のリリースといえる。

ピエール・グラニエ=ドフェールは、サルドが音楽を担当した「すぎ去りし日の…」を見てそのスコアに感銘を受け、監督のクロード・ソーテに電話してサルドを紹介してもらったという。グラニエ=ドフェールはソーテから「彼はすごく若いよ」と予め言われていたが、実際に会ってみてあまりにも若いのに驚いたらしい(サルドは当時23歳だった)。彼らが最初に組んだ作品は、ここにも収録されている「Le chat」という映画だが、録音スタジオでミュージシャンたちを統率するサルドを見て、グラニエ=ドフェールは自分の作曲家を見つけたと感じたという。

1. 離愁  Le train

1973年製作のフランス=イタリア合作映画(日本公開は1975年)。英語題名は「Last Train」。「メグレ警視シリーズ」等で知られるフランスの作家ジョルジュ・シムノンの原作を基にグラニエ=ドフェールとパスカル・ジャルダンが脚本を執筆。出演はジャン=ルイ・トランティニアン、ロミー・シュナイダー、モーリス・ビロー、アンヌ・ヴィアゼムスキー他。撮影はワルター・ウォティッツ。第二次大戦中、ナチスドイツ占領下のフランスを舞台に、他国へと逃亡を図るユダヤ人たちが乗った貨物列車内での行きずりの男女(トランティニアンとシュナイダー)の束の間の愛情を描くドラマ。サルドはこの映画のために脚本だけをベースにして全ての音楽を作曲した。この短い9楽章からなる交響組曲は、従って撮影が始まる前に完成しており、監督のグラニエ=ドフェールはサルドの音楽の雰囲気、リズム、テンポをベースに演出したという。このスコアでは、何といっても3曲目の「Anna」という曲がこの上なく美しい。ここまで切なく情感豊かな音楽はあまりないだろう。この主題のバリエーションは「La guerre」「Julien」でもドラマティックに展開する。冒頭の「L'attaque」「L'exode」は激しく緊迫したサスペンス音楽。「Le train」「La traversee」も不吉なタッチで緊張感を盛り上げる。短くコンパクトにまとまったスコアだが、極めてエモーショナルで感動的な音楽である。こういう映画音楽は最近なかなか聴くことができない。

2. (未公開)Le chat

1971年製作。出演はジャン・ギャバン、シモーヌ・シニョレ、ハリー=マックス、ジャック・リスパル、イヴ・バルザック、レナート・ビルゴ他。ジョルジュ・シムノンの原作をアニー・コーディ、パスカル・ジャルダンとグラニエ=ドフェールが脚色。撮影はワルター・ウォティッツ。もうすぐ取り壊される予定の小さな家に暮らす印刷工だった夫ジュリアン(ギャバン)と、サーカスの団員だった妻クレマンス(シニョレ)、そして夫が妻よりも愛情を注ぐ一匹の猫グルフィエを描いたドラマ。ここではサルドのスコアが3曲収録されているが、「Le chat」はピアノのソロ、「Final」はピアノとオーケストラによるしっとりとした美しい音楽(ピアノ・ソロはサルド自身。オーケストラの指揮はジャン=ミシェル・ドゥファイエ)。「Le temps des souvenirs」はジャン・サビヨンの唄う明るいシャンソン。

3. 帰らざる夜明け  La veuve couderc

1971年製作(日本公開は1972年)。出演はアラン・ドロン、シモーヌ・シニョレ、オッタヴィア・ピッコロ他。ジョルジュ・シムノンの原作をパスカル・ジャルダンとグラニエ=ドフェールが脚色。撮影はワルター・ウォティッツ。フランスの片田舎に流れて来た犯罪者のジャン(ドロン)が、とある農家の未亡人の家に身を寄せ、彼女と次第に深い関係に陥っていく・・。音楽は5分半ほどの長さの組曲が収録されているが、切なく美しい主題がいかにもサルドらしい。上記「離愁」と並ぶ名曲。オーケストラの指揮はジャン=ミシェル・ドゥファイエ

4. (未公開)Le fils

1972年製作。出演はイヴ・モンタン、マルセル・ボズッフィ、レア・マッサリ、フレデリック・ド・パスカル、ジェルメーヌ・デルバット他。脚本はアンリ・グラジアニとグラニエ=ドフェール。撮影はフィリップ・ブリュンが担当。サルドの音楽はギターによるストイックなタッチのスコア。

5. 個人生活  La race des seigneurs

1974年製作。出演はアラン・ドロン、シドニー・ローム、クロード・リッシュ、ジャンヌ・モロー他。脚本はパスカル・ジャルダンとグラニエ=ドフェール。撮影はワルター・ウォティッツ。妻子ある若手政治家(ドロン)とファッションモデル(ローム)との不倫の恋を描くメロドラマ。サルドの音楽はステファン・グラッペリのヴァイオリン、エメ・バレッリのトランペット、モーリス・ヴァンデールのピアノをフィーチャーした都会的で洒落たジャズ。

6. (未公開)L'etoile du nord

1982年製作。出演はシモーヌ・シニョレ、フィリップ・ノワレ、ファニー・コトンソン、ジュリー・ジェゼケル、ジャン・ルージェリ、ジャン=ピエール・クライン他。これもジョルジュ・シムノンの原作を基にしており、ジャン・オーランシュ、ミシェル・グリソリアとグラニエ=ドフェールが脚本を執筆。撮影はピエール=ウィリアム・グレン。裕福な実業家を殺害した男(ノワレ)と、その愛人(コトンソン)、彼女の母親(シニョレ)の関係を描くドラマ。サルド作曲の「Louise」はマルセル・アゾッラのアコーディオンとピアノによるジェントルで美しい主題。「L'etoile du nord」はアコーディオンとトランペットによる明るく快活なワルツ。

ピエール・グラニエ=ドフェール監督によるその他の作品には、「帰ってきたギャング」(1966)「未青年」(1967)「(未公開)麻薬(ヤク)」(1969)「(未公開)ジャン・ギャバン/ドン」(1970)「(未公開)さよなら警察官」(1975)「限りなく愛に燃えて」(1976)「(未公開)未知の戦場/ヨーロッパ198X」(1980)「(未公開)パリの女教師/追いつめられて」(1986)「(未公開)誰かが知っている」(1988)等がある。
(2001年6月)

Philippe Sarde

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