レッド・サン SOLEIL ROUGE

作曲・指揮:モーリス・ジャール
Composed and Conducted by MAURICE JARRE

(仏Universal EmArcy / 014 114-2)

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1971年製作のフランス=イタリア=スペイン合作映画。監督は007シリーズの「ドクター・ノオ」(1962)「ロシアより愛をこめて」(1963)「サンダーボール作戦」(1965)や、「トリプルクロス」(1966)「暗くなるまで待って」(1967)「夜の訪問者」(1970)「バラキ」(1972)等で知られる職人テレンス・ヤング。出演はチャールズ・ブロンソン、アラン・ドロン、三船敏郎、ウルスラ・アンドレス、キャプシーヌ、中村 哲、他。脚本はレアード・コーニッグとウィリアム・ロバーツ、撮影はアンリ・アルカンが担当。日米修好のために日本から合衆国大統領へ贈られた宝剣が、列車強盗団によって奪われた・・。ブロンソン、ドロン、三船という米・仏・日のスター俳優が盗まれた日本刀をめぐって争奪戦を繰り広げるという、なんとも突飛なアイデアの西部劇だが、いかにもテレンス・ヤングの撮りそうな娯楽映画である(「アマゾネス」(1973)みたいなキワモノ映画も撮る人なので……)。

音楽を担当したフランス人のモーリス・ジャールは、この作品以外にも「プロフェッショナル」(1966)「戦うパンチョ・ビラ」(1968)「エル・コンドル」(1970)「ロイビーン」(1972)といった西部劇の音楽を手がけているが、いずれもトラディッショナルなアメリカン・ウエスタン音楽とはかなり印象の異なる独自の作風を展開している。この「レッド・サン」でも、異なる3つの文化が混在するストーリーの設定を表現するために、オンド・マルトノ、琴、ダルシマー(ハンガリーの弦楽器)等といった特殊な楽器とオーケストラを組み合わせた、実に不思議な民族色を感じさせるスコアを作曲している(彼はコンセルヴァトワールで民族音楽を専攻していた)。

冒頭の「Soleil rouge」でのメインテーマは、アコーディオンとオーケストラをバックにオンド・マルトノで演奏されるエキゾチックなタッチの主題がいかにもジャールらしい。とても西部劇音楽とは思えないメロディだが、そもそも映画自体が普通のウエスタンではないので、絶妙のはまり方をしていると思う。この印象的なテーマは「Vers la montagne」「Just testing」「Pousuite」等でも繰り返される。「Commanches」は短いフレーズの積み重ねによりサスペンスを盛り上げていく音楽。「Les roseaux en feu」はパーカッシヴで暴力的なアクションスコア。「Le sabre」では琴をフィーチャーし、日本的なタッチを表現している(ジャールは後にジェームズ・クラヴェル原作の「将軍」の音楽も手がけている)。

このスコアは、以前に日本のSLCレーベルより同じ内容のサントラCDが出ていたが、ステレオでのCD化は今回のフランスのユニヴァーサルからのリリースが初めてである。
(2001年6月)

Maurice Jarre

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