ラムの大通り BOULEVARD DU RHUM
作曲・指揮:フランソワ・ド・ルーベ
Composed and Conducted by FRANCOIS DE ROUBAIX
(仏Universal EmArcy / 013 474-2)
「冒険者たち」(1967)「オー!」(1968)「追想」(1975)「夏に抱かれて」(1987)等のロベール・アンリコが1971年に監督したフランス映画。出演はリノ・ヴァンチュラ、ブリジット・バルドー、ビル・トラヴァース、クライヴ・レヴィル他。ジャック・ペシュラルの原作を基にピエール・ペルグリとアンリコが脚本を執筆。撮影はジャン・ボフェティ。1920年代の禁酒法時代、ラム酒密輸のメッカとして“ラムの大通り”と呼ばれるカリブ海を舞台に、とある映画を見てその主演女優リンダ・ラルー(バルドー)に一目惚れした密輸船の船長コーネリアス(ヴァンチュラ)を描くコメディ。映画のクライマックスでフィルムが燃えてしまったため、彼は映画の結末を見ようと映画館を探してカリブの島を駆けめぐるが、やがて偶然にも本物のリンダと巡り会う・・。アンリコはこの映画の主役にロバート・ミッチャムをキャストしたかったらしいが、それが実現せずとてもがっかりしたという。ヴァンチュラはいい役者で親友でもあるが、このストーリーにはふさわしくないと考えていたらしい。
音楽は「冒険者たち」「オー!」「追想」等でもアンリコ監督と組んでいるフランソワ・ド・ルーベ。「Chant des rumrunners / Generique」はバンジョーとコーラスをフィーチャーした軽快で快活なタッチから、一転して静かにバンジョーがメインテーマを奏でる。この親しみやすい主題は「Linda et Cornelius」でも登場する。「Sur le boulevard du rhum」はブリジット・バルドーの歌う主題歌。「Bataille navale」が全体のハイライトで、ド・ルーベにしては珍しい大編成オーケストラによる海戦シーンのアンダースコア。ダイナミックなブラスの響きと砲撃等の効果音(楽器の一部としてインテグレートされている)が印象的。「La posada / Gramophone rumba」での陽気なルンバ、「Ragtime du ver solitaire」でのバンジョーによるラグタイム、「Tango del patio」でのピアノによるタンゴ等もいかにもこの作曲家らしい。「Au cinema muet」「Prohibition rag」等のコミカルなタッチも良い。「Plaisir d'amour」は有名なシャンソン。ド・ルーベの天才的な独創性とシャープな音楽性が堪能できる傑作である。
フランソワ・ド・ルーベの映画音楽は、彼の作品を集めた数枚のコンピレーションCDでも聴くことができるが、1枚もののサントラアルバムが極端に少ない作曲家で、今回フランスのユニヴァーサルからリリースされたこのCD(ボーナストラック3曲を含んだ全18曲の完全盤)はファンとしては非常に貴重である(海賊盤のCDが過去に出ていた)。同じくユニヴァーサルからド・ルーベ作曲の「(未公開)L'homme
orchestre」もリリースされている(仏Universal EmArcy / 013 473-2)。
(2001年6月)
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