カンバセーション…盗聴…   THE CONVERSATION

作曲・演奏(ピアノ・ソロ):デヴィッド・シャイア
Composed and Performed by DAVID SHIRE

(米Intrada / Intrada Special Collection Volume 2)


フランシス・フォード・コッポラが1974年に製作・監督・脚本を手がけた社会派サスペンスで、同年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドール(グランプリ)を受賞した作品。出演はジーン・ハックマン、ジョン・カザール、アレン・ガーフィールド、ハリソン・フォード、テリー・ガー、ロバート・デュヴァル、フレデリック・フォレスト、シンディ・ウィリアムズ、マイケル・ヒギンズ、エリザベス・マクレー、マーク・ホイーラー、ロバート・シールズ、フィービー・アレキサンダー他。撮影はビル・バトラー。盗聴のプロ、ハリー・コール(ハックマン)は、自分が盗聴を依頼されて会話を録音した人物が殺害されたことで良心の呵責に苦しみ、やがて“自分も盗聴されている”という脅迫観念に陥っていく・・。1974年度アカデミー賞の作品賞、脚本賞、音響賞にノミネートされている。

この映画はコッポラが「ゴッドファーザー」の成功で得た名声により製作することができた極めてパーソナルな作品で、音楽を担当したデヴィッド・シャイアに対しても、“ハリウッド的”な大掛かりなオーケストラ音楽ではなく、非常にシンプルでインティメートなスコアを要求したという。また、このスコアは実際の撮影が始まる前に作曲されたという点でも、アメリカ映画としてはユニークである。コッポラから脚本を読まされたシャイアは、映画の特定のシーンには関係なく、主人公のハリーを描写した10曲の短いピアノ曲を作曲するように要請された。シャイアの作曲したピアノ曲を聴いたコッポラは、その中から最も自分の持つ主人公のイメージに近い曲を指定し、その曲をベースに全体を展開していくように指示したという。

このサントラCDに収録された曲も基本的にシャイア自身の演奏によるピアノ・ソロによる音楽で、メインテーマの「Theme from The Conversation」は主人公の孤独感を絶妙に表現したクールなジャズになっている。この主題は「The End of the Day」「To the Office / The Elevator」でも登場する。「No More Questions / Phoning the Director」「The Confessional」「Plumbing Problem」「The Girl in the Limo」等は非常に不安定なタッチで閉塞感や不信感を感じさせる。ヒロインのエイミー(テリー・ガー)のテーマ「Amy's Theme」も実にクールで乾いたタッチ。「Blues for Harry」「Harry Carried」はジャズ・コンボになっており、主人公のハリーがジャズを聞きながらそれに併せてサックスを演奏するシーンの音楽(主演のハックマンはこの映画のためにサックスのトレーニングを受けた)。最後に収録されている「Theme from The Conversation (Ensemble)」は、メインテーマのジャズ・アンサンブル・バージョンで映画では未使用のトラック。こういうアンサンブルの曲は何故かかえって平凡に聞こえる。因みに、ジャズ・コンボに参加しているミュージシャンは、ドン・メンザ(テナー・サックス)、コンテ・コンドーリ(トランペット)、ピート・ジョリー(ピアノ)、レイ・ブラウン(ベース)、シェリー・マン(ドラムス)、ジャック・ニミッツ(バリトン・サックス)というメンバーである。余談だがデヴィッド・シャイアは、当時コッポラの妹で女優のタリア・シャイアと結婚しており、コッポラの義理の弟という立場だった。

この作品は公開当時にサントラ盤が発売されておらず、アルバム化の要望が非常に多かったスコアだが、アメリカのサントラ専門レーベルIntradaが、2001年にコレクター向けにCD化してリリースしたもの。
(2001年8月)

David Shire

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