デンジャー・ポイント PUPPET ON A CHAIN
作曲:ピエロ・ピッチオーニ
Composed by PIERO PICCIONI
指揮:ハリー・ラビノウィッツ
Conducted by HARRY RABINOWITZ
演奏:ロンドン・シンフォニア
Performed by the London Sinfonia
(英DC Recordings / DC39CD) 2001
「ナバロンの要塞」「ナバロンの嵐」「荒鷲の要塞」等で知られるイギリスの冒険小説作家アリステア・マクリーンの原作「麻薬運河」を映画化した1970年製作のイギリス映画(日本公開は1972年)。監督は「(未公開)地獄のキャラバン隊」(1974)「(未公開)レクイエム」(1988)「(未公開)デッドショット」(1996)等のジェフリー・ジェームズ・リーヴ。主演はスウェーデンの俳優スヴェン=バーティル・タウベで、彼は「きんぽうげ」(1970)「潮風のささやき」(1975)等にも出ているが、「鷲は舞い降りた」(1977)での歴戦のベテランドイツ軍人役がなかなかカッコ良かった。共演はバーバラ・パーキンス、アレクサンダー・ノックス、パトリック・アレン、ヴラデク・シェイバル、アニア・マーソン、ペニー・カスダーリ、ピーター・ハッチンス、ドリュー・ヘンリー、ヘンニ・オルリ、ステュワート・レイン、マーク・マリッツ、マイケル・メリンジャー他。脚本は原作者のマクリーン自身とドン・シャープ、ポール・ホイーラーが担当。撮影は名手ジャック・ヒルデヤード。オランダのアムステルダムを舞台に、国際的な麻薬組織を追うインターポール捜査官ポール・シャーマン(タウベ)の活躍を描く。マクリーンが自ら脚本を書いている割にはあまり緊張感のない作品だが、クライマックスの運河で繰り広げられるスピードボートのチェイスシーンが迫力あり。この部分の演出はハマー・フィルム製作の「海賊船悪魔号」(1964)「白夜の陰獣」(1966)等クリストファー・リー主演のB級ホラー映画や、同じマクリーンの原作「Bear Island」を映画化した「オーロラ殺人事件」(1979)等を監督したドン・シャープが担当している(この映画の脚本にも参加している)。運河を舞台にしたボート・チェイスはこれ以降にも007映画等であったと思うが、今から30年以上も前の1970年当時の観客にはかなり新鮮な驚きだったに違いない。やはり最初にやった人が偉いのである。
イギリス映画だが、音楽は何故かイタリアのベテラン、ピエロ・ピッチオーニが担当している。「Puppet on a Chain (Main Title)」はブラスの咆哮からハモンドオルガンをバックにフィーチャーしたロック調のメインテーマへと展開。なかなか快調だが、やはり少し時代を感じさせる。同じ70年代のラロ・シフリンやロイ・バッドのアクション音楽と比べると、ピッチオーニのスコアはやや粗削りで泥臭さがあるところが面白い。「Drug Dealers」「Drugs Hypnosis」「Obsession」等はオーケストラの不協和音をベースにしたサスペンス音楽。「Psychedelic Mood」「Narcotics Bureau」「Escape」「The Search」等はやはりロック調のサスペンス・アクション音楽だが、基本的に同じフレーズの繰り返しなのでやや単調に感じる。一部マカロニウエスタン風に聞こえる曲があったりして楽しい。「Troubles in the Big City」「Chase」「Fear」等はジャズ・ベースのアクションスコア。「Love Theme」はオーケストラによるドラマティックなラブテーマだが、音質が悪いせいかあまり表情がはっきりしないのが残念。ラストの「Puppet on a Chain (Finale)」はメインタイトルのリプライズ。
この映画のサントラ盤がリリースされるのはこれが初めてだが、ピッチオーニが70年代のイギリス映画に作曲したアクション音楽というのは、ファンとしてはかなり貴重だと思う。やはり音質がいまひとつ良くないのが惜しい。ロンドンのシェパートン・スタジオで録音しているせいか、イギリスの作曲家ハリー・ラビノウィッツがロンドン・シンフォニアを指揮しているが、中身は完全にピッチオーニ節で、見事にイタリア映画のサントラの音になっているところが面白い。
(2001年10月)
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