エニグマ ENIGMA

作曲・指揮:ジョン・バリー
Composed and Counducted by JOHN BARRY

演奏:アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
Performed by the Memebers of the Royal Concertgebouw Orchestra

(英Decca / 467 864-2)

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2001年製作のイギリス映画。監督は「愛は霧のかなたに」「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ」等のマイケル・アプテッド。出演はダグレイ・スコット、ケイト・ウインスレット、ジェレミー・ノーザム、サフロン・バロウズ、ニコライ・コスター=ウォルドー、トム・ホランダー、コリン・レッドグレイヴ、マシュー・マクファーデン、ロバート・ピュー、ドナルド・サンプター、リチャード・リーフ、イアン・フェルス、エドワード・ハードウィック他。ロバート・ハリスの原作を基にトム・ストッパードが脚本を執筆。撮影はシーマス・マクガーヴェイ。第二次大戦中のヨーロッパを舞台に、ドイツ軍の暗号“エニグマ”の解読を命じられたイギリス軍の暗号解読専門家(スコット)を描くスリラーだが、このイギリス軍による“エニグマ”の解読成功は第二次大戦での連合軍の勝利に多大な貢献をしたと考えられている。少し前に製作されたアメリカ映画「U-571」では、アメリカ軍が“エニグマ”暗号器をドイツ軍のUボートから奪還したというストーリーになっており、「アメリカ人は歴史上の事実をねじ曲げて自分たちの手柄にしようとしている」とイギリス国民の怒りを買っていた。

音楽はイギリスのベテラン、ジョン・バリー。全体にこの作曲家の個性が強く現れた、ゆったりとしたテンポの非常にリッチなアンダースコアとなっている。「Main Title」は正に“バリー節”のダークなタッチの主題で、諜報活動がテーマの映画のせいか、少しジェームズ・ボンド風なのが面白い。「Police Chase」もバリーらしい重厚な追跡シーンのスコアだが、こういう劇伴のアクションスコアにも明確に個性が現われているところはさすがである。「The Quarry」はピアノによるロマンティックな主題で、この曲は「Main Title」の冒頭や、「Is That What Happened?」「Tom Goes to Cottage」等、全体を通して登場し、最後の方の「London 1946」と、エンドクレジット「End Credits」でオーケストラにより情感豊かに演奏される。これもバリーらしい美しくジェントルな主題(スコットとウインスレットのロマンスを表現している)で、スコア全体にロマンティックなタッチを加えている。この主題以外は、「Wigram Arrives」「The Convoy」「Trip to Beaumanor」等、一貫して暗くミステリアスなトーンのスコアとなっている。

映画の撮影がオランダで行われたこともあり、このスコアはクラシック音楽界では有名なアムステルダムのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏により録音されているが、この名門オーケストラが映画音楽の録音を手がけるのはこれが初めてらしい。このスコアに関するジョン・バリーへのインタビューでは、「クラシック音楽の演奏家にありがちな“たかが映画音楽”という態度が全くなく、極めて真剣に取り組んでくれた。機会があればまた是非一緒に仕事をしたい」と語っている。ジョン・バリーは1959年のデビュー以来40年以上にわたって映画音楽の作曲を手がけているベテランだが、上記インタビューでは「あまりたくさんの映画を手がけたいとは思わない。1年に1本素晴らしい映画の仕事ができればそれで満足だ」とも語っている。
(2001年11月)

John Barry

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