オーメン2/ダミアン DAMIEN: OMEN II
「オーメン」シリーズの第2作(1978年製作)。監督は「新・猿の惑星」(1971)「トム・ソーヤーの冒険」(1973)「ドクター・モローの島」(1977)「ファイナル・カウントダウン」(1980)等のドン・テイラー(当初はマイク・ホッジスだったが撮影開始後すぐに降板)。出演はウィリアム・ホールデン、リー・グラント、ジョナサン・スコット・テイラー、リュー・エアーズ、シルヴィア・シドニー、ロバート・フォックスワース、レオ・マッカーン、ニコラス・プライアー、ランス・ヘンリクセン、エリザベス・シェパード他。プロデューサーでもあるハーヴェイ・バーンハードの原案を基にスタンリー・マンとマイク・ホッジスが脚本を執筆。撮影はビル・バトラー。13歳に成長し叔父夫婦(ホールデン、グラント)に引きとられていたダミアン(スコット・テイラー)は陸軍学校に入学するが、またしても彼の周囲で秘密をかぎつけた人間が次々と奇怪な死を遂げていく・・。
音楽は前作でアカデミー音楽賞を授賞したジェリー・ゴールドスミスが引き続いて担当している。この映画のスコアには公開当時PolyGramレーベルからサントラLPが出ており、これと同じ内容のCDが1988年にイギリスのSilva Screenレーベルからリリースされていた(Silva Screen / FILMCD 002)。これらのアルバムに収録されていた録音は、実際に映画で使われたサウンドトラック音源ではなく、別途ロンドンのナショナル・フィルの演奏により再録音されたものだった。映画で流れた音楽はロサンゼルスのフォックスのスタジオでライオネル・ニューマンの指揮により録音されたものだが、当時のアメリカの組合の規程では、組合所属の演奏家による音源を使ってサントラ盤を製作する場合、録音の際にこれら演奏家に支払った報酬と同額の使用料(いわゆるRe-use Fee)を再度支払わなければならないことになっており、これを支払うくらいなら海外に行って別の演奏家で全部録音し直した方が全体のコストが安くつく、という異常な状況をもたらしていた(現在ではこのRe-use Feeは大幅に減額されている)。このように別のオーケストラでアルバム用に再録音する機会を与えられた作曲家は、大抵の場合オリジナルスコアをそのまま演奏するのではなく、一部アレンジし直して少しでもスコアの出来を改善しようとするので、結果としてサントラ盤に収録された音楽と実際に映画で流れた音楽は少し異なるケースが多かった(ジョン・ウィリアムスの「フューリー」「ドラキュラ」も同様の理由でロンドン交響楽団によりアルバム用に再録音されている)。この「オーメン2」のサウンドトラック音源は永らく紛失したと考えられていたが、2001年9月にフォックスで発見されたため、今回Varese Sarabandeレーベルからリリースされたこの「The Deluxe Edition」のCDには、サウンドトラック音源とアルバム用の再録音の両方が収録されている。
ここでのジェリー・ゴールドスミスの音楽は、前作の「アヴェ・サターニ」の主題を引用しつつ、これを更にパワーアップしてストレートに恐怖を表現した傑作スコアとなっている。冒頭の「Main Title」は前作同様コーラスとオーケストラによる悪魔音楽だが、よりバイオレントでパワフルなタッチになっており、恐怖そのもの。「Runaway Train」は突然動き出した列車により犠牲者の一人が轢断されるシーンの音楽で、単調なリズムから徐々にサスペンスを盛り上げて行く。「Broken Ice」は凍りついた湖に沈んだ犠牲者が氷の下を流されて行くシーンの音楽で、冒頭のカエルを押し潰したような男声が不気味。「Fallen Temple」は「アヴェ・サターニ」の主題をコーラスとフルオーケストラによりパワフルに演奏したスペクタキュラーな音楽。「Shafted」では、エレベーター内で上から猛スピードで落下してきたワイヤーに犠牲者の胴体が切断されるシーンの短い表現が秀逸。アルバムの後半に収録されたサウンドトラック音源は、基本的に同じスコアの異なる演奏バージョンだが、同じ曲でも比較して聴いてみるとかなり印象が異なる。このアルバムにより初めて聴くことができた曲もいくつかあるが、中でも「Snowmobiles」はこのスコア中でも唯一非常に明るくほのぼのとしたタッチで、しかもゴールドスミスの個性がよく出た曲で非常に面白い。参考までにこの「The Deluxe Edition」CDのトラックリストを下記しておく。
= THE ALBUM =
1. Main Title (5:03)
2. Runaway Train (2:38)
3. Claws (3:14)
4. Thoughtful Night (3:05)
5. Broken Ice (2:19)
6. Fallen Temple (2:55)
7. I Love You, Mark (4:37)
8. Shafted (3:00)
9. The Knife (3:21)
10. End Title (All the Power) (3:24)
(Performed by the National Philharmonic Orchestra)
= THE FILM SOUNDTRACK =
11. Main Title (2:03)
12. Face of the Antichrist (2:20)
13. Fallen Temple (1:33)
14. Aunt Marion's Visitor (:36)
15. Another Thorn (1:18)
16. A Ravenous Killing (3:07)
17. Snowmobiles (1:11)
18. Broken Ice (2:21)
19. Number of the Beast (1:33)
20. Shafted (3:00)
21. The Daggers (1:56)
22. Thoughtful Night (2:36)
23. I Love You, Mark (4:12)
24. Runaway Train (1:10)
25. The Boy Has To Die (1:24)
26. All the Power and End Title (3:14)
(2001年12月)
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