100万ドルの血斗 BIG JAKE
作曲・指揮:エルマー・バーンステイン
Composed and Conducted by ELMER BERNSTEIN
演奏:ハリウッド交響楽団
Performed by the Hollywood Symphony Orchestra
(ベルギーPrometheus / PCR 512)
「戦うロビン・フッド」(1945)「すべての旗に背いて」(1952)「コマンチ族」(1956)「荒野の群盗」(1965)等の職人ジョージ・シャーマンが監督し、ジョン・ウェインが主演した西部劇(1971年製作)。共演はリチャード・ブーン、モーリン・オハラ、パトリック・ウェイン、クリストファー・ミッチャム、ボビー・ヴィントン、ブルース・キャボット、グレン・コーベット、ハリー・ケリー・Jr.他。脚本は「ダーティハリー」のハリー・ジュリアン・フィンクとリタ・M・フィンク、撮影はウィリアム・クローシアが担当。孫を誘拐し、100万ドルの身代金を要求してきた無法者(ブーン)一味を追いつめる大牧場主(ウェイン)を描く。ジョン・ウェインの実の息子であるパトリック・ウェインと、ロバート・ミッチャムの息子クリストファー・ミッチャムが劇中で彼の息子たちを演じている。また、この映画のプロデューサーであるマイケル・ウェインもジョン・ウェインの息子である。
音楽は数多くの西部劇音楽を手がけているベテランのエルマー・バーンステイン。冒頭の「Main Title」は陽気なサルーン風やストイックなタッチ等、様々な主題がメドレー的に展開するカラフルなメインタイトルで、途中いかにもバーンステインらしい明るく豪快なメインテーマが登場する。この主題は「荒野の七人」「エルダー兄弟」「コマンチェロ」等に通ずるまさにバーンステイン節のオーセンティックな西部劇音楽で、全編を通して登場するが、特に「Piano Memory / All Jake / On the Move」「All Jake and Raider」「Followed」等では明確な形で演奏される。「Massacre / Little Jake / Mexico」「Survey / Ambush / Buzzards」「On the Trail」等でのダイナミックなアクションスコアも手堅い。「Motorcycle」はロン・グッドウィンによる一連のコメディスコアに似た陽気な音楽。ラストの「Tricks / Little Jake Again / Going Home」は、サスペンス調のアンダースコアからメインテーマのリプライズにより全体を締めくくる。CDの最後には5曲のソース音楽が収録されている。1970年当時のモノラル録音による音源だが、音質は非常にクリア。
エルマー・バーンステインのウエスタンスコアとしては「荒野の七人」(1960)があまりにも有名だが、ジョン・ウェイン主演の西部劇ではこの「100万ドルの血斗」以外にも「コマンチェロ」(1961)「エルダー兄弟」(1965)「勇気ある追跡」(1969)「ビッグケーヒル」(1973)「ラスト・シューティスト」(1976)を担当している。このうち、「コマンチェロ」と「勇気ある追跡」、及び「ラスト・シューティスト」「100万ドルの血斗」「ビッグケーヒル」のスコアの一部をバーンステイン自身がユタ交響楽団を指揮して再録音したCDがVarese Sarabandeレーベルよりリリースされていた。バーンステインのウエスタンスコアには、これら以外にも「ビッグトレイル」(1965)「続・荒野の七人」(1966)「インディアン狩り」(1967)「新・荒野の七人/馬上の決闘」(1968)「荒野の七人/真昼の決闘」(1972)「サボテン・ブラザース」(1986)「ワイルド・ワイルド・ウエスト」(1999)等がある。また、彼はジョン・ウェインが出演した「巨大なる戦場」(1965)「マックQ」(1973)のスコアも担当している。
エルマー・バーンステインは1967年の「モダン・ミリー」でアカデミー賞の作曲賞を、1962年の「アラバマ物語」と1966年の「ハワイ」でゴールデン・グローブの音楽賞を受賞している。
(2002年2月)
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