「ハムナプトラ2/黄金のピラミッド」(2001)で脇役で登場した“スコーピオン・キング”のキャラクターを主役に昇格させたSFXアクション。監督は「ブロブ/宇宙からの不明物体」(1988)「マスク」(1994)「イレイザー」(1996)「ブレス・ザ・チャイルド」(2000)等のチャック・ラッセル。出演はWWEのプロレスラー“ザ・ロック”ことドゥウェイン・ジョンソン、スティーヴン・ブランド、ケリー・ヒュー、マイケル・クラーク・ダンカン、グラント・ヘスロフ、ラルフ・モーラー、ピーター・ファシネリ、バーナード・ヒル他。脚本はデヴィッド・ヘイターとウィル・オズボーン、スティーヴン・ソマーズ。撮影はジョン・R・レオネッティ。5,000年前の古代エシプト、ゴモラの都を舞台に、邪悪なパワーを駆使して他民族のせん滅を図る支配者メムノンを暗殺するために送り込まれた、戦士“スコーピオン・キング”マサイアスの活躍を描く。
1作目「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」(1999)の音楽はジェリー・ゴールドスミス、2作目「ハムナプトラ2/黄金のピラミッド」(2001)の音楽はアラン・シルヴェストリだったが、この3作目(というか厳密にはシリーズの番外編的な内容だが)の音楽はジョン・デブニーが担当しており、作曲家が段々と若い世代へと移行していっている。デブニーは、1作目、2作目の音楽を引用せず、オーケストラにペルシャ楽器とロック音楽を組み合わせた独自のスコアを展開しているが、いずれも大編成のオーケストラを鳴らしてはいるものの、1作目 → 2作目 → 3作目とだんだんと音楽に重厚さがなくなり、全体に軽い印象になっている。最初の「Boo!」はロック+オーケストラによるバイオレントなタッチの音楽。「Main Titles」は明確なメロディのないオーケストラによるパーカッシヴなメインタイトル。「Night Attack」「Valley of the Dead」「The Cave」等はオケ+コーラスのアクションスコア。「Pickpockets」ではアラブ風の味付けがあるが、こういうタッチはやはり1作目のゴールドスミスの方が断然上手い。「Balthazar's Camp」「I've Come for the Woman」「Balthazar Arrives」とビジーなアクション音楽が延々と続くが、ずっと同じ調子なのでどうしても単調に聞こえてしまう。「Die Well Assassin」ではコーラスが「カルミナ・ブラーナ」風になるが、正直言って「またか・・」という感じがする。ラストの「The Scorpion King」はオケにより壮大に締めくくる。当初この映画のTemp Trackにはデブニー自身の「カットスロート・アイランド」「レリック」「エンド・オブ・デイズ」等が使われていたらしいが、確かにこれらの過去のスコアの影響がところどころに表れている。
デブニーは、傑作「カットスロート・アイランド」での豪快なアドヴェンチャー音楽以来、「ラストサマー」(1997)「レリック」(1997)「エンド・オブ・デイズ」(1999)等のホラー/サスペンスや、「ライアー
ライアー」(1997)「ブラボー火星人2000」(1998)「GO!GO!ガジェット」(1999)「プリティ・プリンセス」(2001)「キャッツ&ドッグス」(2001)等のコメディを主体に手がけてきたが、今回の「スコーピオン・キング」は久々に大掛かりなスペクタクル音楽で、彼らしいパワーを感じさせるスコアになっている。ただし、完成度としては「カットスロート・・」を超えるには到っていないのが残念。
(2002年7月)
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