殺しの分け前/ポイント・ブランク   POINT BLANK

組織   THE OUTFIT

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殺しの分け前/ポイント・ブランク   POINT BLANK

作曲・指揮:ジョニー・マンデル
Composed and Conducted by JOHNNY MANDEL

(米Film Score Monthly / Vol.5 No.8)

リチャード・スターク原作のハードボイルド小説「悪党パーカー/人狩り」を、「脱出」(1972)「未来惑星ザルドス」(1974)「エクスカリバー」(1981)「戦場の小さな天使たち」(1987)「テイラー・オブ・パナマ」(2001)等のジョン・ブアマン監督が1967年に映画化した傑作犯罪映画。出演はリー・マーヴィン、キーナン・ウィン、アンジー・ディキンソン、キャロル・オコナー、ジョン・ヴァーノン、ロイド・ボックナー、シャロン・アッカー、マイケル・ストロング他。脚本はアレクサンダー・ジェイコブスとデヴィッド・ニューハウス。撮影はフィリップ・H・ラスロップ。旧友のリース(ヴァーノン)と組んで強盗を働いたウォーカー(マーヴィン/原作では主人公の名前はパーカーだが、ここでは権利関係の理由でウォーカーになっている)は、犯行直後、リースに至近距離(ポイントブランク)から撃たれ、金と妻を奪われる。ウォーカーは復讐の鬼と化し、彼の分け前93,000ドルを取り戻そうと犯罪組織に殴り込みをかける・・。これと全く同じ原作小説を1999年にブライアン・ヘルゲランド監督がメル・ギブソン主演で「ペイバック」としてリメイクしているが、ここでも主人公の名前はポーターに変更されていた。

原作者のリチャード・スタークドナルド・E・ウェストレイク)は、この作品以外にも原作小説の映画化作品が、「闇をつきぬけろ・真夜中の大略奪」(1967)「メイド・イン・USA」(1967)「間抜けなマフィア」(1967)「汚れた七人」(1968)「ホット・ロック」(1971)「組織」(1973)「悪の天才たち・銀行略奪大作戦」(1974)「スレイグラウンド」(1984)「ホワイ・ミー?」(1989)「あなたに逢いたくて」(1996)「(TV)テリーの災難」(1999)「ペイバック」(1999)「ビッグ・マネー」(2001)等と多数あり、また、「警官ギャング」(1973)「ホットスタッフ」(1979)「W/ダブル」(1987)「グリフターズ/詐欺師たち」(1990)「(TV)完全犯罪」(1995)等では脚本も手がけている(「グリフターズ/詐欺師たち」で1990年度アカデミー賞の脚色賞にノミネート)。

この「殺しの分け前/ポイント・ブランク」の音楽はジョニー・マンデルが作曲しているが、映画のトーンにマッチした非常に乾いたタッチのサスペンス音楽となっている。「Opening / Main Title」は不協和音による短いイントロから、ミュート・トランペットとホルンによるダークなタッチのメインタイトルへと展開。この不安定な印象の主題は「Chris to Reese's Lair」「Reese's Wake」「The Money Men」「The Payoff」等、全編を通して何度も登場する。「Nostalgic Monologue」はフルートとストリングス、ブラスによるリリカルなタッチのラブテーマ。「Nightmare」は暴力的なサスペンス音楽。「At the Window / The Bathroom」ではシンセサイザーと女声(シャロン・アッカーによるハミング)の使い方が不気味。「Joy Ride / Mighty Good Times」「This Way to Heaven」「I'll Slip Out of Something Comfortable / Reese Gets His」といったジャズのソース音楽は、いかにもマンデルらしい都会的なタッチ(挿入歌「Mighty Good Times」の作曲はステュー・ガードナーで、ここではステュー・ガードナー・トリオが演奏している)。ラストの「End Title」ではメインの主題を複数の楽器が1、2音ずつ順番に演奏していく“Pointillism(点描法)”により、アブストラクトな雰囲気を出している。

尚、このFilm Score Monthlyによる3,000枚限定プレスのサントラCDは、同じリチャード・スターク原作の「組織」(音楽:ジェリー・フィールディング)とのカップリングになっており、“リチャード・スターク「悪党パーカー」特集”になっている。
(2002年7月)

Johnny Mandel

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組織   THE OUTFIT

作曲・指揮:ジェリー・フィールディング
Composed and Conducted by JERRY FIELDING

(米Film Score Monthly / Vol.5 No.8)

「ローリング・サンダー」(1977)「殺しのベストセラー」(1987)「ロックアップ」(1989)「アウト・フォー・ジャスティス」(1991)「ネイルズ」(1992)等の職人監督ジョン・フリンが1973年に手がけた犯罪映画。出演はロバート・デュヴァル、ジョー・ドン・ベイカー、カレン・ブラック、ロバート・ライアン、リチャード・ジャッケル、シェリー・ノース、マリー・ウィンザー、ジョアンナ・キャシディ、ジェーン・グリア、イライジャ・クック・Jr、ヘンリー・ジョーンズ、ビル・マッキニー、ティモシー・ケリー他。リチャード・スタークの原作小説を基にスターク自らが脚本を執筆。撮影はドン・シーゲル監督とのコンビが多いブルース・サーティース。過去に強盗を働いた銀行が犯罪組織のものだったために、兄を殺され自らも命を狙われた男マックリン(デュヴァル/原作では主人公の名前はパーカー)が、昔の相棒コディ(ベイカー)と組んで組織に闘いを挑んでいく・・。

音楽はジェリー・フィールディングが担当しているが、1972年に彼が手がけたマイケル・ウイナー監督の「メカニック」の音楽を一部引用した、いかにも彼らしいサスペンス・スコアとなっている。「Taxi in the Rain / Parish Priest / Eddie's Dead」はピンと張りつめたダークなタッチのオープニングから、暴力的なアクション音楽へと展開。「Quentin Blue」はフィールディング作曲による主題歌(ヴォーカルはスティーヴ・ジレット)だが、これがちょっと西部劇調でなかなかかっこいい。「Hotel Corridor / Bad Right Ear」はハイテンションなサスペンス音楽で、まさにフィールディングの本領発揮。「Eddie's Funeral」はリコーダーを主体に演奏されるジェントルな曲。「Her Mama Passed Away」は、やはりフィールディング作曲によるカントリー調の挿入歌(ヴォーカルはジレット)で、この曲は後に「キラー・エリート」でソース音楽として流用された。「Office Scuffle / Kenilworth Heist / Casino Heist」は、またもフィールディング節全開のサスペンス・アクション音楽で、実にかっこいい! 途中でちょっと「スコルピオ」に似た部分がある。「"I Called My Daffy" / Laffin' and Scratchin' / She Is Dead」の前半は主人公マックリンとベティ(ブラック)のラブテーマで、フィールディングはサム・ペキンパー監督の「ゲッタウェイ」(1972)でリジェクトされたラブテーマをここで流用している。「Mansion Gates / Assault on Impregnable Fortress of Anti-Social Adversary / Surprise While Shaving」「After the Brawl Is Over」は、アブストラクトでハイテンションなサスペンス音楽(一部「メカニック」の引用が明らか)。「Finale」はリコーダーとホルンによるジェントルなタッチから「Quentin Blue」のインストゥルメンタル・バージョンへと展開し、全体を締めくくる。

ジェリー・フィールディングが手がけたその他の作品には、「野望の系列」(1961)「踊れ!サーフィン(For Those Who Think Young)」(1964)「(TV)シェーン」(1966)「ワイルドバンチ」(1969)「(TV)バート・レイノルズの復讐(Hard Frame)」(1970)「追跡者」(1970)「戦争ゲーム(Suppose They Gave a War and Nobody Came?)」(1970)「わらの犬」(1971)「妖精たちの森」(1971)「ジョニーは戦場へ行った」(1971)「(TV)青とピンクの紐(Ellery Queen: Don't Look Behind You)」(1971)「メカニック」(1972)「チャトズ・ランド」(1972)「ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦」(1972)「スコルピオ」(1973)「スーパーコップス」(1974)「ガルシアの首」(1974)「熱い賭け」(1974)「キラー・エリート」(1975)「(TV)リトル・レディ(Little Ladies of the Night)」(1976)「ダーティハリー3」(1976)「がんばれ!ベアーズ」(1976)「アウトロー」(1976)「(TV)地上最強の美女!バイオニック・ジェミー」(1976〜1978)「デモン・シード」(1977)「タッチダウン」(1977)「ガントレット」(1977)「コンボイ」(1978)「原子力潜水艦浮上せず(Gray Lady Down)」(1978)「大いなる眠り」(1978)「ポセイドン・アドベンチャー2」(1979)「(TV)恐怖のバースデイ・パーティ(High Midnight)」(1979)「アルカトラズからの脱出」(1979)「墓場の館(Funeral Home)」(1982)等がある。フィールディングは1971年に「わらの犬」、1976年に「アウトロー」でアカデミー賞の作曲賞にノミネートされている。彼はその実力の割にはサントラ・アルバムのリリースが少ない作曲家であり、プロモーショナル盤のCDがいくつか出ている(といっても彼は1980年に他界しているので、それ以降に出たCDを“プロモーション用”と呼ぶのは少しおかしいと思うが・・)ものの、今回の「組織」のような正規盤でのリリースは珍しく、ファンとしては非常に嬉しい。

尚、このFilm Score Monthlyによる3,000枚限定プレスのサントラCDは、同じリチャード・スターク原作の「殺しの分け前/ポイント・ブランク」(音楽:ジョニー・マンデル)とのカップリングになっており、“リチャード・スターク「悪党パーカー」特集”になっている。
(2002年7月)

Jerry Fielding

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