サイン  SIGNS

作曲:ジェームズ・ニュートン・ハワード
Composed by JAMES NEWTON HOWARD

指揮:ピート・アンソニー
Conducted by PETE ANTHONY

(米Hollywood / 2061-62368-2)

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「翼のない天使」(1998)「シックス・センス」(1999)「アンブレイカブル」(2000)等のM・ナイト・シャマランが監督・脚本を担当した作品。出演はメル・ギブソン、ホアキン・フェニックス、ロリー・カルキン、アビゲイル・ブレスリン他。撮影はタク・フジモト。妻を交通事故で亡くした牧師のグラハム・ヘス(ギブソン)は、神に対して疑念を抱き、牧師の職を辞する。農夫となったグラハムは、弟のメリル(フェニックス)と2人の子供たちと共に平穏な日々を送っていたが、ある日、農場のトウモロコシ畑に巨大なミステリー・サークルが出現して以来、奇怪な出来事が続発するようになる・・。公開前に試写等を行わず徹底した秘密主義で観客の知的好奇心を煽るプロモーション戦略がとられた作品だが、基本的にはあるテーマを題材にした極めてオーソドックスなストーリーで、それをシャマラン監督のトレードマークである非常にもったいぶったサスペンス演出で見せていく。あまりにももったいぶるので、一体何が起きるのかと思わせるが、実は大した事は起きない。それでも結果としてアメリカでは大ヒットになったので、このプロモーション戦略は正解だったのだろう。シャマラン監督が例によって出演しており、演技が上手いのはわかるがちょっと重要な役で出すぎ。

音楽は「シックス・センス」「アンブレイカブル」でもこの監督と組んでいるジェームズ・ニュートン・ハワード。前2作でもそうだったが非常に抑制されたアンダースコアなのでアルバムとして音楽単独で聴くと少しつらいものがあるが、劇中では非常に効果的にサスペンスを盛り上げている。シャマランは自分の作風に適した作曲家をうまく見つけたものである。冒頭の「Main Titles」はストリングスの不協和音からオーケストラによるダイナミックなメインタイトルが展開するが、ヒッチコック映画でのバーナード・ハーマンの音楽に似たタッチで、スコア全体を通してこの短いメインタイトルが一番迫力がある。その後、「First Crop Circles」「Roof Intruder」「Brazilian Video」「In the Cornfield」「Baby Monitor」「Throwing a Stone」「Into the Basement」等と、ピアノとオーケストラによる非常に抑制されたサスペンス音楽が延々と続く。「Asthma Attack」は、主人公グラハムの息子モーガンがショックで喘息の発作に襲われるシーンの音楽で、後半は息子を何とか蘇生させようとするグラハムを描写したドラマティックなタッチとなる。「The Hand of Fate - Part I」はクライマックスのサスペンス・アクション音楽で、冒頭のメインタイトルと同じフレーズが重厚なオーケストラにより繰り返される。「The Hand of Fate - Part II」は、よりジェントルなタッチのフィナーレ。

あまり明確な主題が登場しないが、しっかりとした劇伴音楽で、上述の通り映画の中においては極めて効果的に機能している。バーナード・ハーマンとの違いは、ハーマンのスコアが同様にアンダースコアとして効果的に機能しながらも、明確に彼の個性を打ち出しているということで、ニュートン・ハワードのスコアには残念ながらそこまではっきりした個性は感じられない。
(2002年10月)

James Newton Howard

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